甘さが目立つ守備設計~何故、ヴァンフォーレ甲府の守備は脆いのか~

桜咲く中季節で、肌を突くようなとても寒い一日。まるで今日の結果を表すかの様な冷たい雨だった。

4月3日第8節ベガルタ仙台戦。今季からしっかりと攻撃時にボールと人を動かしていこうとするベガルタ。そんなチームに対して、今の甲府の守備設計では太刀打ち出来ないことが改めて深く認識出来た試合だった。

前半早々に、今季もう何度目か…デジャブのごとく失点。しかし、長谷川選手のファインゴールで同点に。前半を1-1で終え、このまま逆転までいきたい所だったが後半も早々に失点。もう1点追加された後は甲府が押し込み、三平選手のゴールで1点返し、同点までいける可能性も感じさせたが追いつけず2-3で敗戦。早くも4敗目を喫しました。


守備の設計の脆さ

今季は「チームとして崩す」ゴールが少ないこと等々、攻撃面の課題も表面化していることがチームの低調な一因でもあるが、何より「守備の設計自体に脆さがあること」が大きな原因と個人的に考えています。

以下、私が守備設計の脆さを感じる1つの例をご紹介します。今回この例は他のチームには既にバレバレだと思う部分なのでお伝えします。

これは2点目奪われる直前、46分のプレーです。加藤選手(ベガルタの26番の選手)がゴールは外れましたがシュートを放った場面です。

まずベガルタの鎌田選手(32番)がボールを持ちます。そこにヴァンフォーレはリラ選手や鳥海選手が寄せるのではなく、山田選手が寄せに行きます。すると、鎌田選手はフォギーニョ選手(35番)にパスを出します。

(下図参照 TACTICALista さんで作成)

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するとフォギーニョ選手は氣田選手(18番)にワンタッチでパスを出し、氣田選手から皆川選手(19番)へ。バイタルで受けた皆川選手はワンタッチで加藤選手(26番)にパスし、加藤選手はシュートを放ちました。

枠は外れましたが、ベガルタは甲府の守備の隙を上手く活用し、バイタルでシュートまで持って行く攻撃を完了した場面でした。

(下図参照 TACTICALista さんで作成)


甲府仙台②

今季の甲府の守備を象徴するのが、「牽制にいったボランチの空いたスペースを使われ、いとも簡単にバイタルエリアでボールを持たれること」です。

今季の甲府は本当に541の意味があまり感じさせられない守備をしてしまします。ワントップが相手CBに牽制に行きますがコース限定は細部が甘く、必ずといって良いくらいにボランチが相手CBに寄せに行きます

するとどうでしょう。新潟や横浜FC、仙台などスペースを使うことに慣れているチームには、サイドバックやボランチを経由してボランチが出たスペースを簡単に使われてしまいます。もう一方のボランチが寄せて凌げる場面もありますが、プレスバックが間に合わない・CBが潰しきれない等々で、中央で崩される場面も多くなっています。また、ボランチが空いたスペースを相手FWに使われ、中央密集させられてからサイドに展開され、後ろ向きで下がった最終ラインに対して、サイドからのマイナスクロスでゴールを取られる場面も多々あります(新潟戦の2ゴールや仙台戦の1点目など)。

正直に申し上げて、今季のやり方ではロングボールで陣地挽回する様なチームにはまだ効果あるかもしれませんが、人もスペースへ効果的に動きつつショートパスで動かせるチーム相手には守り切れないと思います。

541はその守備ブロックの外でボールを回させることであれば、その効果は大きく、中央突破でもサイドからのクロスでも簡単には破るのが難しいものです。

しかし今季の甲府は、541にも関わらずわざわざスペースをプレゼントする守備になってしまっています。

それは何故か。私は「捨てるところがハッキリしていないことが原因ではないか」と思います。守備はマンツーマンにしろゾーンにしろ、空く所はどうしても出てしまいます。しかし、その捨てる所を明確に設定した上でのプレスなら統一感があって良い守備が出来ると思っています。例えばワントップのCFともう1枚で相手を牽制し、片方のサイドに引き込む。それでロングボールを出せない様にすれば逆サイドの大外にいる相手の選手をその場面だけはマークを捨てて良いなど…。541だけどボランチ1枚が前に出た時は一時的に532にしよう!とか、442にしよう!とか。捨てることと必ず抑えておきたいところをハッキリさせるなら良いのです。

しかし、今の甲府は相手CBやボランチのプレーを限定させられず、無理にボランチの片方が出ていった所を誰が埋めるのか準備出来ていません。また最終ラインも昨年より低く、前線がプレスに行ってもあまりラインを上げない為に組織が間延びし、5ー4のブロックの間で相手のボランチや前線の選手にターンして前向かれたりボールを受けられる場面が過多です。

このままなら次の大宮戦も点を取られて難しい試合になってもおかしくありません。大宮も結果は出てないですが、相手を動かしてサッカーをやろうとしているチームです。


甲府は次の守備策を講じなければいけない

個人的にですが、私は最初から4231で配置し、守備時442でやれば良いのではないかと考えています。

それには攻撃において前線でサポートする選手を増やしたいという意味もありますが、多くは守備にあります。

理由は…

今の甲府ではボランチがやっている相手CBやアンカーへの牽制をワントップとトップ下で役割を明確に与える。

そして5レーンに最終ライン4人しかいない為、しっかり捨てる所を明確にした上でプレスを行い、コンパクトにした守備網の方にボールを出させるように誘導させる。

また最終ラインと前の守備ブロックを間延びさせないで、相手に入り込まれるスペースを与えないことです。

もう既に甲府は何らかの変更はやむを得ない状況です。昨年終盤良い戦いを魅せた伊藤彰さんのサッカーの面影は考え過ぎず、今の甲府はどうすべきかを考えなければなりません

ヴァンフォーレ甲府は未来に進んでいく為に様々な努力をしているチームです。アカデミーを充実させること。SDGsで環境も考えながらスポーツチームとして出来ることを行う、など。

サッカーも様々な策を講じ、努力出来るチームです。何より勝つ為に。選手たちが楽しくプレー出来て、甲府でもっとプレーしたくなる様に思ってもらう為に。そして楽しくプレーする選手たちを観て、サポーターも楽しく応援出来る為に。

未来を考えるなら、今をもっともっと試行錯誤してチャレンジして、より良いものを創り出そう

fin

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