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フレイ・アルスターが大好きな、中学生だった私の話

はじめに

この文章は視聴した当時の記憶のまま書いているので、
設定や情報は間違っています。
2002年日曜夕方5時に、リビングのテレビを見ていた中学生が、
ただフレイが好きだと言うだけの記事です。


はじめてのガンダム

当時中学生だった私は、女子中学生らしく少女漫画が大好きだった。
ハチクロが大好きで、NANAが好きで、ナナ派かハチ派かで友達と盛り上がっていた。

ワンピースで言うと丁度空島くらいの時期だ。
ジャンプは家にあったけど、ガンダムと言えば「ロボットアニメ」程度の認識しかなかった。


忘れもしない、20002年の10月5日。
弟が「今日からガンダムが始まる!」とリビングのテレビをつけて待機していた。

まだiPhoneも無かった時代、個々に好きなものを見るのではなく、
誰かが付けた番組を問答無用で見るしかない。

私は興味もないロボットアニメの第一話を、弟と見る羽目になったのだ。

そこからの記憶は曖昧なので、きっと興味が無かったんだと思う。
けれど、主人公が号泣しながら人を殺すシーンは中学生ながらにそれはそれはドン引きしたのを覚えている。


「殺したくない」「戦いたくない」と言いながら人を殺す主人公。
それがキラ・ヤマトとのファーストインプレッションだった。

素直に「こいつまじやべえ」と思ったのを今でも覚えてる。

そして出てきた運命のキャラクター、フレイ・アルスター。

1話にも出てたはずなんだけど、
記憶のフレイは脱出ポットから不安げに出てきて、
キラを見つけて駆け寄る女の子が最初だった。

周りがアースカラーのモブの中で、赤い髪にピンクのワンピースが確実に「メインキャラです!」と主張していて「へー」と思った。


ガンダムSEEDシリーズは、OPでメイン主人公とメインヒロインが素っ裸になるのだが、この時脱いでいたのはラクス・クラインだった。
(※OPの映像はストーリーで変化するので、最初からラクスが脱いでいたのか、まだ婚約破棄してなかったからアスランと脱いでいたのか、記憶は曖昧)

この法則を知らないので、
個人的には「なんでこいつら脱いでんだ」と思ってた。
そして今でも「なんでメインのふたりは脱いでいたんだろう」と思っている。

ちなみにこのOP、実はフレイの素っ裸も描かれていて、
OPが変わる度に別の裸体を晒していたのだが、中学生ではあのシルエットがフレイであることに最初気付けなかった。

なんやかんやと学生だったキラとその友達たちがアークエンジェルに乗る事になり、
なんやかんやと「キラ強いから戦えよ」と戦わされる流れになった。

キラは毎回号泣しながら戦かっていて、なのに全戦全勝でとても怖かった。

私はキラ・ヤマトというキャラクターが怖かった。

で、なんやかんやあって、
キラが遺伝子操作されたコーディネータ―だと言うことがバレ、
フレイのお父さんはナチュラル過激派だったため、お嬢様育ちで世間知らずのフレイはキラとその時アークエンジェルに乗っていたコーディネーターであるラクスに、とてもとても強く当たる。

極めつけが、
フレイのお父さんを守るために出撃したけど守り切れなかった時。

フレイが目の前で父親が宇宙の藻屑となるのを目の当たりにして。
叫んで、泣いて。
そして言うのだ。


「あんた、自分がコーディネーターだからって、本気で戦ってないんでしょ」


よく言えたなと思った。

その言葉に、当たり前だが凄くショックを受けるキラ。
泣いてるところをラクスに慰めてもらうのだが。

キラが主人公である以上、スポットが当たるのは仕方ないし、「酷い事を言われた」のは確かだけれど。

父ひとり、娘ひとりで生きてきて。
父の思想に染まった女の子が、発した言葉の重みは凄いんだろうなと思った。
私はそのシーンを見て、きっと周りは「キラが可哀想だ」という声と、「戦って貰っておいてよくも」という声があるだろうと思っていたが、
(現に中学の後輩は翌日フレイをぼっこぼこに言っていた)

私はどうしても彼女を嫌いになれなかった。
父親が迎えに来てくれたと嬉しそうにパックをしていた女の子が、敵に狙われていると知った時、あんなに触れたくなかったラクスの腕を握りしめて「攻撃をやめなければこの子を殺すって言って!」と叫んだのだ。

首筋に銃口をあてるでもなく、ナイフで脅すでもなく。ただ、自分の細腕でコクピットまで連れてきて。

あんなに怖がっていたコーディネーターに、父親を助けるためならば触れる事ができる。
それは、ナチュラル過激派であるフレイの中では、とんでもない事だったんじゃないかと思った。


