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【超将棋】レート1位が教える、序盤の戦法・定跡【ターン制バトル】

ぶっちぎり

解説に入る前に、自己紹介をしよう。

私(えいえい)は超将棋という、以前twitterでバズった将棋(笑)ゲームで世界一位のレートを獲った人間だ。

最近、3段になることが出来たので、noteを更新することにした。

これからも、段位が上がるたびに更新しようと思う。


私のnoteでは「バカゲーを楽しみたい!」という方よりも、「勝てるようになりたい!」という方に向けて発信をしている。

この記事では、「基礎は覚えたけど、序盤にいきなりハメ殺しされた!」「逆に相手を序盤で圧倒したい!」という方に向けて、序盤の戦法定跡を解説している。

汎用的な知識(駒のラインカタパルトなど)は知っていることを前提に語るため、分からない方はまずこちらの記事から見るといいだろう。


はじめに

ここでは序盤の3手(自分→相手→自分)に絞り、自分が先手番の時の戦法を紹介する。

相手がやってきた時の対策もある程度述べるので、自分が後手番の時はそれを応用するといいだろう。

また、戦法ごとにスピード安定性初見殺し性能防御力扱いやすさで5段階評価する。(5が一番上)

あくまで私個人の主観なので、必ずしも正確ではないことを断っておく。


鬼殺し(全体性能:5)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:攻撃力も防御力も群を抜いて強いが、とにかく扱いが難しいので、上級者向きの戦法である。


31.鬼殺し1

初手で左桂をほぼフルチャージするのが、鬼殺しの宣言だ。

この「ほぼ」というのが重要で、100%フルチャージだと角が飛びすぎてしまい、相手玉に狙いをつけられない。

体感だと9割5分チャージぐらいがベストである。

32.鬼殺し2

相手の手は省略し、自分の狙いを説明しよう。

33.鬼殺し3

次に角をフルチャージする。

ここは100%フルチャージで構わないが、角の位置が悪いと思えば80%チャージに切り替えるのがポイントだ。

そうしないと角が吹っ飛んでしまうからだ。

「位置が悪いってなんやねん」と思うかもしれないが、具体的にどういう時が悪いのかは後で説明しよう。

34.鬼殺し4

角の位置が良いと思えば、フルチャージで投げつければ将棋は終わっている

次の瞬間には、黒背景に「勝ち!」の文字が表示されるだろう。

この2ターンキルがこの戦法最大の魅力であり、最強の武器である。

34補足.鬼殺し5

ちなみに2ターンキルに失敗しても、相手玉の目の前に馬が出来る

相手がカタパルトを知らなければ3ターン目には殺せるのも非常に偉い。


ではここで、「角の位置が良い(悪い)」とは何かを解説する。

34補足.鬼殺し6

超将棋における居玉の急所は、4三・6三の歩なのだ。(今回は6三の歩)

ここを大駒で弾くと、自動的に相手玉を押し出す形になる。

角がここを睨んでいるなら、フルチャージでぶっ放していい。

逆にここを睨んでいないなら、80%チャージで行くのが賢明だ。


また、鬼殺し戦法は攻撃力だけでなく、防御力も高い

35.鬼殺し対アグロ飛車1

36.鬼殺し対アグロ飛車2

相手が飛車を突っ込んできたが、自陣に全く届いていない。

左桂を飛ばすことで、陣形の左側に厚みを築いてもいるのだ。

とはいえ、先攻2ターンキルを防ぐ手段としては飛車を突っ込むのが一番良いだろう。

37.鬼殺し対アグロ飛車3

38.鬼殺し対アグロ飛車4

先手はこの後、飛車をカタパルトで玉頭に飛ばして戦うのが定跡である。


アグロ飛車(全体性能:4)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:初心者にも非常に扱いやすい上に、スピードも安定性も高いが、防御に回ると一転して弱い


