穏やかな日々
仕事が本当に忙しいけど、忙しいという自覚がない。何もかもが終わらなくて日付が変わるまで会社に残っていたら残業時間がすごいことになってたりするだけで、なんか働いているときは忙しすぎて記憶がない。泳いでいるときみたいだ。
忙しいけど、なぜか私は元気だ。まあまあ最悪なことがあって、それを会社の人には言わなくて、言わなくても良いということが落ち着く。ただ頑張って目の前のことをこなしていれば、私はもうそれで良くなる。
つまり私は仕事にかまけて私の人生をサボっているのだった。だから元気なのだ。
友人と喧嘩したり片思いを続けたり、そういう人生の機微をなんかもう全部あきらめてしまった。何かがモゴモゴと手の中で動いていて、それを握りつぶしながら出勤している。
日々は凪いでいて穏やかだ。7時間くらい寝て、美容院に行きたくて、怒られて泣いて、お風呂入るのを諦めて、言われた言葉を思い出して、もう会えないことを知ってちょっと切ないけどもう泣かない。
そういうなかで取りこぼしていることがいくつもあるように感じて、でもまた仕事で忘れていく。
もう、最近は随分と歩くことも減った。近所を歩き回って知らない景色を知るようになったり、知らない場所なのに落ち着いたりする機会がない。
大切だったことを大切にしながら、今を明るくまっすぐ生きていくのは、まだ、すごく難しいことに思えるよ。
仕事が忙しいので、会社のみんなはちょっとずつ元気がないか、忙し過ぎてもう元気になっている。
会社で仲が良い人(ちょっと元気がないほう)とお昼ご飯を食べに行ったら、
「なんかいいこと、最近あった?」
と聞かれた。
「え…探すね」
と言ったが本当にないので、
「あった?」と聞いたら、「あるには、あるよ」と言われた。
iPhoneをスクロールした後に
「可愛いマンホール見つけた」
と見せられた。
こういう瞬間が幸せなことさえ、私は忘れていた。
もうちょっと頑張ります。
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