ラクスと出逢った時、ラクスはフレイに手を差し出す。
それに対してフレイはとても強い嫌悪を見せて「いや」と拒絶する。

それはラクスの懐の広さや、差別意識の無いキャラクターと同時に、
フレイのごりっごりのナチュラル思想を、視聴者に見せ付けたシーン。

「与えられた手を取らないばかりか、人の好意を無下にするキャラクター」であるフレイが誕生したのだ。

予想通り、ここからフレイは「悪女」の代名詞と言われるまでに、キャラクターとして物語のポイントを担う。
その徹底的なものが、


キラを慰め、身を捧げ、自分にがんじがらめにする。


という行為。

父親を亡くし、アークエンジェルでの居場所もなくしたフレイが取ったのは、キラに身を捧げる事だった。

泣いているキラを慰めてキスして、
次のシーンではフレイが泣いていた。

ひとりでベッドの上で泣きながら笑い、
「戦って、戦って死ぬの、じゃなきゃゆるさない……!」と笑っていた。

こりゃ荒れるぞと思った。
あと、上記の通り、弟とリビングで見ていたので非常に気まずかった。

案の定、これがほぼ決定打となったように、
フレイはとんでもなく嫌われた。


ネットの中のフレイ

丁度2000年代と言えばインターネットが普及し始めた頃。
回線はゾッとするほど弱かったけれど、色んなHPがネットにはバンバン立ち上がり始めていた。
(因みにこの時期、まだpixivやtwitterはまだ無かった)

世に言う、

個人サイト全盛期だったのだ。

私はネットの中にフレイを求めた。
お絵描き帳にラクガキをしているノリで、ネットの中にはたくさんのファンが描いたガンダムの絵が飾ってあった。

ネットの中には「サーチエンジン」なるものがあり、そこで見たいキャラクターやカップリング、系統(甘々、とか、シリアス、とか)にチェックを入れると個人サイトのバナーが一覧に出る仕様だ。

オタクたちはそこから好きな場所を選んで、個人のお宅にお邪魔していた。

が、そこでとんでもなく残酷な現実を突きつけられた。

ガンダムSEEDはいわゆる「女子受け」をしていて。
ずっと泣いているキラと、その幼馴染で敵のエースパイロットであるアスランの、カップリングないし組み合わせがなんか、凄かった。
ので、当たり前だが、そのキラを泣かせて、あろうことか日曜夕方に身を捧げたフレイの嫌われようといったらなかった。
 
個人サイトの話に戻るが、個人サイトには「入口」というものが存在し、
そこには「ここはこういうサイトです。中にはこういうものがあります。好きな方は進んで、駄目な方は戻ってください」という案内のようなものだ。

そこに、貼ってあるのだ。


「このサイトは フレイに 厳しめです」


という一言が。

個人サイトのトップには、文字の他に「同盟」と呼ばれるアイコンが張ってあり、それを見れば一目で分かる仕様になっていた。
大抵は「アスラン大好き同盟」や「アスカガ(アスラン×カガリ)同盟」など、同志の認証バッヂみたいなものなのに。

あるのだ。

フレイにだけ、

「厳しめです」「優しめです」「普通です」

という、同盟でもなんでもない、「このキャラクターの取り扱いがどうなのか」を示すアイコンが。


こんな事ってあるのかと思った。
フレイなんて微塵も関係ないサイトでも、そのアイコンは張ってあった。


これほどまでに、フレイ・アルスターという存在は、
ガンダムSEEDの中で禁忌だったのだ。


ならば、「やさしめ」のサイトで仲良しこよしが繰り広げられていたかと言えばそうでもなく、
笑いながらキラを泣かせて喜んでいる、女王様のような扱いだった。

それまで「二次創作」に触れてこなかった中学生が、
ショックでパソコンと共にフリーズするには十分だった。


フレイの死

ネットの中でも、アニメでも、現実でも、
フレイは腫物の様に扱われていた。

こんなに悪者扱いなのかと、私がどう消化していいか分からない中でも、
物語はどんどん進んでいた。
いつの間にか、フレイがナチュラルの悲劇のヒロインとして担ぎ上げられるという政治の道具にさせられそうになったと思えば、ラウ・ル・クルーゼから攫われ、ピンクの軍服から緑の軍服に着替えさせられた。
アークエンジェルは反乱軍のようになっていた。

ラクスは歌う妖精から革命のリーダーのようになっていた。
ラクスもフレイと同じようにお嬢様だと思っていたのに、あまりに情勢に詳しく迷うことなく兵を率いる姿に、訳が分からなかった。
「小泉純一郎首相が政界を去ったとして、代わりに小泉幸太郎氏が首相になるようなもんだ」とその時誰かが言っていて「それだ」と思ったのを覚えている。


