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ヘイターはヘイトを巻き散らかしながら凝縮していく

インターネットの出現によって個人の発信を拡散するエコシステムを構築することでビジネスを行っている。この情報の源泉を利用したシステムは、個人の発信に依存したTwitterやインスタグラムのようなSNSだけではなく、インターネット掲示板のような古来からあるウェブサービスの原動力にもなっている。

個人発信に依存したシステムは爆発的な拡散力と世界中の情報を集める情報収集能力をもつ。その一方で問題も孕む。たとえば、ヘイトスピーチやエコーチェンバーなどの問題がそうである。この個人の情報を拡散力させるシステムは、個々人の憎悪を拡散させたり、その憎悪の渦にユーザーを取り込んだりしてしまう。インターネット、特にSNSを日常的に利用したことある人はこのような他人の憎悪に一度は触れたことがあるだろう。

今回紹介する論文はこの憎悪の拡散とエコーチェンバーの関連を分析した論文である。Goelらが複数のインターネットプラットフォームを調べたところ、明らかになったのは「ヘイターはヘイトを巻き散らかしながら凝縮していく」ということである。つまり、ヘイトスピーチとエコーチェンバーという2つが混ざることで、インターネットの罪が生み出されているかもしれないということである。

この論文が面白い点は、複数のプラットフォームを調べることで一般的な法則を見つけようとしている点である。TwitterやRedditというオーソドックスなSNSだけでなく、極右系のSNSとして有名なGabも分析されている。GabにをヘイトスピーチのためのSNSと考える人も多く、この種の論文ではよく分析対象となるようなSNSである。

横軸の凝縮度(Core bucket)が高くなっていくにつれてヘイトが強い(色が濃い)ユーザーが増えていることがわかる(論文Fig2より抜粋)
縦がエコーチェンバーにおけるヘイトユーザーで横がエコーチェンバーの均一性(論文Fig4より抜粋)

この論文で明らかになったのは、ヘイトを巻き散らかすヘイターがソーシャルネットワーク上での中心的な役割を果たしているということである(情報カスケード)。ヘイターがネットワーク上で中心的な役割を果たすからこそ、エコーチェンバーを引き起こし、単一的なイデオロギーに自ら巻き込まれていく。つまり、負のフィードバックループのように、ヘイトがヘイトを集めネットワーク上で繋がりのある人も同じヘイトを撒くようなっていくのだ。



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