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ばあばの介護は私がするよ

きっかけはコロナワクチン

私には平均寿命より長生きしてる、疎開経験者の伯母がいる。
父の姉である伯母は生涯未婚で、以前は私の実家で同居していた。
いわゆる小姑ってやつ。
私は父方の祖父母が生まれる前に他界している事と、伯母が父より干支一回り年上なこともあって幼いころから「ばあば」と呼んでいた。
それは大人になっても変える事が出来ず、今でも「ばあば」って呼んでいる。

2021年春、世界中でコロナウイルスが大流行する中、やっと国内でワクチン接種が始まる頃。
ばあばはその時、都内で一人暮らしだった。
コロナワクチンの予約が全然取れず、電話がつながらない、子どもにweb予約をやってもらった人が羨ましい、という高齢者の嘆きのような記事を何度か目にした私は、一人暮らしのばあばが心配になった。
絶対に予約できないだろうなー、そもそも予約の仕方とか理解してるかな?
私がやってあげないと駄目だろうなー…。
気になった私は仕事帰りにばあばの住む家に立ち寄ることにした。

築50年以上の○○荘

住所は知っていたし、私は地図を見るのが趣味の女。
絶対に迷子にならないと自信があったのに、私はちょっと迷子になった。
まさかね、まさかそんなとこに入り口があるとはね。
っていうか、なんだこのボロアパート!!!

ばあばが住んでいたのは、築50年以上の木造アパート。
風呂無し、トイレ共同、○○荘。
こんなのめぞん一刻かトキワ荘でしか見たことが無い。
しかも驚いたことに他に住民が1人もいない。
今この瞬間じゃなくて、誰も住んでない。
一階が大家さんのスペースだけど、大家さんも高齢で入院だか施設だかに行ってしまったらしい。
つまりこの建物の中に完全に1人、しかも2階に住んでいる。
2階に上がる階段が、足腰に何も問題の無い私でも恐怖を感じる傾斜。
え?ここで階段から転落したら普通に死なない?
ていうか部屋で突然倒れたりしたらどうするの?
新聞も牛乳も頼んでない、定期的に訪れる人がいない建物に老人が一人でいるとか恐怖以外の何物でもなくない??
当然エアコンなんて文明もないし、夏は窓を開けて、冬は布に包まってという暮らしぶりを聞いて、眩暈がした。
ばあば本人の心配はもちろんのこと、ここで孤独死なんてされた日には、まず間違いなく私の母が動くことになる。
実弟であるはずの父ではなく、義妹である母がそんなことで煩わされるのは気の毒すぎる。
とりあえず、ワクチンの予約とか接種の付き添いは私がする事、また今の暮らしぶりについて写真を添えて実家に連絡を入れた。

私の家の近くに引っ越さない?

写真を見た親も絶句。
え?ここで1人?他に住人いないの?なんでこんなところに住んでるの!?
わかるー、私も同じこと思った―。
かといって今さら実家でまた同居って事にはならない。
そもそも実家は老夫婦2人だし、父親も足が悪くなってるしね。
これはもう、私が手を出すしかないなーと覚悟を決めた。
夫にも相談して、私たちの家と同じ市内だけどある程度距離があるところ、近隣の治安がいいところ、徒歩で買い物に行ける環境である事…などの条件でよさそうな物件に目を付けた。
あとは本人への交渉だ。
まさか85年以上生きて、今さら東京を離れるというのは本人の考えに無いだろうし、交渉は難航するかなー?と思ってた。
「ばあば、私の家の近くに引っ越さない?私が時々顔を出すし、ワクチン接種以外でも困ったときは手伝うよ。一度、つくば市ってどんなところか見に来てみない?」
「いいよ」

びっくりするくらいあっさり承諾された。マジでびっくりした。
そんなこんなで、実際につくば市を見てもらったら思いの外気に入ってくれて、年末にはつくば市に引っ越すことになった。
私が訪れた5月から約半年で、こんなに変わるとは思わなかったよ!
つくば市で住むことになったアパートは、筑波大生向けの狭めの1K。
バストイレ別、エアコンあり、ネット回線あり、で前の家と家賃はほぼ同等。
風呂無しトイレ共同、ネズミが出る家から随分とQOLがアップした。

引っ越しまでの繋ぎでやっていたこと

とりあえず、万が一倒れても畳のシミになる前に発見されることを最優先にして、私が頼ったのは行政によるヤクルトお届けサービス。
週に2日、ヤクルトさんが1本届けに来て、本人に渡してくれるやつ。
ここで異常事態があると、自治体に報告が入って緊急連絡先(私)に連携されるっぽい。
大体どこの自治体でもヤクルトか弁当の宅配による定期的な見守りっぽいサービスがあるから、気になった人は区とか市のホームページで探してみて欲しい。
値段は無料か、かかってもめっちゃ安い。利用しない手はない。
サービスの目星がついたら、相談に行くのは「地域包括支援センター」。
介護初心者には聞きなれない単語だけど、介護界隈では最初の窓口だと思う。
大体一つの自治体内に複数あって、担当地域が決まってるから、自分の住所を担当しているところ行く。
いつ行ってもだいたい空いてる。
でも行政サービスだから窓口の時間は普通の社会人にはまぁまぁ辛い感じ。
自治体によっては土曜もやってたりするけど、基本は平日のみだと思う。
私は「高齢の親戚が一人暮らしをしている。自分を含め、定期的に様子を見に行ける状態にないので、区がやってる見守りサービスを受けたいんだけど、初めてでよくわからない…どうすれば?」くらいの感じで行った。
あとは包括支援センターの人が見守りサービスの種類とか、値段とか、手続きの進め方とか教えてくれる。
包括支援センターは区役所・市役所に比べてふんわりしてるから、多分下調べなしに相談行っても対応は優しいと思うけど、どんなサービスがあるかを調べたうえでそれが受けたい!って行くと話が早い。
行政支援の基本は、ある程度こちらがやりたい事(申し込みたいこと)を明確にしてから赴くことだと思う。
包括支援センターさんで申し込んで、私は週に2日のヤクルトさんの訪問手続きを終えた。
これで万が一の時も3日以内くらいには発見される。安心!


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