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茶色いピアノとSUGA

今回はSUGA名義の大大大名曲First Loveについて書かせてください!!

はじめて聴いた瞬間、純粋に曲の良さにバチバチにやられてしまったんです。

茶色いピアノときいてまず思い浮かぶのはどれですか〜?
最近は、D-DAYツアーで登場したピアノを思い浮かべる人が多いかもしれない。

あらゆる年代でいろんな茶色いピアノが登場していてとても感慨深いです。

ユンギとピアノ、なぜこんなに""良い""のだろう


SUGAはWINGSアルバムにソロ曲が入るときいたとき、同時期に制作していたAgust DのSo Far Awayを推したという。ミーティングを重ねアルバム全体のバランスも考えた結果、それとはべつに曲をつくることになった。

実はFirst LoveのメインのラインはSo Far Awayと同じ。その曲にオーケストラセッションを入れようと思ってたら時間がなくて入れられなかったことを思い出して、そのラインをいかしてつくった。

Wings Concept bookより

First LoveにSo Far Awayのメロディラインが入ったり、So Far AwayにFirst Loveというフレーズが聴こえたりするのはそのためでした。

First Loveというワード自体にドキッとしちゃうけど、これには意味があった。

多くの意味を込めた。First Loveは幼い頃に弾いていたピアノでもあり、唯一の友達でもある。レコーディングの時はたくさん泣いた。後半は感情を爆発させる部分でずっと涙が出た。

Wings Concept bookより

本人も多くの意味を込めたと話しているので、さまざまな解釈ができると思うが、ピアノを擬人化することでまるでラブソングのように仕上げたところが天才ミンシュガらしい。
だけどラブソングは必ずしも恋愛の曲ではないし、愛の対象が人だとは限らない。

何かを見ていいなと感じたら愛です。だから大勢の人が愛というと恋愛を思い浮かべますが実は違うんです。

people pt.2リリース時の꿀FMでもこんなふうに話していた。

歌詞の翻訳は、パパゴを使い意訳もあるけど、できるだけ単語を見ながら直訳に近づけた。「こんな解釈もあるのか〜」くらいな軽い感覚で読んでいただけたらうれしいです。

はじまりのピアノの音はまるで幼い子どもがたどたどしく弾いているみたいで、外界のかすかな音と重なり静謐な空気を漂わせる。
そしてSUGAの低く落ち着いた声が、ピアノとの出会いを語り始める。

僕の記憶の片隅
その片隅にいる茶色いピアノ
幼い頃 家の片隅
片隅に座る茶色いピアノ

幼い頃に家にあった茶色いピアノはいまはもうないのかもしれない。でも記憶の片隅にいる=忘れることなく思い出せるってことだよね。
"茶色い"とつけることでこのピアノにだけ特別な想いを抱いているのがわかる。

覚えてる 僕の背よりずっと大きかった
茶色いピアノ それが僕を導いたとき
君を見上げて憧れてた
小さい指で君を撫でる時

I feel so nice mom I feel so nice

ただ手のおもむくまま歩き回った鍵盤
あの時は君の意味なんてわからなかった
見つめてるだけでよかったあの時

メトロノームにもきこえる時計の音が一定に刻まれ、ノスタルジックな時の流れを感じる。

"僕を導いた"と茶色いピアノに惹きつけられた運命の出会い。

小さな指が自由に鍵盤の上を"歩き回り"、だれの指図も受けず心のままに弾いている様子が浮かぶ。
母親に「とても気分がいい」とうれしそうに伝えているのも、純粋にたのしくピアノに触れているのがわかる。
"見つめてるだけでよかった"なんて、まさに馴れ初め。

覚えてるよ 小学生の頃
僕の背が君よりも大きくなったあの時

あんなに憧れてた君を無視して
白くなめらかな鍵盤 その上にほこりが積もっていった
放置された君の姿 あの時もわからなかった
君の意味 僕がどこにいようといつも君はそこにいて
僕を見守ってた それなのに

