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裸足で鳴らしてみせろ


穏やかな海のような映画ではないのに、くるしくて追い詰められているような気分になるのに、私にとってこの映画は、避難場所のような世界。


初めて観たときから、心の隅っこにずっと2人がいて、2人が過ごした時間が心に宿っている。


父と分かり合えなくて、ガレージに帰ってきた直己に、槙が おかえり と言う。直己はうなずいて、安心したようにすこし笑う。その笑顔に全てが詰まっていて、ああ、誰しもこんなにもただ生きていくのがままならない、と思ったら涙がでて、もっとやさしさが、槙の笑顔のような、からっとしたやさしさが、世界に満ちればいいのに、と祈った。
2人の避難所から外に出ようとすると、現実が押し寄せて、終わりが迫り来る。2人でいたいだけなのに、一緒にいると苦しい。救いはどこにあるのか、お互いの存在だけがお互いにとって救いなのに、どうして一緒にいると苦しいんだろう。



青色のだいすきなポスター、見るだけでこの世界に帰れる。みんなが分かり合えるわけはない、それはわかっている、でもすごく孤独を感じるわたしという存在も、この映画世界の中では溶ける。



隙間に吹く風に、色をつけて、見えるようにしてくれて、ありがとうございました。この作品があれば、すこし息がしやすい、たからものの映画です。

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