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【急浮上】プラスアルファ・コンサルティングのSaaS成長戦略を独占取材

月額有料マガジン「企業データが使えるノート」では、

「アナリストにSaaS企業分析・データ作成をアウトソースできる」

をコンセプトにSaaS企業に関するデータ・コンテンツを発信している。

本記事では企業データが使えるノートのアナリストが、プラスアルファ・
コンサルティング代表取締役社長 三室克哉氏に独占インタビューを行い、急成長の背景を聞くコンテンツとなっている。

*   *   *

国内でHR領域のSaaSが本格的な導入期を迎えている。

コロナ禍に入り、リモートワークが日常となる中で、新たな人材管理の在り方や、適正な人材配置に課題を持つ企業が増えた。

経済産業省は、2022年5月「人材版伊藤レポート2.0」を公表。企業に対し、人材を企業成長の源泉となる「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげるよう企業に提唱するなど、国を挙げた取り組みも始まっている。

このような流れを受け、2022年度のHRTechクラウド市場では、前年比+32.2%の成長を見せるなどSaaS市場全体の伸びを牽引している。
(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ、日本のSaaSの年平均成長率は13%程度)

「タレントマネジメント」といった言葉も一般に徐々に浸透する中で、株式市場から高い評価を受けているのが人材管理システム「タレントパレット」を提供するプラスアルファ・コンサルティングだ。

今年6月以降、国内上場SaaS企業のPSR(売上に対する時価総額の倍率)では、freeeやマネーフォワードなどを上回る水準を見せるなど投資家からの期待も高まっている。

代表取締役社長三室氏にこれまでの成長の背景、そして今後の展望を聞いた。

三室 克哉 氏 | プラスアルファ・コンサルティング 代表取締役社長
早稲田大学理工学研究科修了後、株式会社野村総合研究所に入社。 以来、AI、データマイニングを活用した、商品需要予測、優良顧客分析、地図情報システム、WEBアクセス解析等、各種プロジェクトを多数実施。 2007年、データ分析技術をもっと気軽に、商品やサービスの改善を目指す全ての企業に活用してもらうことを目的に、 株式会社プラスアルファ・コンサルティング 代表取締役社長に就任。現在も、CRM、タレントマネジメント等、実務で役立つ先進技術の活用を目指し、新ソリューションの開発を積極的に進めている。

「タレントパレット」を立ち上げた着眼点


—―― さまざまなSaaSの中でもHR Tech領域は成長率が高く、注目を集めています。事業を立ち上げるにあたってはどのような考えのもと、製品開発を始めたのでしょうか。

三室氏:タレントパレットの開発を始めたきっかけは、5,6年前、私自身が会社を経営していく中で人事の悩みを解決するプロダクトがなかったことが発端です。

勤怠管理、給与管理、一部の従業員満足度調査などのシステムはあっても、「人事異動をどうするか」「社員のスキルアップをどう測るか」といった経営目線に応えた人材管理システムはありませんでした。

そこで、それまでプラスアルファ・コンサルティングで提供を行っていたマーケティングツール「見える化エンジン」などの技術を基盤に、単なる業務効率化ではなく「意思決定を支える」システムの開発を開始しました。

タレントマネジメントの概念が国内で広がりを見せていますが、それもここ数年の動きです。HR Tech市場はまだ立ち上がったばかりで、成長余地の大きい市場だと捉えています。

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* HRTechクラウド市場の実態と展望 2021年度版(ミック経済研究所)

三室氏:従来、コロナ以前の終身雇用を前提としていた企業では、入社から長年の付き合いで人事は社員のことを理解することができました。そのためHR Techを必要とせずとも、感覚に基づいた人事施策を行うことができたのです。

しかしコロナ禍になり、優秀な人材の流出や、リモート勤務による社員への理解度の低下が進むと、これまで通りの人事制度では十分な精度を担保できなくなりました。

特に大手企業やグループ会社を配下にもつ人事など、大きな組織施策においては、科学的根拠に基づいて、より高い精度で実行しなくてはならないという意識に変化しているように思います。

加えて、現在日本では経営戦略を支える人事施策として、「ジョブ型雇用*」制度への移行を目指す企業が増えています。

日本版ジョブ型雇用では社内の配置転換や新たなスキル習得などが個人に対して求められるとともに、組織も定量的な管理を行う必要性が増しています。

* ジョブ型雇用
職務を明確にした上で最適な人材を配置する雇用形態。職務に必要な能力を細かに記載したジョブディスクリプションを示し、社内外から人材を募る。欧米などで一般的。

—―― これまで国内のSaaSではCRMなどの営業系ツールやバックオフィス業務系SaaSが成長を牽引してきました。そこから少し遅れ、この1,2年でHR Techに注目が集まってきたと感じますが、どのような実感をお持ちでしょうか。

三室氏:国内企業全般としては、人事DXといった切り口で注目が高まってきていると感じています。

そもそも、人事領域においては「エクセル管理」「人事データベースがない」といった旧態的な状況が残っており、その中で労務管理全域をカバーしたSmartHRさんのようなサービスが急速に広まっていきました。

HR Tech業界で最近増えているスタートアップの多くは、社員のエンゲージメント測定に特化したプロダクトです。

このようなHR Techプロダクトは、新型コロナウィルスの影響による人材流出への対抗手段として成長してきた側面があります。ある目的に特化しているので価値が伝わりやすいことに加え、使い勝手が良いので部署単位での導入も積極的に行われている印象です。

一方、タレントパレットは、全社での人事戦略を支援するプロダクトです。

全社員のデータを一元化することで、人材データの管理・分析だけでなく、人材育成や採用戦略に至るまで包括的な支援を目的としています。いま増加しているスタートアップとはそもそもの目的が異なるため、実際にコンペになることは少ないのが実態です。

エンタープライズ攻略の秘訣は独自のコンサルティングにあった

—―― タレントパレットの契約比率に占める従業員数1,000名以上の企業の割合は4割にのぼるなどエンタープライズ攻略が順調です。どのような要因により顧客を獲得できたのでしょうか。

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* 2022年9月期 第3四半期決算説明資料より

三室氏:コロナ禍における働き方の変化とジョブ型雇用への移行、HR Tech市場が成長する要因となったこれらのトレンドにうまく乗ることができたことが大きいと見ています。

加えて、データ活用に対する経営層の認識が変化したことも大きな要因となりました。これまでは人事の経験に基づき成功してきた側面もあり、社員のモニタリングシステムはあまり整えられてきませんでした。

例えば、DX人材を育成するにあたって、社内にどのようなポテンシャルを持った人がいるか分からない、育成がどのくらい効果的であったのかを定量化できないといった具合です。

こういったケースでは、意思決定の判断材料となる資料を、その都度人事が社内データを集めて作成してきました。しかしこれでは科学的根拠に基づき全ての社員を評価することができません。

タレントパレットを用いると、人材データの継続的な管理・分析ができます。大企業において人事施策に科学的根拠が求められるようになった結果として、タレントパレットが導入社数を増やしています。

—―― 決算資料をみると、タレントパレットの売上に占めるコンサルティング割合(15%程度)が一般的なSaaSよりも高い点が特徴的です。これは、オンボーディングなどに寄与しているのでしょうか。

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