いまSaaS企業への投資を行うなら抑えておくべき5つのこと
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本記事は、2021年に3月末時点においての国内SaaS企業投資への考え方をアナリスト視点でまとめたコンテンツとなります。
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この1,2ヶ月でSaaS企業への投資について質問を受ける機会が増えてきました。
企業のDX推進などにより引き続き好調な業績を続けるSaaS企業が多い一方、2020年での上昇反動もあり、年初からTOPIXやマザーズを下回る水準を見せる株価動向を気にされる方も多いようです。
この3月で「企業データが使えるノート」によるSaaSコンテンツ発信が1年となり、SaaS企業への視点を今一度整理するため、この回答を今回5つのポイントにまとめ記事化をしたいと思います。
投資判断や推奨といった内容ではありませんが、前提として必ず抑えておくべき事項や、今後の各社の成長パターンなどを考察しました。
上場SaaS企業に対する内容が中心となりますが、株式市場で形成されるバリュエーションは、未上場フェーズとも大いに関連がありますので、SaaSスタートアップの方にも役に立てるコンテンツを意識しています。
なお、SaaS企業の時価総額に関して基本的な事柄を知りたい場合は、1月にITmediaで執筆したこちらを見ていただくことをお勧めします(内容はあまり重複しません)
① 上場SaaS企業への投資は難易度があがっている
まず、SaaS企業への投資については1年前と比べて難易度が上がっていると考えています。
各社の株価水準の高まりから同様の感覚を持つ方も少なくないと思いますが、「SaaS企業の株価水準がかなり先の成長までを織り込んでいる(もしくは一部行き過ぎている)」という状況と考えています。
マルチプルに目を向けると、Sansan・freeeといったSaaS企業の大型IPO、米国SaaS企業のバリュエーションの高まり、新型コロナウイルス影響によるDX推進などの影響を受け、2020年3月頃では平均10倍だった主要SaaS企業の予想PSRは2021年初では20倍を超える水準まで急ピッチで上昇しました(直近時点は18倍前後)。
PSRの水準に対する妥当性は議論が分かれると思いますが、私個人としては20倍という水準が正当化されるにはARRが一定規模(50億円以上)を超えた後に、年率+30%のような高成長が複数続くことがその水準を維持できる要件だと考えています。
SaaSでは先行投資によって赤字が発生することが多いため、PERなど利益ベースでのマルチプルを用いず、利益の先行指標である売上高をベースとしたPSR(より正確にはEV/Sales)が用いられます。(企業価値は利益やフリーキャッシュフローの総和と考えると本来的には利益ベースのマルチプルの方が良い)
仮にこのPSRをPERに換算すると、SaaS企業における売上高当期純利益率が20%(SaaSとして非常に優良)と仮定した場合、倍率は5倍。つまり、PSR20倍の企業はPER100倍以上の評価がついているという見方ができます。
赤字から当期純利益率20%を達成するには不確実性もあるため、実際にはPER100倍よりももっと高い水準がPSR20倍に相当すると考えられます。
PER100倍の水準の参考として、過去に高成長を遂げ企業価値を向上させたIT企業、ZOZOやM3、モノタロウ、GMOペイメントアンドゲートウェイなどの企業であってもPER100倍を恒常的に超えたことはありませんでした。
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