17.アグロ飛車1

初手は飛車をとにかく全力でぶっ放そう

18.アグロ飛車2

自分の飛車を捌きながら、相手の角を封印できるのが強みだ。

この後、いくつか分岐があるので一つずつ解説しよう。


1.アグロ飛車縦使い(全体性能:3)

19.アグロ飛車縦使い1

20.アグロ飛車縦使い2

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:扱いやすいが、スピードが意外に遅いのが欠点だ。


もう一度竜を縦に使い、強引に敵陣に突っ込む指し方だ。

単純ながら破壊力は抜群で、次に竜を横に動かして玉頭を押さえるのが厳しい狙いである。

欠点はそのスピードの遅さで、アグロの割に敵陣でもたもたしがち

慣れてきたら別の分岐も試してみよう。


2.アグロ飛車横使い(全体性能:4)

22.アグロ飛車横使い2

23.アグロ飛車横使い3

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:安定性があってスピードも速いが、少々扱いにくい。


竜をと使って敵玉に迫る指し方だ。

最短3ターンキルなのでスピードは速いが、駒にぶつかって移動するので挙動が不安定になる。

うっかりすると竜を殺してしまい、たちまち敗勢になるので気を付けよう。


3.アグロ飛車斜め香(全体性能:5)

29.アグロ飛車斜め香1

30.アグロ飛車斜め香2

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:扱いやすい上にスピードも初見殺し性能も抜群だが、相手が対策を知っていると無力である。


香車を左斜めに45°回転させながら、フルチャージでぶっ放す。

自動的に相手の玉頭を押さえこむことが出来て、カタパルトを知らない初心者相手なら簡単に勝てる

ただし、以下の対策を知られているとそもそも作戦が成功しない

28補足2.アグロ飛車対策2

28補足3.アグロ飛車対策3

それがこの玉の早逃げだ。

竜からも遠ざかる意味がある。

28補足4.アグロ飛車対策4

以下、香車をぶっ放しても...

28補足5.アグロ飛車対策5

玉頭を押さえることは叶わない。

こうなると斜め香戦法自体が不成立に終わってしまうのだ。


ゴキゲン中飛車(全体性能:4)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:全体的にバランスの良い戦法だが、相手のハメ技を喰らいやすいのが難点だ。


69.ゴキゲン中飛車1

70.ゴキゲン中飛車2

本将棋のゴキゲン中飛車は後手の戦法だが、イメージ的に合っているので便宜上、ここでは先手番でもゴキゲン中飛車と呼ばせてもらう。

初手は飛車を中央に振る。

狙いはもちろん、次の飛車特攻だ。

71.ゴキゲン中飛車3

72.ゴキゲン中飛車4

この攻めっ気はまさにゴキゲン中飛車だろう。

こうなると、と金・竜の攻めが非常に厳しい

初手の飛車振りの加減さえ覚えれば扱いも非常に簡単で、私も環境初期は愛用していた戦法だ。

ただ一つ、大きな問題がある

それは、初手で飛車を回った瞬間が弱いということだ。

73.ゴキゲン中飛車5

74.ゴキゲン中飛車6

この瞬間に鬼殺しや、桂馬ワンショットを喰らうとフキゲン中飛車になってしまう。

飛車が邪魔で玉を逃がせず、カタパルトで緊急脱出するしかない。

そうなると玉が囲いの外に出てしまい、流れ弾を喰らいやすくなってしまう

超将棋では、先にカタパルトで玉を逃がした方が不利になると覚えておこう。


桂馬ワンショット(全体性能:4)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:先程紹介したアグロ飛車斜め香と同じく、知らない相手には非常に強力だが、対策を知られていると全く刺さらなくなる戦法である。
しかし、と金を製造することで何とか攻めを繋げることは可能だ。


