休みを充実させたくて(小説)

責任感。

私を表す言葉。

与えられた仕事、降ってきた仕事は最後まで必ずやり遂げる。

無意識にそんなスタンスになっていた。

完璧主義ともいう。

そんな私が休みを完璧にしたらどうなるのだろうか。


ことの始まりは、感染症の影響で1ヶ月だけ全ての仕事が止まったこと。

驚いた。

仕事が降ってくることはあっても、休みが降ってくることはあまりない。

どうしようか。

その時考えた。

「休むことが仕事で、働くことが休日だとしたら」

世の中キャリアや働き方について真剣に考えても、人生をかけてどのように休んでいくか考えることはないだろう。

しかし、無理やり休む時、休み方がわからなくなったというのが正直な感想である。

だから私は、取り組む。「休み方改革」

休むのが下手だから、上手に働けないのである

休むのが下手だから、仕事がスムーズにいかないのである

だから私は改革に取り組むのである。

月曜日

私は朝6時半に起床する。

今日は週明け初めての休みである。

こんな時は、モーニングを食べに行こう。

1週間の計画を立てなくちゃ。

近所の行きつけのカフェに向かう。

大きめのメガネをかけ、キャップをかぶる。

メイクはせずスキンケアと日焼け止めのみ。

いつものTシャツとデニムを履いて

いつもの無地のノートとゲルインクボールペンを持って

私は起きてから15分で家を出る。

外に出ると、汚れが少ない空気という香りがする。

綺麗すぎてむしろ息が詰まるぐらい。

二駅先のカフェに向かって歩く

ちょうどよくお腹が空くのである

これをしないとモーニングを食べきれない

カフェに着くと、店全体を眺めることができる席をとる

作業しながらふと顔を上げると、他のお客さんの姿が見える位置

誰かが同じように過ごしてるという感覚が好きなのだ

食事は気分に合わせるが、飲み物は必ずアイスコーヒーである。

ミルクもポーションも入れないこのアイスコーヒーの味は、一度味わったら忘れられない

さて、カフェにまで来て今週の計画を立てるのには理由がある。

一つは、自分の部屋は怠けるための部屋であること。

もともと怠惰な性格をしている私は、家だと世の中の全てに面倒くさくなる。

週の初めを家で過ごすことは、その1週間を捨てたようなものである。

だから私は、お金を払ってでも月曜午前の時間を作り出す。

逆に、この時間を逃すと他の日にこのコーヒーを飲みにくることができない

とにかく欠かせない時間なのである。

さて、今週は何をしようか

土日の間にやりたいことが次から次へと浮かんできたはずだ

昨日公開の映画が気になるんだよな

よし、水曜朝イチシネマデー使うしかない

そういえば、幼馴染の歩美が昇進したって言ってたな

お祝いも兼ねてランチでも行こうか

英会話教室は木曜だから宿題は明日までに終わらせよう

この世界では世の中の人間が週2日ずつ働く。だから、平日に2日働く人もいれば、私のように土日に働く人もいる。

そんなんで社会は回るのか?

意外と回る。

テクノロジーと人間の集中力ってすごいよね。

生活費の問題は議論のしがいがある。正直休み方改革は休みをいかに充実させるかなんだから。

休みが充実すれば、世の中うまく回るはず。

それを試しているのである。

難しい話だがな。

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