Trusted Tester - Section 508 Conformance Test Process for Web 勉強会について

2019年4月から表題についてのオンライン勉強会に参加しておりまして、その内容についてさっくりと概略紹介したいと思います。

経緯

Webサイトの情報を、いろんなひとが同じようにアクセスできるようにするためにはアクセシビリティ対応が必要ですよ、ということはかなり知られるようになりました。実際にアクセシビリティやってるよ!というひとも多くなったなあ、という体感(※個人の感覚)です。

しかし、次の悩みが出てきます。

「わたしの検証って、正しくできてる? これって、適切な判断だった?」

WCAG という基準に則ることができる一方、その記述は特定の技術に依拠しないよう、意図的に抽象的に記述されている(※1)こと、また、個々のケース(ページの実装やコンテンツの内容など)の差異もあり、検証者によって解釈が異なることがあります。結果、同一箇所についての検証であっても、検証者によって結果が異なるケースもあります。

※1 翻訳で「お前何を言っているんだ」と思って原文にあたるとやはり「お前何を言っているんだ」と思うくらいには抽象的です

達成基準だけではなく、試験・検証手順についても参考になるものがあるとよいのではないか、とか、ほかのアクセシビリティに携わるひとたちの検証の手順や考え方について知りたい、と思っていたところに、「Section 508によるウェブアクセシビリティ試験手順についてのもくもく会」開催を知り、早速参加させていただいた次第です。(四方田さん(@yomochan)ありがとうございます!)

Section 508についてももっと深く知りたいと思っていたので、まさに渡りに船という感じでした。

※2 この前承として、「某公共サイトのアクセシビリティチェックをリアルに実施するよ」という時代工房さんのオンラインイベントがあり、さまざまな立場でアクセシビリティにかかわるひとの意見を共有いただいたことからも、大きな刺激をいただきました。

検証ツール何使ってますか?

手軽に使えるアクセシビリティチェックツールがないないと嘆いていた時代もありましたが、今はずいぶん選択肢が増えました。しかも手軽。

Accessibility Insights for web, axe, Lighthouse, Siteimprove accessibility checkerなど、Chromeのextensionだけでもこれだけあります。
#選べる 、というのは恵まれていることですね…

ほかにも、miCheckerUsableNet AQAWorldSpace Complyといったツールもあります。

勉強会ではANDIを用います。

ANDI
https://www.ssa.gov/accessibility/andi/help/install.html

勉強会

勉強会では資料精読、その後、手順に沿ってテスト検証を行い、判断が異なる箇所の検討や、Trusted Testerの手順でよいところ・そうでないところについて、調整案を作成する、といったフローですすめています。
参加者のそれぞれの検証手順との差異やその結果とTrusted Testerによる結果の差分も検討すべきところとは思いますが、現在はまだTrusted Tester 試験手順すべてについて内容検討とテスト検証による洗い出しが完了していない段階ですので、今後の課題というところでしょう。

Trusted Tester って?

2019年12月時点では、以下の文書が最新として公表されています。
Trusted Tester Conformance Test Process - Version 5 - updated Aug 16 2019
https://www.dhs.gov/sites/default/files/publications/trusted_tester_test_process_v5_0_aug_16_2019.pdf

勉強会は、勉強会の開始時点での以下のドキュメントを参照してすすめました。
DRAFT Trusted Tester - Section 508 Conformance Test Process for Web
https://github.com/Section508Coordinators/TrustedTester/blob/master/docs/index.md

テストは以下の20項目に分かれ、その中でさらに定められたテストプロセスにそって、合格(Pass)・不合格(Fail)・該当なし(DoNotApply)を判定していきます。

Section 508 Conformance Tests
1. Conforming Alternate Version and Non-Interference
2. Auto-Playing and Auto-Updating Content
3. Flashing
4. Keyboard Access and Focus
5. Forms
6. Links and Buttons
7. Images
8. Adjustable Time Limits
9. Repetitive Content
10. Content Structure
11. Language
12. Page Titles, Frames, and iFrames
13. Sensory Characteristics and Contrast
14. Tables
15. CSS Content and Positioning
16. Pre-Recorded Audio-Only, Video-Only, and Animations
17. Synchronized Media
18. Resize Text
19. Multiple Ways
20. Parsing

ご覧の通り、WCAG の達成基準順ではなく、実際の検証手順を想定しての分類数と順序になっています(※3)。
勉強会参加者の検証手順も、達成基準順ではないのですが、キーボードで操作できるかといったあたりから着手するとのことですが、これは「ユーザーがサイトにある情報にすべて到達できるか、また操作してその先にある情報へアクセスできるか」という考え方による手順と言えます。
Trusted Testerでは、まず全体を俯瞰し、代替コンテンツがどのように用意されているかなどを確認し(1. Conforming Alternate Version and Non-Interference)、自動再生や閃光など操作を阻害する条件の有無(2. Auto-Playing and Auto-Updating Content, 3. Flashing)、サイトが操作可能かどうかを確認する(4. Keyboard Access and Focus)進め方です。

※3 WCAG 2.0とのマッピングは上記引用文書の"Appendix A: Test Process Mapping"をご確認ください。

たまたま勉強会参加者の手順はほぼ同じでしたが、Trusted Testerの手順に近い検証を行っている方もいると思われます。正解はひとつではありませんので、それぞれがどのような考え方で判断基準と検証手順を定めているかについての具体的な検討はもっと活発化するとよいと思いますし、ドキュメントが最終的に平準化されることで、検証結果の揺れを減らす、つまり検証の品質があげることにつながるのでは、と考えています。

References

Test for Accessibility
https://www.section508.gov/test

DHS Section 508 Compliance Test Processes | Homeland Security
https://www.dhs.gov/publication/dhs-section-508-compliance-test-processes
https://www.dhs.gov/sites/default/files/publications/Baseline_Tests_for_Software_and_Web_Accessibility_v2_0_2.pdf

Section 508 Testing | Homeland Security
https://www.dhs.gov/508-testing


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