2.桂馬ワンショ1

3.桂馬ワンショ2

桂馬ワンショットという戦法名だが、初手は角をフルチャージする。

この角を動かすのがいいカモフラージュになり、次の桂馬跳びを気づきにくくしているのだ。

4.桂馬ワンショ3

5.桂馬ワンショ4

相手が気づかなければ、桂馬をフルチャージすればゲームセットだ。

私も、初めて喰らった時は「あっ!」と声が出たものである。

8補足1.桂馬ワンショ対策1

8補足2.桂馬ワンショ対策2

ただこの戦法も、玉を早逃げされればそれまで

とは言っても、これで打つ手無しかと言われればそうではない。

8補足3.桂馬ワンショ対策3

8補足4.桂馬ワンショ対策4

垂れ歩の手筋で攻めを繋げていく。

成り駒は本将棋と同じく、玉に近ければ近いほど価値が高いと覚えておこう。

この後は、と金で玉を押さえ込む。


7.桂馬ワンショ6

8.桂馬ワンショ7

また、飛車カタパルトで玉頭を押さえ込む攻めもある。

玉を下に追い戻せば、再び桂馬ワンショットの筋に入る


9.桂馬ワンショ弱点1

10.桂馬ワンショ弱点2

また、この戦法には致命的な弱点がある。

それが相手の飛車アグロだ。

角で陣形の左側を吹き飛ばしてしまうせいで、飛車の特攻に物凄く弱くなっている

ただし、返し技もしっかりあるので、この戦法の全体性能を4と評価している。


返し技1.桂馬跳ね出し

11.桂馬ワンショ切り返し1

12.桂馬ワンショ切り返し2

取られそうな桂馬を跳ねる。

相手の竜を追い返しながら、取られそうな桂馬を逃がして相手玉に迫る一石三鳥の手で、まさにピッタリの返し技だ。

しかし、相変わらず自玉が薄いので、安心した戦いは出来ない。


返し技2.斜め香

16補足1.桂馬ワンショ切り返し7

16補足2.桂馬ワンショ切り返し8

右斜めに45°回転した香車を使い、相手の竜を弾き返す。

相手の竜を撤退させることは出来るが、見ての通り撤退させた竜の位置が悪い

ちょうど竜が玉頭を睨んでいる形になるので、再び突っ込まれてしまうのが欠点だ。

また、一見すると次の桂馬ワンショットで勝てるように見えるが、相手のと金が邪魔しているので不可能なのも泣き所である。


角頭歩(全体評価:3)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:扱いやすさと初見殺し性能に全振りした戦法だが、対策を知られていると本当に無力なのが悲しいところ。


54.角頭歩1

55.角頭歩2

初手でいきなり角前の歩を突く

今回は解説用にわかりやすく突いているが、実戦ではミスを装って少しだけ突くのがいいだろう。

相手が何もしてこなかったら、たちまち強力な戦法である玉頭馬に変化する。


変化1.玉頭馬(全体性能:5)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

56.角頭歩3

57.角頭歩4

角をフルチャージして、相手の玉頭に飛ばす。

相手がカタパルトを知らない限り、ほぼ確定で3ターンキル出来る

また、自玉の上にある歩が密集しているのもポイントで、玉を一つ上がるだけでとんでもない耐久力を誇るのも大きな強みだ。


変化2.一手損玉上がり(全体性能:2)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:安定した防御力を誇るが、攻めが弱いのでカタパルトで上手く相手にプレッシャーをかけていこう。

59.角頭歩弱点2

60.角頭歩弱点3

相手の飛車が突っ込んでくると、せっかくの角頭歩が無効になってしまうのが悲しい所だ。

これでは相手に先攻を取られて飛車アグロされているのと何ら変わりない。

61.角頭歩弱点4

62.角頭歩弱点5

しかし、ここの玉上がりが絶妙の早逃げだ。(飛車アグロの対策編でも紹介している)

