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Daniel Grassl: Visibly Emotional New Stuff

もう早くも3週間前のことになりますが、スケートアメリカ2022ありがとうございました。結局10月、スケアメより大事なこと1個もなかった。贔屓目もあるにせよ、早くも(私の沸き度という観点での)今季ベスト演技が出たかもしれないので所見というか、感想? を書き置きしておきます。

フォロワー各位はご存じの通り、『人間の可動域の限界でウケる』とお馴染みのダニエル・グラッスルさんが私の最初で最高の推しなのですが、スケアメでのSP『Silhouette』が本当に素晴らしい演技で、未だに思い返すと感動でいっぱいいっぱいでちょっと泣きそうになるくらいです。

そこそこ長文なので初めにざっくりまとめると、これまで見たことないくらい感情が溢れたパワーのある演技で、キスクラでも泣きそうなほど嬉しそうだった顔がずっと脳裏に残っています。昨季に比べてもシンプルな動きの質から少し変わっているようですし、明らかにステップアップしている感じが見て取れたのでもっと磨いて何かを掴んでほしいですね。

全体的に言うと、根本からまた1段階レベルアップしている気がします。昨季ワールドでいちど完璧に実施した4Lz/3A/3Lz3Tの構成で要素の部分はかなり安定感がありました。正直USクラシックのこともあってオールグリーン出してくるとは思ってなかったんですが、最終的にあとはレベルが取れれば……くらいまで綺麗にまとめていてそれもうれしかったです。

引き続き、ちょっとジャンプでGOEが伸びにくい気がしますが、勢い強めで若干危なっかしいせいかもしれませんね。ワールドSPの3Aと五輪FSの4Fは綺麗だったのを覚えています。私はそれなんで降りれる!?みたいな怪しい離氷着氷を見ると興奮するタイプの人間なのでこの辺は信用しないでほしい。

その他ムーブメントにおいても、これまでのリショープロでの柔軟で斬新な動きの特徴を活かしつつ、より曲線的でたおやかな新たな一面が出ていました。このまま組み続けたらバレエジャンプもやり始めそう。

また、彼のパフォーマンス面での魅力、強みは
①スター性のあるルックスと高難度ジャンプを含む荒々しい演技のギャップ
②高い柔軟性を活かした独創的なスピンをはじめとするムーブメント
だと思っています(①についてはTHE ICEと解釈一致してました)。リショーさん振付と特に②の相性がよく、何よりスピンのポジションとトランジションの印象がよく合っているのですが、今回ジェイソン振付で全体の柔らかさが増して、より変態軟体スピンが溶け込んで映えていたのではないかと思います。

また終盤へ向かうにつれて、だんだん目がキラキラしてきて表情が輝いて、神がかったオーラが画面越しにも刺さりそうなくらい溢れてきてすごく楽しそうで、見ていてもう痛いほどに感情が乗っていたと思います。特に印象的だったのはStSqでした。確かにあれは開化の瞬間で、紅潮した頬、爛々と光る目、伸びやかな四肢がなんとなく、五輪での演技を想起させました。昨季の2つのプログラムより前をまっすぐ見ること、見上げること、めいっぱいに体を広げる動きが多かったと思います。最後の数十秒は羽化したように、どこを取っても晴れやかでした。
それこそ五輪FSではとても活き活きしていて、今回と同じように後半疲れが見えるにも関わらず、むしろ目が煌々と光って高揚している、言うなればスケーターズハイ的な状態だったのかと後から思っています。ワールドSPもかなり満足度は高そうでしたがそのときはあまり溢れてる感じではなかったのでやっぱり今回殻を破ったんだなという印象です。

『ワールド・フィギュアスケート No.95』(新書館)のインタビューで昨季SP『Nureyev』について、クラシックの曲調の音楽を自分の内側に感じられたことは意味があってお気に入りのプログラムだと言及していたので、あれは内省の意味を持っていたんだろうなと思っています。
またショーやEXでの様子を見ているとちょっとシャイというか、いつ見ても仲のいい誰かといるので、割合内向的な人なのかなと思ってました(今年7月〜10月とか絶対ジェイソンかマリニンかクラコワさんの隣にいます。おマブに囲まれてて幸せそうだね。もうなんかジェイソンに懐いてる感じでめちゃめちゃかわいいです)。
だからなおさら、この『Silhouette』で思い切り外向きにエネルギーを表現してきたのが新しく感じて、これまで醸成してきた感情をふんだんに溢れさせているような解放的な振付に進歩を感じました。

『Nureyev』は
・自分を守ろうとしているような腕の取り回し
・肩を撫でる
・肩を抱いたり顔を伏せたりする
・終始見えないものと戦ってる目をしている

『Interstellar/Armageddon』は
・目線は前向きの時間が長い
・脱皮、または生まれ変わるように後ろへ滑る
・首撫でが多い
・手を差し伸べる動きも多い
・ときどき訴えかけるように手を振る
・両手を広げてのけぞるのも3回ほど
(↓2:16:40ごろ〜)

後者とはいくつか共通項が見られますね。
それを踏まえて今思うと『Interstellar』も殻を破る試みのひとつだったんでしょうか? 『Nureyev』が完全に内省の、ひとりのプログラムだったとしたら、『Interstellar』はそれがふたりに広がったような、感情と相互干渉のステップ1みたいなことをやってたのかなという印象。手を差し伸べる振付が多くて毎度私は泣いていました。きみが見てるのは私じゃないんだよな。もう一回ちゃんとこの話したくなってきた。

スケアメではSPだと10点、FSでは20点くらいPBには足りなかったんですが、PB出たときくらいやりきった嬉しそうな顔をしていて、とても意義のある大会だったと思います。
五輪からしか見ていない身としても、昨季はかなり飛躍のシーズンだったんだろうなと思いますが、そこからアメリカに渡って環境も振付師も変わっている状態で、あんなにいい顔ができるくらい満足いく演技になったのは真性の強さによるものですよね。内省、そして一歩外に出てみたことを経て確実に新しいステージに進んでいるとわかって安心しました。

実は今季SPは当初、THE ICEでお披露目された『I Feel Love』でした。『Silhouette』はスケアメ当時振付からわずか1週間だったとのことなので、時期的にはジャパンオープンとスターズオンアイスで来日していた間、またはその直後に作ったんじゃないかな?
『I Feel Love』については3回ともほぼ夢見心地で見ていたこともあって特段言えることもないんですが、日本のショーに呼ばれるようなトップスケーターとしての、そして今季の新たな歩みだしを飾った象徴的なものなのでスケアメEXで見られて感無量でした。
Twitterでは競技プロでよくない? という声がいくつか観測できましたがこの通り本当は新SPでしたよ、という話。

最後にもう一度まとめますが、もう、本当によかった。門出をお祝いする気持ちでいっぱいです。スピンステップのレベルが取れて、USクラシックで入れていた4F3Tか何か、2クワドに上げられればまだいくらでも伸びしろがありますね。今季100点出すんじゃないでしょうか。というか出してほしいです。
まったくの余談ですが5Lzと5Loの練習を再開しているようなので、4Lzが不安定だったり4Loが留守番ぎみだったりはそのせいかもしれませんね。そのうちまた安定してくるんじゃないかな〜〜。
というわけで、スケアメは限界オタクにとっても巨大な意味がありました。完全復活、というより超回復? をお待ちしております。

見ているだけの立場からもっともっとと求めることは簡単で、ためらいや後ろめたさもあるにはありますが、だからこそそれでも強く進化して羽ばたき続ける姿が見たいという気持ちを書き残させてください。

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