見出し画像

【記事紹介】ミランの守備が機能しないのは…

Ciao!ドドン小西です
面白かった記事を紹介するコーナー
第5弾はフォンセカ・ミランの守備について
今回もお馴染み『L'Ultimo Uomo』の記事から
小西が翻訳し、更に意訳要約しているので詳細は元記事を読んでね
以下、リンク🔗

1. 序論

ミランの守備が抱える問題は、すでに3シーズンにわたり続いている。
2022年のスクデットを支えた守備戦術が、現在ではチームの最大の弱点となっている。
特にトランジションでの脆弱さ、デュエルでの守備陣の不安定さ、セットプレーでの集中力の欠如が挙げられる。
これらの問題は、2024/25シーズンの開始時点でも改善されておらず、依然としてチームの課題となっている。

2. ミランの守備の現状

フォンセカ監督は新しいボール非保持の守備原則を導入しようとしているが、現状では成果を上げていない。
従来の人に対して厳格に守備を配置するスタイルから、ボールを基準にした守備へと移行しようとしたが、これが効果的に機能していない。
トリノ戦およびパルマ戦では、異なる守備アプローチを試みたものの、結果的に同様の問題に直面した。
ミランはプレス時にポジションチェンジ(スライド)が遅れ、相手チームが簡単にボールを運び出せる状況を作り出してしまっている。

3. セリエAにおけるゾーンディフェンスの課題

フォンセカのゾーンディフェンスは、セリエAの環境では成功しにくいと考えられる。セリエAの監督たちは試合の流れをコントロールすることを重視し、ビルドアップに関して非常に創造的であるため、高いプレスを仕掛けるチームはその戦術を崩されやすい。セリエAでは、ゾーンディフェンスよりも人に対して守備をする方がリスクを抑えやすく、より安全であるとされている。

4. ミランの具体的な問題点

トリノおよびパルマとの試合で示されたように、ミランはプレス時に相手の動きに追随できず、ポジションチェンジが遅れることで、相手にスペースを与えてしまっている。
特に、守備ラインのスライドが不十分であり、選手間の連携が取れていない点が指摘されている。
また、プレッシングをかける際のタイミングや精度も欠如しており、これは選手の意欲や能力の問題として捉えられる。

トリノ戦

ミランは、ヨヴィッチの存在が高いプレスでは制約が多すぎるため、中~高ブロックを保ち、トリノの3人のセンターバックにボールを持たせることを選択

以下の場面
トリノはミッドフィルダーを介してセンターバックのサウール・ココに戻し、彼が右のセンターバックのヴォイヴォダに展開。
ミランは追いかけてスライドせざるを得なくなった。

レアオはヴォイヴォダに向かう前に中央へのパスラインを遮断する必要があり、その結果ヴォイヴォダはボールをコントロールし、右側のベッラノーヴァに渡す時間ができた

しかし、サーレマーケルスはベッラノーヴァから離れすぎており、プレスをかける前に、ベッラノーヴァはボールをコントロールし、顔を上げてリッチの深いランをサポートする時間があった。

コレらは一例に過ぎない

パルマ戦

パルマ戦でも同様の問題は発生している。
ミランは4-1-3-2のフォーメーションで高い位置からプレッシングをかけ、パルマは4+2の形でビルドアップ。

原則としては、フォワードがセンターバックとゴールキーパーにプレッシャーをかけ、ボールサイドのウイングがサイドバックに出る一方で、トレクァルティスタ(この場合はロフタス=チーク)と反対側のウイングはスライドしてついて行く。

例えば以下の場面
フォワードはゴールキーパーとセンターバックにプレッシャーをかけ、レアオがディフェンダーのバログに時間を与えて、サイドバックのクリバリにボールを展開させる場面。
ここでミランはボールを奪い返す狙いだった。

ラインデルスがサイドに広がると、ディフェンシブミッドフィールダーのベルナベがその背後にサポートにまわる。それにロフタス=チークが追随する。
もう一人のディフェンシブミッドフィールダーであるエステベスは、フォワードとの連携によってカバーされる。
レアオが下がって彼を遮り、オカフォーが彼を追う。

しかしレアオが下がってカバーすることで、センターバックのバログがフリーになり、そこからクリバリへ戻すことが可能となる。

バログは再びゴールキーパーに戻し、パルマは逆サイドへの展開を準備。
その際、プリシックは左のディフェンダーであるチルカティと左サイドバックのヴァレーリの間にポジショニング。

鈴木はディフェンダーのチルカティに楽にパスをつなげる。
もしミランが本当にアグレッシブで効果的なプレッシングを行いたいのであれば、プリシックはチルカティに前進してプレッシャーをかけるべきだ。
そして、左サイドバックにカラブリアがプレスをかける必要があるはずだ。
しかし、ミランはその前進を行う勇気がない。
そのため、プリシックはセンターバックからサイドバックへのパスライン上に留まり、チルカティは少しドリブルを見せた後、再び鈴木にボールを戻した。

このあと、このパルマのパス回しが成功する。

鈴木はオカフォーからのプレスを受け、右センターバックにパスを出すが、そこにレアオがプレス。
その間、ラインデルスはサイドバックのクリバリに対応するために開く。
しかし問題は、ラインデルスの背後のスペースにベルナベがポジションを取っていることだ。

ミランは継続的なポジション移動により、組織が乱れ。ロフタス=チークはエステベスについて行ってしまい、ラインデルスから離れることになる。そのため、ベルナベへのパスラインをカバーすることも、後で彼にスライドすることもできない状況になってしまったのだ。

ベルナベはボールを受けてターンすることができてしまう。
誰が彼にプレッシャーをかけるべきだったのか?