少し専門的な話になるが、角頭歩を突くことで相手の飛車の形を決めさせ、手順に玉を逃げ出す味が良いというのがこの戦法の魅力である。

この後は角や飛車をカタパルトで飛ばして攻めるのが狙いだが、相手玉に上手く迫るのが非常に難しい戦法だ。


ちなみにこの角頭歩戦法は私発祥なので、ぜひ使ってみてほしい。


歩兵アグロ(全体性能:3)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:初見殺し性能はあるものの、相手に適切な対処をされるとまるで勝てない。感覚的には本将棋の棒銀のような印象だ。


63.歩兵アグロ1

64.歩兵アグロ2

初手で中央の歩を突くのが歩兵アグロの宣言だ。

一見なんでもない歩突きだが、次に恐ろしい狙いを秘めている

65.歩兵アグロ3

66.歩兵アグロ4

歩をカタパルトで飛ばし、相手玉の目の前に出現させる。

上手くいけば他の駒に乗らずに着地できるので、こうなれば(カタパルトを知らない相手には)3ターンキルが約束される

しかし、大抵何かしらの駒に乗っかってしまうので、安定キルターンは4になってしまうのが悲しい所。

このゲームの4ターンキルはあまりに遅すぎる上に、玉を早逃げされると困ってしまう。


67.歩兵アグロ5

68.歩兵アグロ6

また、相手に鬼殺し戦法をやられると非常に相性が悪い

こちらとしては歩をカタパルトで飛ばしたいのだが、そんなことをすれば角をフルチャージされ、こちらの玉が先に吹っ飛んでしまう

結果として受けに回らざるを得ず、攻めのターンが中々やって来ない。


玉上がりカタパルト(全体性能:3)

スピード:
安定性:
初見殺し性能:
防御力:
扱いやすさ:

総評:非常に難しい戦法で、上級者にしかオススメできないが、使いこなせると駒効率が非常に良い


39.玉上がりカタパルト1

40.玉上がりカタパルト2

初手で玉を上がるのがこの戦法の大きな特徴だ。

今までの解説を見てくれた方はわかるだろうが、超将棋では必ず玉を逃がす手が必要になる。

ならばその手を、カタパルトが使えない初手のうちに打ってしまおうというのがこの戦法の狙いだ。

41.玉上がりカタパルト3

42.玉上がりカタパルト4

この後は角をカタパルトで玉頭に飛ばしたり、

43.玉上がりカタパルト5

44.玉上がりカタパルト6

飛車を飛ばしたりして攻めを繋げていく。

玉を上がっておいたおかげで、相手から一撃必殺を喰らう心配がなく、カタパルトさえ使いこなせれば攻めに専念できる


44補足.玉上がりカタパルト弱点

しかし、この戦法は玉を上がる分、玉頭を大駒で狙われると弱い

こうなると初手で上がった玉をもう一度逃がさなければならず、ただの手損になってしまう

初手の玉上がりを早逃げに出来るか手損に終わってしまうかは使用者の技量に委ねられている。


また、玉を真上ではなく、斜め上に上がる変化もあるので、そちらも見ていこう。

45.玉上がり左1

46.玉上がり左2

玉を左に上がると、相手の角からは離れるが、飛車には近づくデメリットがある。

48.玉上がり左4

そのため鬼殺し桂馬ワンショットには強いが、

50.玉上がり左6

飛車アグロには弱いのが難点だ。


51.玉上がり右1

51.玉上がり右2

逆に右側に玉を上がると、相手の飛車からは遠ざかる角には近づくので、

52.玉上がり右3

飛車アグロに対しては強いが、

53.玉上がり右4

鬼殺し桂馬ワンショットには弱くなる。


相手の得意そうな戦法を読み、逆サイドに逃げるのが肝要だ。

それが分からなければ、真上に上がっておくのが無難だろう。


終わりに

超将棋には色んな戦法がある。

これからも様々な戦法が誕生し、環境も往々にして変わるだろう。

私としては、より多くの戦法に触れて評価したいところである。

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