備忘録41 沈んだ
楽しいね、楽しいねってたくさん笑った。
紛れもなく、愛のある一年八ヶ月だったと思う。
いつからか彼の全てを信用できなくて、お互いの首を絞めて、最後はもう笑えなくなっていた。
どうしてこうなってしまったんだろう、どうにかならなかったんだろうか、たらればばかりを考えるようになってしまった。
終わりであることにはずっと気づいていて、見て見ぬふりをし続けていた。
彼がいないからと言って世界が終わるわけでも、私が死ぬわけでも、一緒に見た映画が面白く無くなるわけでも無い。教えてもらった音楽が、悪いものに変わるわけでも無い。
ただ、会いたい時に会えなくなってしまうだけ。
今一緒にいたって、会いたい時には会えなくなってしまっているのだから、そんな言葉さえも意味を持たない気がする。
楽しいね、楽しいね
そんな言葉が
楽しかったね、良い思い出だね
に変わってしまうだけ。
全てが過去形になって、一緒の道を歩まなくなるだけ。
ただそれだけのことだ。
私は
私は、彼のことがあまりに愛おしくて
自分のものにしようとして、彼を傷つけて苦しめていたのかもしれない。
彼がいないと私は、と自分に思い込ませていたのかもしれない。
そんなことをしているうちに、私は暗くなってしまったみたいで
そんな自分さえ嫌いになって、また彼を苦しめていた。
大事にしようと思っては離れていく。
大事にできなかったのかなと後悔する。
私は意味のある存在にはなれなくて、ただ彼の足枷になってしまったのかも知れない。
でも彼と過ごした時間や思い出は、明るくて輝いている事ばかりだった。
苦しんでいた時間も同じくらいあるとはいえ、それでもなお輝いて見える。
楽しかったね、楽しかったね
ありがとうね、また会えると良いね。
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