それが最後になるとは思わなかった
いなくならないでくれ

You say

このヴァースからストリングスが入ってきて、伴奏するピアノのメロディとあわさるのが印象的。

成長して大きくなった自分は、かつてあんなに憧れを抱いていた茶色いピアノに見向きもしなくなっていた。

いつもそばにいたときはわからなくて、いなくなる時にやっとその愛の大きさに気づくなんて……まさに初恋じゃん。

"You say"で、視点が切り替わり、擬人化したピアノが語りかける。

いなくなっても心配しないで
君はひとりでもうまくやりとげるから

君に初めて出会った時を思い出すよ
いつのまにかこんなに大きくなったんだね 君のほうが

僕たちの関係はこれで終止符を打つけど
どうかあやまらないでほしい

どんな形であってもまた会えるから
その時はうれしそうに迎えてほしいな

茶色いピアノ、めっちゃいいやつ。ピアノの人格をこんなふうに表現するなんて…。

WINGSファイナルのライブで、"いつのまにかこんなに大きくなったんだね"のところ、実際に顔を見上げてフフっと笑ってた。茶色いピアノになりきって歌っていたのかな。めちゃくちゃ泣いた。

覚えてたんだ 忘れてたようだけど

君にまた向き合った 14歳の頃
少しぎこちなかったけどまた君を撫でた

長いあいだ離れていたのに拒まずに
僕を受け入れてくれた君

Without you I'm nothing
夜明けを過ぎてふたりで一緒に迎える朝

永遠にこの手を離さないで
二度と君を離さないから

長いあいだ距離をおいた後に再会し、少しぎこちなく鍵盤を撫でる。すると離れていた時間なんて気にすることなく受け入れてくれた茶色いピアノ。

安堵した気持ちとともに音楽への愛が再燃し、
ついに"Without you I'm nothing"(君がいなかったら僕は何者でもない)と告白する。

おそらくピアノを一晩中弾いたことを、一緒に迎える朝と表現しちゃう。こんなふうにラブソングで使うようなフレーズをちょこちょこ入れてくるのがニクイ。

そして深まっていく愛。

永遠にこの手を離さないで
二度と君を離さないから
思わず太字にしちゃったんだけど、ここでふたりの声、SUGAと茶色いピアノの声が重なるんです!!
ふたりの想いは結ばれたんだね。

覚えてる 僕の10代の最後を
共に燃やした君 そう一寸先も
見えなかったあの時 泣いたり笑ったり
君と一緒だからその瞬間さえ
いまは思い出だよ

粉々になった肩を握り締めて言った
僕はこれ以上マジで出来ないって
諦めようとしたその度に
そばで君は言った
「새꺄なら絶対できる」って

ここはほとんどピアノの音をかき消すようにストリングスが強くなり、ラップも感情的に走り始める。

ピアノの音がずっと奥の方で鳴っているのに2:07〜の
"そばで君は言った
「새꺄なら絶対できる」って"
のところだけ、ピアノの音がしっかり聴こえるのめちゃくちゃ良い!!しかもここだけピアノの音域が高くなる。
茶色いピアノが励ましてるのが、、もう、、涙

새꺄は、親しい同性の友達に向けていて、直訳すると"野郎"みたいになるが、"お前"とかに近いのかな。他の和訳を見ても、お前って訳してるひとが多かった。わたしはうまく訳せなくてそのままにしちゃった。ここのヴァースは相手が"唯一の友達"に切り替わってるという解釈もあって、それも素敵だなと思った。

そう、そうだ 覚えてるよ
疲れ果て彷徨ってた
絶望の深い泥沼に陥ったあの時
僕が君を押しのけて 君に出会ったことを恨んでも
君は屈せずにそばで見守ってたんだ なにも言わずに

だから君は絶対に僕の手を離さないでくれ
二度と僕は君を離さないから

僕の誕生、人生の終わり
そのすべてを見届けるのは君なんだよ

激情のラップ、たかぶるストリングス。ピアノの音がしばらくかき消される。ライブでエレキギターが入ってくるタイミングもめちゃくちゃよかった。


時に困難や壁にぶつかったが、それでも茶色いピアノがそばにいてくれた。自分にとってどれだけの意味があったか。

誕生から人生の終わりまで、もう永遠に手を離さないと誓う。

激しい息づかいとともにすべての音が鳴り止み、ピアノと時計の音がふたたび戻ってくる。

僕の記憶の片隅
その片隅にいる茶色いピアノ

幼い頃 家の片隅
片隅に座る茶色いピアノ

茶色いピアノと出会い、共に音楽への愛に燃えたFirst Love。

どうにも大名曲すぎるのである。

だいすき。

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