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『泣きたい私は猫をかぶる』感想

映画『泣きたい私は猫をかぶる』を観ました、ネタバレ感想です。

夏の日曜日に観たくなる爽やかアニメ映画でした。

どこもかしこもめちゃくちゃジブリっぽいのでジブリが好きな人はおすすめかもしれないです。明らかにジブリを意識して作られているので…

ムゲちゃん、賛否ありそう(否のほうが多そう…)なうざさとか不器用さとか微妙さとか個人的にはリアルで可愛いと思ったし私はこういう破天荒な女の子が好きです。

人のときには絶対言われない日之出くんの「好き」が切なくて、それを受けたムゲちゃん(猫)の表情も分かりやすく切なさが表現されていて序盤からすでに泣いてしまう涙腺おばさんになりました。

猫のときの表情の豊かさでいえばもう1つ分かりやすいシーンがあって、ムゲちゃん(猫)が乾かしている陶器に足跡つけちゃって「あ」って顔してるところ、本当にコイツ…という感じでめちゃくちゃ好きでした。あの一瞬の表情に、ムゲちゃんの人物像というか、どうして日之出くんにああいうアプローチをしてしまうのかという根本的な部分が描写されている気がします。後半、ムゲちゃんが猫に変身しきれなかった日之出くんに対し「日之出らしい」と笑うシーンがありますが、ムゲちゃんの「ムゲちゃんらしい」シーンがあるとしたら、私はここだと思いました。真剣に陶芸やってる人からしたらイライラポイントだったかもしれないけど、私は妹が小さいときに宿題を破かれてもノートに落書きをされても髪の毛を引っこ抜かれても「可愛いなあ」としか思えなかったので、多分猫に作品に足跡をつけられてしまうことも「可愛いなあ」と思えるのかもしれないと思ったし、実際日之出くんは特に気にしていないどころか好意的に受け止めていましたね。良かった。

自分の家のこと、薫さんのこと、日之出くんのこと…うまく行かないなか猫になることができて、猫のときの日之出くんとの関係に甘えながらも、「人間として日之出くんを助けたい、好きと言われたい」と願うムゲちゃんは芯の強い女の子なんだなと思いました。

「気遣いだらけの優しい言葉より、日之出の容赦ないトゲトゲの言葉のほうが大切だ」
「無理して笑って何が悪いんだよ、そうしたいんだよ」

台詞からもムゲちゃんの強さ、不器用さがよく表れているなあと思います。素直そうに見えて(恐らく無意識のうちにそう見せてるんだろうけど)実は本心をうまく表現できず、周囲からは理解されにくいムゲちゃんを、お母さんはお母さんなりに、薫さんは薫さんなりに、ヨリちゃんや日之出くんもそれぞれきちんと理解したいと思ってムゲちゃんの本心を見ようとしている関係性が好きでした。

ムゲちゃんの手紙を悪ガキたちに読まれるシーンから涙がとまらなかったのにムゲちゃんが泣いちゃってもう〜〜〜!ここからはほとんど泣きながら観ました。

ムゲちゃんが手紙を読まれ、日之出くんに拒絶されたあと、よりちゃんが代わりに泣いてくれること、なによりも大事だと思いました。思春期に限らず、共感(分かるーという表面上の相槌ではなく、相手が自分と同じ気持ちになってくれることです)ってすごく大事なことなんだと、この年齢になってから思います。よく、病気を抱えた人を健康な人がそばで支える際に「暗い顔をしてはいけない」「明るく振る舞わなければいけない」と思いがちなんですけど、当人からしたら一緒に泣いたり不安になったり怒ったり心配したりそのままの反応を見せてくれることが1番安心できたりします。

「本当はムゲのこと好きとか言わないよね?それだと、私が先に聞くわけにはいかないんだけど」

この台詞によりちゃんの魅力が全て詰まっていると言っても過言ではないのではないでしょうか…

また伊佐美くんもすごく良い友達だと思いました。よりちゃんとは対照的に、余計なことは聞かず余計なことは言わずただ黙って日之出くんを見守っていた印象があります。ムゲちゃんに対しても同様で、「無限大の謎」と言うことはあっても、それによってムゲちゃんの行動やムゲちゃん本人に対して大きな嫌悪感を抱いていないところが良かったです。お弁当を4人で食べるシーンでムゲちゃんと日之出くんのやりとりを横目にもぐもぐし、ムゲちゃんの「無限大の謎」行動に対して声を出して笑っていた伊佐美くんが心の底から好きです。あまり本筋には絡んできませんでしたが、この映画で1番好きなキャラクターは伊佐美くんです。

ムゲちゃん(きなこ)が突然かおるさんに優しくなってお母さんに冷たくなるの露骨すぎて面白かったです。ムゲちゃんもきなこも自由人っぽさこそ似ていますが明らかに性格が違ったので、日之出くんやよりちゃんがたとえ姿が同じでも「なんか違う」と分かるのも納得だなと思いました。

少し気になったところをあげるとすれば、前半の心理描写が圧倒的に良すぎて、後半の蛇足感というか、普通の映画で盛り上がるはずのところで盛り上がらずに終わってしまったというか、世界観とのマッチングがうまく行ってないのかなと思いました。あまり声優さん、監督、脚本家に詳しくない私が珍しく名前を覚えている監督・脚本家が岡田麿里さんなんですけど、岡田麿里さんの心理描写は本当に好きだなと思うので、岡田麿里さん脚本のファンタジー要素のない青春アニメ映画を観たいです。(もうある?)

ヨルシカの挿入歌『夜行』主題歌『花に亡霊』エンドソング『嘘月』、あまり詳しくはないんですけど、ヨルシカって雨とか夏とか青春とかそういうイメージが強いので、3曲とも映画の世界観とすごく合っていて良かったです。特に挿入歌が好きです。

前後のバランスには多少思うところがありますが、それを含めてもとにかくとても良い映画だったので、劇場公開じゃなくなってしまってもったいないなーと思います。大きい画面で大号泣したかったです。小さい画面でも大号泣してしまったんですけど。

最後になりますが、猫って本当にあんなふうに人間の肩に洗濯物みたいに乗っかったりするものなんですか?

あいざわ

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