後半のフレイは笑うこともせず、常に何かに怯えるように過ごしていた。
OPでも泣いていて、ずっと悲しそうに口をぎゅっとしていた。

それでも、生きていたし、「キラに謝りたい」「自分は何も知らなかった」とナタルさんに懺悔していた。



なのに、フレイは死んだ。



最後の最後で、キラに助けてもらったと思ったら、後ろから撃たれて死んだ。


そのシーンを見ながら、私は、きっとこれに乗っていたのがラクスやカガリだったら、
助かってたんだろうなと思った。

流石にずっと見続けていれば、ストーリーの中でのフレイの扱いがどんなものなのかは薄々分かっていた。

カガリのお父さんが死んだ時も、ラクスのお父さんが死んだ時も、みんな慰めてくれていた。
フレイだけが、自分が発した一言の重みを背負わされたのだ。

別に、キラとくっつけとか。カリスマになれなんて、思っていなかった。

でも、せめてごめんなさいを言わせてあげて欲しかったし、
笑ってる姿をアニメで見たかった。

後輩が見せてくれたアニメ雑誌の中ではフレイは笑っていたけれど、
その、自分に自信があるような、お嬢様で、おしゃれと美容が好きな女の子の笑顔は、私はアニメの中では見る事がなかった。
第一話では笑っていたらしいが、その記憶は無い。

私が知っているフレイは、
ずっと不安げに眉を寄せているか、
悲しく泣いているか、怒って泣いていた。


フレイが死んでしまった事が凄くショックで、
その後どうやってアニメが終わったのか、よく覚えていない。


最後に光の粒になったフレイは凄く綺麗だった。
凄く凄く綺麗だった。

でも死んでしまったのだ。


「本当の想いが、貴方を守る」と言い遺して。


あんなに見たかったフレイの笑顔は、最期の死に顔だった。


フレイを、書く

呆然としたまま、
私は家のリビングにあるパソコンで小説を書き始めた。

勿論フレイの話だ。

フレイは死んでいなくて、
生き残っていて、
キラに「ごめんなさい」を言って、
ラクスに「握手しよう」と握手して、
カガリとはメイクの話をして、

みんなフレイが大好きな話だ。

中学生が勝手も分からず書いたもので、
支離滅裂だし意味も分からなかった。

けれど、私はフレイとみんなが仲良くなる話を書き続けた。

お母さんがいなくて、お父さんに大事に大事に育てられたお嬢様が、
突然戦場に巻き込まれ、
目の前で父親に死なれ、

唯一の武器は己の身体だった。

戦場の砂漠でスキンケアを買ってきてと頼むほどに、
彼女は世の中を知らなかったし、自分を磨いていた。
それしか武器が無かった。

武器を使ってキラに身を捧げ、つなぎ止めようとした。

全てが間違っていたけれど、それ以外の思考回路がなかった。

彼女の強い言葉は、周りに理解されるより先に疎遠にされていた。

徐々に自分の置かれている立場や、
周りの状況が見えるようになった時、
彼女は敵艦にいた。

それでもただひたすらに「謝りたい」という一心で過ごしていた。

その願いくらい、私が叶えてあげたかった。


数年後、友達から「フレイは本当はストライクルージュに乗る筈だった」と聞かされて、本気で泣いた。

ストライクルージュに乗ってるフレイが見たかった。

だって、あの操縦桿を握るということは、覚悟と信頼があるということで。「いってらっしゃい」「頼んだ」と言われて、
あの場所から飛び立って欲しかった。

たったひとつ、仲直りをして欲しかった。

それだけだった。

中学生が書きなぐった小説の文字数は、とんでもないことになっていた。
別に誰に見せるでも無いし、ただただ無心に書き続けた。


せめて、自分の記憶の中でくらい、
フレイは幸せな赤い髪のおひめさまでいて欲しかったのだ。



補足だが、
2004年10月9日放送を開始した「ガンダムSEED DESTINY」において、
「フレイと同じ声のキャラクターがOPで素っ裸になってる!」と喜んだ結果、
私は二度目の酷い喪失感を味わうことになる。



さいごに

以上、
フレイが大好きな、かつて中学生だったオタクの叫びでした。

尚、その後リマスター版等がありますが、私は一切見れていません。
今、大人になった自分が、SEEDを見て、万一にもフレイの言動に嫌悪を覚えてしまう事を避けるためです。
私はあの時、家のリビングで弟と一緒に一回だけリアルタイムでみた時の記憶のまま、フレイを永遠に好きでいたい。そう思っています。


来年の映画が発表されて、桑島法子さんのCVのパイロットが出てきて、とても複雑な心境です。
フレイも、ステラも、ナタルさんも、レイ(幼少期)もいない。
全員が志半ばで死んでしまって。それでも桑島法子さんがSEEDシリーズのキャストでいてくれることは凄く嬉しいけれど、アグネスまで死んだら悲しいし、逆にアグネスだけ生き残っても切ない。
もうどうしていいのか分からない。ただフレイもステラもいない。

そんな理由で未だ前売り券を買えずにいます。
誰かに手を握っていて欲しい。


もしここまで読んで頂けた方が居られましたら、
貴重な時間を有難うございました。



貴方の推しが永遠に輝き続けますように。


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