イチから統計を勉強した記録

統計学の勉強を始めようと思った時手探りになって大変だったので、これから統計を勉強しようと思う人に向けて1つのモデルケースを提示する。

達成したこと

・統計検定1級 統計数理 最優秀成績賞

・アクチュアリー試験 数学 合格

・プログラミング言語Rを使って簡単なデータ分析ができるようになった


自身の背景

数学科に進学したため、統計を勉強する前から微積分・線形代数にはそれなりになじみがあった。プログラミング経験は無し。


統計検定の勉強をはじめる

統計を腰を据えて学びたい気持ちは何となくあったものの、「目標がないと身が入らないな〜」などと考えていたところ、3年の夏休みに統計検定の存在を知った。問題形式が肌に合っていそうだったので1級(統計数理)の勉強を始めた。平均すると1日2時間くらいの勉強量だったと思う。

勉強期間は3ヶ月で、使った教材は


「演習 統計学 キャンパス・ゼミ」

まず手を動かせるようになろうと思い、2週間くらいで1週+間違えたところの復習をした。今は「演習 確率統計 キャンパス・ゼミ」という名前に変わっているようだ。


「入門・演習 数理統計」

この本をメインに読んだ。概念の説明もきちんとなされており、演習も豊富で良い本だった。人によってはこれ1冊で十分だと思う。数学的に気になるところはいくつかあったが、自力で正当化できる程度だった。
本文を読む→その節の演習を大体やる、というスタイルで1周した。これを終えた頃にはもう試験直前だった。


「数理統計学の基礎」

「入門・演習 数理統計」と同じ著者の本。参考書のつもりで買ったが、試験勉強にはあまり使わなかった。ただ、結構細かい定理まで載っているので、普段の勉強で参照することはあった。


公式の参考書
試験範囲を把握する以外に特に使い道はなかった。記述が詳しくないので、これと過去問だけで勉強するのは無理があると思う。


過去問
3年分やった。大問のはじめ方の計算ミスには気をつけた。「入門・演習」で試験範囲はかなりカバーできていると感じた。


自分は微積分・線形代数を分かっている状態からのスタートだったが、そうでない人は微積分・線形代数をやってからの方が良いと思う。

本番では見た目が簡単そうな大問1,2,4を選択し、問題なく完答できた。統計応用は次の年受けようと思っていたが、コロナの影響で試験が中止になってしまった。


アクチュアリー数学

院試が終わって気が抜けていたので、普段の数学の他にも何か勉強をしたいなと思い、アクチュアリー数学を受験することにした。これも平均すると1日2時間くらいの勉強量だったと思う。

勉強期間は2ヶ月ちょっとで、使った教材は


「入門・演習 数理統計」
ざっと読み返して基本的な知識を入れ直した。


「モデリング」(日本アクチュアリー会)
手持ちの数理統計の本ではカバーできていなかった、回帰・時系列解析・確率過程・シミュレーションのことが簡単に書いてある。時間の関係で正当化しきれずFactにした部分もあるが、試験で計算問題を解く分には問題なかった。テキストはアクチュアリー会の公式サイトから買うことができる。


琉球大学のpdf
http://www.math.u-ryukyu.ac.jp/~sugiura/2016/act_math2016a.pdf
http://www.math.u-ryukyu.ac.jp/~sugiura/2016/act_math2016b2.pdf
たまに参照した。特に検定の部分が参考になった。


過去問
公式サイトにたくさん載っている。形式に慣れるため10年分ぐらいやった。とにかく時間がきついので、理解するだけでなく手早く処理する力が求められていると思った。あと電卓に慣れておいたほうが良い。


ケチって公式で指定されていた数理統計の本を買わなかったのだが、手持ちの本と試験範囲が若干ずれていて勉強しにくかったので、大人しく公式指定の本を買った方が良いと思った。

本番当日はそこそこ緊張した。腕時計を忘れて無印でバスクロックを買った。今も家の風呂に置いてある。

大問1でつまづいて時間がカツカツになり終わったと思ったが、なんとか持ち直し無事合格した。


Rの勉強

アクチュアリー数学の勉強を終えて、統計の理論を勉強するだけでなく、自分でデータ分析してみたいと考えるようになった。以下の教材を使って勉強した(大学のRの講義もいくつか受けた)。


東大の数理・情報教育センターe-Learning教材
http://www.mi.u-tokyo.ac.jp/teaching_material.html
Rを全く知らない状態から、この中の「統計データ解析I」「統計データ解析II」の配布資料を読んで、数種の分析手法をcsv形式の実データに適用できるようになった。これが誰でも無料で見れるのすごい。


「Rによる機械学習」

現在読み進めている最中で、半分くらい読んだ。Rを知らない人でも一から機械学習の基本的な手法を実行できるように書かれている。例がわかりやすいと思った。本によると、全部読み終われば機械学習コンペ(kaggleとか)に出る基礎はできていることになるらしい。


その他試験勉強のとき参照した数学書

試験合格のために必要というわけではないが、個人的に読んだ本を紹介しておく。

「確率論」

測度論的確率論はこれで勉強した。


「数理統計学」

測度論的確率論は(ほぼ)前提にされている。ステートメントと証明がしっかりしており、他の本のふわっとした記述を正当化するのにかなり役立った。


おわりに

これから統計を勉強しようとする方の参考になれば嬉しいです。質問等あればTwitterのDM等までお気軽にどうぞ。


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