テオは右ウイングのマンをマークして開いており、もしかしたらパヴロヴィッチがラインを破って背後からベルナベにアグレッシブにプレッシャーをかけるべきだったのかもしれない。

または、ムサが他の選手をフォローし、そのサイドをカバーするべきだったのか?

トリノ&パルマ戦の共通点

ミランはポジションチェンジ(スライド)によって、パルマやトリノがボールを動かす場所に対して常に一歩出遅れる。
相手チームがセンターバックにボールを戻すだけで、簡単に前に進むことができたのだ。ミランにとっては、そのプレスは常に不十分だ。

数的不利な状況でのスライドを伴うプレスは、ボールを幅広く動かす忍耐力のあるチームに対しては簡単ではない。
プレスを行う際には、ボールを持つ選手(センターバック)にもっと積極的にプレッシャーをかけるか、スライド時の走力を高める必要がある。

しかし、ここで問題が生じる。
ミランの選手たちはそのようなプレスを実行するための意欲と能力があるのか?
プレスのタイミングと精度を高めることは決して容易なものではない。
これらの要素において、時間の経過は重要だろう。新しいプレッシングの原則を訓練するのは簡単でも即効性があるわけでもないからだ。
この点において、フォンセカはかなりの信頼と運が必要になる。

パルマの1-0のゴールにつながったプレーでは、すべてが右サイドバックのクリバリからの縦パスから始まった。
そのプレーで、オカフォーは非常に長いスライドを行っている。
まずはディフェンシブミッドフィールダーをカバーし、その後センターバックにプレッシャーをかけ、最終的にクリバリまで追うことになる。
しかしその時点でクリバリは自由にパスを出すことができる状態だった。

理論的には、クリバリに対してはレアオがスライドするべきだったがレアオは遅れてしまい、近づくことすらなかった。

レアオの態度がスライドを妨げるほど影響を与えたのか?
あるいは、レアオは背後にいるソームへのパスラインをカバーすることを念頭に置いていた?

レアオとテオ

守備の局面で少しばかり強度を落としても許される権利をもつ選手がいる。
それは完全に正当な理由で獲得されたものだ。

とりわけレアオやパルマのデニス・マンのゴールの際に時速17kmでしかスプリントしなかったと批判されたテオがその例だろう。

これは、ほとんどのビッグクラブで見られることで、非常に少ない例外を除いて、優れた選手たちは守備の責任を軽減されることがある。

特にこの時期のシーズンでは、優秀な選手たち、そして結果的に優れたチームは、春にギアを上げるのであって、夏や秋ではそうでもない。

したがって、フォンセカとチームに対してすぐに最高の効率性を求めるのは正当ではないともいえるが、選手たちは新しい守備の方法に適応できるのか?

その他の問題

プレスをかける最前線の選手と同様にそれを支える選手の役割も重要だ。

パルマ戦では、ムサはこの点で惨憺たる出来だったが、彼は本職のディフェンシブミッドフィールダーではない(しかしトリノ戦でのベナセル、ラインデルス、ロフタス=チークも同様に十分なパフォーマンスではなかった)

この意味では、フォファナのようなポジショナルミッドフィールダーの投入が、プレスをかける選手の背後でボールを受ける相手選手を抑えるのに役立つだろう。

また、自陣エリア内でも、ミランは効果的でなく、いくつかの場面では完全に集中力を欠いてしまった。

さらに、攻撃も効果的でなく、その結果、ボールを失う場面が多く見られ、ラインデルスは、適切なサポートがない中でボールを運ぼうとしてボールを失ってしまった。

ボールを運ぶ際にボールを失うと、仲間が高い位置や広がった位置にいるため、再度プレスをかけることができず、危険なカウンターを許してしまうことが多い。

5. まとめ

フォンセカは、これらの守備問題を早急に解決しなければならない。

新しい守備戦術の導入には時間と信頼が必要であるが、それに加えて選手たちがその戦術に適応できるかどうかも重要である。

さらに、攻撃時のミスが守備に悪影響を与えている現状もあり、これらの課題を克服することが今後の成績に直結する。

フォンセカとミランのシーズンのターニングポイントが訪れている。
ポルトガル人監督は、セリエAでは珍しい守備のスタイルを導入しようとしているが、セリエAはそのルールに適応できない者を飲み込んでしまうことで知られるリーグなのだから。

ミランがラツィオとの次戦でどのような結果を出すかが、今後のシーズンを占う重要な指標となるだろう。

もっともっとミランもしくはダニエル・マルディーニのちょっと変わった記事が頻繁に読みたいあなた!サポートをいただければその願いは叶うでしょう!お金もらう以上は定期的に記事をお届けしまっせ!