非平面印刷の今
非平面印刷とは?
非平面印刷という言葉をご存じでしょうか?非平面印刷は特殊な印刷方法です。普通のFDM方式の3Dプリンタでは、XY平面に一筆書きで印刷し、それをZ軸方向に積層していくことで3次元の造形物を作成します。ようするに3Dプリンタって言っていますが、動作自体は2.5Dプリンタです。平面印刷です!
これに対して非平面印刷は本当に3次元の軌跡を描いて印刷する技術です。ようするに、XYZの3軸が同時に動きながら印刷していく新しい印刷方法です。普通の2.5Dプリンタの平面かのように、曲面(非平面)を印刷していきます。何か凄そうじゃないですか!?
5自由度プリンタ
では、非平面印刷には何が必要でしょうか。結論から言うと、普通の3自由度の3Dプリンタでもできます。やってる人もいます。でも、理想は5自由度以上の3Dプリンタが欲しいです。普通の3自由度の3Dプリンタでは、ノズルの位置をXYZで制御します。でも、5自由度の3Dプリンタでは、位置のXYZに加えて、姿勢のABCを制御することができます。
姿勢って何?って人もいると思いますが、ノズルの吐出方向を傾斜させ、その方向を回転させるということです。これが5自由度の3Dプリンタではできます。
5自由度の3Dプリンタなんてないじゃん!って思った方もいると思いますが、例えば、Open5xがあります。Prusaを改造して5自由度にしています。他にも、6自由度のHEXAプリンタなどもあります。
非平面印刷で何ができるのか?
では、非平面印刷で何ができるようになるのかを紹介します。
・90度以上のオーバーハング
ノズルの角度を傾斜/回転させることで、既存の造形物に変な角度から樹脂を押し付けることができるため、90度以上のオーバーハングも印刷できます。ようするに、T字が印刷できます!
・サポートレス/インフィルレス印刷
オーバーハングが印刷できるということは、下に造形物がなくても印刷できるということです。そのために、サポートレス/インフィルレスで印刷できます。材料の無駄が減ります。
・積層強度の向上
ノズルの傾斜方向を制御することで、積層方向もZ方向だけではなくできます。そのため、既存の造形物の側面をZ方向にノズルを走らせて印刷することで、Z方向の積層強度を高めることができます。
・表面正常の改善
アイロニングってやったことありますか?一番上の面だけツルツルになりますよね?ノズルの傾斜方向を変えることで、それが全面でやることができるかもしれません。
非平面印刷の今
こんな良いことづくめの非平面印刷ですが、まだまだ広まっていません。というか、まだ研究もあまり進んでいません。何故かというと、ハード(5自由度の3Dプリンタ)がほぼない、ソフト(スライサー)がほぼない、からです。研究したい人の下に逆側のものがないのです。鶏と卵の問題が発生しています。
そんな中でも非平面印刷を進めるために活動されている方達がいらっしゃるので紹介します。
・Freddie Hong(@FreddieHong1)
上のOpen5xを始めた方です。最近はこの方と、Brendon(@brendonbuilds)が協力して協力な5自由度の3Dプリンタを作っています。また、RhinocerosというCADで動くGrasshopper用の5自由度スライサーを公開されています。ソフト高くてテストできていません。
・Rene K. Mueller(@XYZdims)
この方は、OSSのSlicer4RTNという円錐スライサーを開発しています。私はこのスライサーで造船等をしています。円錐スライス自体は、スイスの大学の先生であるMichael Wüthrich(@mwuethri)もやられています。こちらは4自由度のバージョンを公開しています。
また、XYZdimsはかなり強力そうな非平面印刷用のスライサーも開発しているようです。楽しみですね。
・FullControlXYZ(@FullControlXYZ)
STLとかをスライスせずに直接Gコードを書きだすためのツールを作られています。数学モデルを直接印刷するようなイメージです。まだExcelベースのものだけしか公開されていませんが、pythonベースのものも公開予定のようです。pythonベースのものは5自由度にも対応したバージョンを公開いただけるようです。下のリンクは今現在唯一公開されている5自由度用のデモのリンクです。
・IceSL(@iceslapp)
3自由度の特殊なスライサーを開発しているところです。最近は非平面印刷用のスライサーにアップグレードをかけているようです。ただ、まだ3自由度のGコードのようで、5自由度にもしたいと言っています。下のように段々なくスライスされるようです。
まとめ
非平面印刷ができると色々なことができるようになることと、今進んでいるであろう研究開発状況を簡単にまとめました。以外と開発は進んでいるようです。早く本格的に使えるようになりたいですね。
私も一日でも早くHEXAプリンタの位置精度だして、kp3s5xも完成させて、ノズルチルトとベッドチルト両方のデバッグ環境をゲットして(これ両方持ってる人多分いない)、スライサー遊びに加わりたいものです。