SaaSのパートナー戦略における論点整理と考察
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本記事では、最近何かと話題となっているSaaS企業のパートナー戦略について論点整理と考察を行っていきます。
なお、ここでは私がNewsPicksやITmediaなどの外部メディアで取材を行った内容について公表もしくは記事化されている以上の新たな情報を書くものではありません。
あくまで公になっている情報を基に、SaaS企業におけるパートナー戦略の考え方をまとめていく内容となります。
SaaSビジネスにおけるパートナー戦略
■ なぜパートナー戦略は必要か
多くのBtoB SaaSスタートアップはTHE MODELを踏襲した直販モデルを採用していますが、事業の拡大に伴い外部パートナーとの協業を検討する企業も多いのではないでしょうか。
以下は、中小企業庁が2019年に公表した「中小企業の身の丈に応じた
ITツールの普及促進について」の資料中、中小企業へITを届ける主体を示した図です。
* 中小企業の身の丈に応じたITツールの普及促進について 中小企業庁
この中で「デジタルツール・クラウドサービス提供者」が中小企業・小規模事業者にダイレクトセールスでサービスの提供を行う割合(①)は24%ほどと示されており、自社だけのセールス活動においてはリーチできない顧客が多数存在することが分かります。
昨年5月においてもガートナーが公表したレポートにおいても国内の法人SaaS普及率は30%程度で足踏みするなど、ベンダーダイレクトのアプローチだけではアーリーアダプター層の特定顧客にしか価値を届けられない状況が見えてきます。
大企業においては、上記状況よりはダイレクトセールスにおける比率が高いと考えられますが、導入にあたっては既存システムとの連携や導入難度の観点からSIerやITコンサルなどとの協業の機会も増えてくると考えられます。
■ 外部リソースを活用しLTVを向上させる
ここではSaaSビジネスにおけるパートナー戦略を「セールス・マーケティングにおいて外部リソースを活用しサービスのLTV全体をあげる」活動だと捉えています。
上記はイメージとなりますが、SaaSビジネスにおける営業コストの中で「パートナー向けS&M」を費やすことで、自社だけでアプローチできない質・量のセールス機会を持ち、LTV全体の向上がパートナー戦略の基本的な構図と言えます。
ARRの最大化ではなく、LTVの最大化と表現したのはパートナー戦略で獲得した顧客のLTVがダイレクトセールスで獲得した顧客のLTVが近しい水準である点が重要であると考えたためです。
最近注目を集めたAI insideの事象においてもそうですが、パートナー接点で獲得したユーザーの解約率が著しく高い場合、一時的な売上は上がるものの、粗利/解約率で算出されるLTVは悪化し、ビジネスの採算性が落ちます。
「パートナー教育にコストをかけたが販売先では利用継続しないケースが相次ぐ」という状況はよくある話のようですが、ダイレクトセールスと同様にLTV/CACなどユニットエコノミクスの健全性に注意をしながら戦略を組み立てていく必要があります。
パートナー戦略自体は信頼関係をつくりながら長期的に成果を上げていくこととなりますので、短期的な数値ばかりを重視してはいけないと思いますが、販売ルート別のLTVやコストのモニタリングを行いながらダイレクトセールスとのベストミックスを探っていくことが一連の取り組みに対する基本的な姿勢なのではないでしょうか。
パートナー戦略の座組と取り組み例
ここではパートナー戦略の座組を「代理店」「OEM」「ジョイントベンチャー・共同出資」の3つに整理をしています。Salesforceなどにおいては導入支援などの役務提供のサポートを行うパートナー制度もありますが、ここでは絞って着目をしていきます。
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