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なぜ人は美しい自然を前に涙が流れるのか?

旅行先やアウトドアをしている時に、ふと、素晴らしい景色に出会う。そこで足を止めて、ゆっくりと景色を眺めてみる。するとどうでしょう、そのあまりの美しさに知らず知らずのうちに涙がうるっとこみ上げてくる。

このような経験を誰しも一度はしたことがあるのではないでしょうか?今日はこの、自然に対した時に湧き上がってくる感情を切り口として、人としての生き方に正解のようなものがあるのかについて考察していきたいと思います。

自然=造化=親

今回も引き続き安岡先生の著書から引用しつつ考察をしていきます。先生はその著書の中で

今、我々の眼の前に広がっているこの天地がこうなるまでには、既に何全万年、何億年経っていることだろう。そこにこうして生きて物を思う人間がその文化を誇るようになったのにも五十万年は経っているという。長い努力である。それらは、すべて造化の途切れることのない営みに他ならない。この目の前の天地も決して偶然にあるわけではないのだ。我々人間もいい加減にできているのではないのだ。  「人間としての生き方」

と述べていて、この長い努力に対して無意識に感謝の気持ちがこみ上げてくると同時に謙虚になることができると論じています。そして続けて、

造化の生きたその姿を、誰もがその親に眼のあたりに拝み見る。親こそは、我を生み、我を育て、我を教えて、自らのことを忘れてただひたすらに子供の無事と幸せを祈り続けて止むことの無い造化そのものなのである。

と論じています。もちろんこれはすべての親に当てはまるわけでは無いと思いますが、大方の親は夜泣きと格闘しながら必死に育児をしている物だと思います。今、Netflixのドキュメンタリーで「赤ちゃんを科学する」というシリーズが放送されていますが、西欧においても赤ん坊を一生懸命に育てる姿は日本のそれと変わらないと感じました。

赤ちゃんを科学する | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト赤ちゃんは生まれてから1年間で何を学ぶのか。遺伝や環境の観点から、この疑問を解明する画期的な科学ドキュメンタリーシリーズ。www.netflix.com

こうして見れば、身の回りに存在する神様や、功績のあった人を称えて、神様までにしてしまうのは感謝の気持ちが大きいからだと思えます。そして自然と一体化し、共存し、これを守っていこうという気持ちに繋がっていくのでは無いでしょうか。

米国保守層の極端な意見

ここで一度目を移して、ちょうど大統領選挙で真っ二つにわかれている現在のアメリカの、共和党の最右翼の意見と日本人の感性を比較してみます。ちょうど、彼らの主張をまとめた映画を見る機会があったので、そこから考えをいくつか抜粋したいと思います。

Agenda: Grinding America Down (2010) - IMDbDirected by Curtis Bowers. With Curtis Bowers. When Idaho Lewww.imdb.com

題名からして危機感を煽るタイプの映画ですが、要約すると、今アメリカで起きている(彼らが考える)悪いことは、すべてマルクスの考えを引き継ぐ、共産主義者の陰謀で、Agenda、つまり彼らの計画通りに物事が起こってしまっていて大変だ!という内容です。このAgenda自体は戦後に構想されたものらしく、だとすればよっぽど天才が相当先を見通した物凄い予言になってしまうのですが、保守層の人たちはこれを真剣に信じているようです。

ただ、皮肉にも、この映画には人を説得し行動させる、共産主義者のいうアジテーションの技術がふんだんに使われています。一見すると権威のある専門家のような人が沢山出てきて、短い尺で次々といかに共産主義が悪いか、何を行っているか、どう対抗すべきかをまくしたて、おどろしいBGMと戦中の過激な映像とで恐怖心を煽っていきます。そして解決策として、信仰に立ち返って、アメリカの伝統的な価値観に基づいて反撃しなければならないといいます。オバマ大統領を批判し、子ブッシュ大統領を猛烈に支持します。

突っ込みどころが満載で、いかに極端な考えが害のある物なのか、実際に見て取れます。ただし、冗談のようで本当に信じているところが恐怖なのですが。例えば、アラバマ州で妊娠中絶が禁止されたのはこの一連の流れの一つです。そして、もう一つ大きく違和感を覚えるのが自然への見方です。彼らは自然保護団体を毛嫌いし、自然保護はビジネスに有害なので反対しているのです。そして政府は資本主義を最大限に発揮させるために小さな政府を主張します。さらに共産主義の中国(本当は資本主義でも社会主義でも無い西側の価値観に則らない社会)を敵とする中国脅威論へと傾いていきます。

では、なぜこんなに違和感を覚えるのかというと、やはり日本人の考えは中国文化を元にした物であるので、どうしても西欧の二元論、極端な資本主義に賛同しきれない部分があるのでは無いでしょうか。そしてこの二元論は、まさに科学的思考、物事を分解して理解する思考の基礎で、今の便利な生活をもたらしてくれるありがたい物ではありますが、同時に絶え間ない対立を生み出す元ともなっています。それは彼らがよく使う、Us or They の対立で、今で言うと、正義対悪のテロリストというくくりとなっています。そしてアメリカはロシア、中国、北朝鮮、イラン、武装過激派を脅威ととらえ、正義と悪の戦いに明け暮れています。

彼らは世界を理解しようと、正義と悪の二元化により単純化しようとしますが、この複雑な現代ではそれは通用しないことでしょう。例えば、アメリカはインドと接近しようとしていますが、そのインドと言えば、実はイランと協力している実績があって、イランに使用権のある港を持っています。また、アメリカが巨額の費用と人命をかけて挿げ替えたイラクの現政権はシーア派で、これまたイランの主流となっている宗派です。アメリカが大好きなサウジアラビアですが、最近海軍の養成基地でテロを起こして同級生を殺害してしまいました。このままアメリカ、キリスト教的な二元対立を突き詰めていけば、いずれは中国との武力対立になってしまうかもしれません。

私たちがすべきことは?

ここで日本人的な考えに立ち返り、自然の大切さ、感謝の気持ちを考えていくと、次の世代、自分たちの子供たちへの責任へと繋がっていくと考えます。この世代というところがポイントで、誰でも自分の子供は可愛がりますが、その孫、その孫の子や、周りの子供達のことまで考える人は少ないでしょう。なぜなら今の生活、大量生産、大量消費は明らかに持続可能では無いからです。オランダ人のマルク・デ・ウィットという研究者が2015年の世界での資源の流れを計算したのですが、地球から採取されたものは844億トン、そしてその年に回収不能なゴミとして環境中に散在して行った、いわば消費の末端へたどり着いた物質は611億トン。この生活が発展途上国へと浸透して行った場合、一体何年地球資源を持たせることができるでしょうか。。。

子供なんかいらない、作らないという人は将来の自分を想像してください。きっと最後のババを引くことになるのは私たちの世代かもしれません。私も当然、今の便利な生活に浸り切って、エネルギーや資源を無駄使いすることにしっかりと貢献してしまっています。そして何かしなければと思いつつも何も変えられていない現実があります。ですが、せめてもと思い、このようなノートを作成して少しでも共感してもらえることができれば、安岡先生の言う、一燈照隅万燈照国となるのでは無いでしょうか。日本人の和の精神、自然、ものを大切にする心はきっと、現代の深刻な人類の閉塞した過難に対処する一筋の光になるのでは無いでしょうか。

本日も私めの駄文を読んでいただきありがとうございました。

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