第1 やること

 1. 記録の閲覧
 民事裁判では,訴訟提起の段階で,訴状や証拠などの記録が存在する。
 そのため,後記する傍聴を行う前に,記録を見て,訴訟物や法律構成,事実認定上の問題点などを把握する。
 そのような事案分析をする際には,時系列表や登場人物の相関図を作って整理をすると把握しやすくなる。
 裁判所の裁判官室には多くの参考となる本が置いてあり,また,裁判所には資料室があるので,分からないことがある場合は,白表紙教材はもちろん,それらの資料を見ながら調査をしておくことが望ましい。
 記録はだいたい裁判官室の隣の書記官室に収納されているので,書記官に声をかけ,記録を借りる。

 2. 手続傍聴
 記録の検討などをしたら,手続きを傍聴する。
 手続きは,第一回公判はもちろん,第二回公判などの証拠調べ,第三回公判などの判決言渡しといった公判手続に限らず,弁論準備手続も傍聴することになると思われる。
 公判傍聴では,書記官と当事者の間にある席に座るか,あるいは,法壇の上で裁判官に並んで座ることになる。
 弁論準備手続は,準備室で,壁沿いの椅子に座ることが多いと思われる。
 なお,民事の手続きは尋問などがない限り,あっという間に終わることが多い。そのため,同じ時間に2つぐらい手続きが入っていたり,15分刻みで何本も手続きが立て続けに入っていることもあるが,大体の場合は時間通り手続きが行われる。手続きが短い分,事件数が多いので記録の検討が大変なので,重要な争点を把握してそれに関する証拠を中心に目を通したり,先述のようなメモを作成して整理しておくとよい。

 3. 起案
 裁判官から与えられた課題について起案を行う。
 問研起案のような形式で起案することもあれば,争いのある事実に絞って起案する,いわゆるサマリー起案の形式で起案することも多い。
 実際の事件の記録を使って起案をすることもあれば,起案用の教材のようなものを使って起案をすることもある。
 起案の内容は争点整理の場合もあれば,事実認定,和解条項の場合もある。
 だいたいは起案した後,裁判官からのありがたい講評が受けられる。

 4. 問研起案
 研修所から送られてくる白表紙記録に基づいて起案を行う。
 半日でやることが多いと思われる。
 内容は,請求の趣旨,訴訟物(個数,併合形態),争点整理(請求原因,抗弁など),事実認定など。
 問研起案の具体的内容については別の記事で記載する予定なので,そちらを参照されたい。
 その後,研修所の教官が修習地にやって来て,講評を行う。

第2 その他

 基本的に,裁判修習は裁判官室に間借りする形になる。
 そのため,手続傍聴などが無ければ,裁判官と同じ部屋で朝から夕方まで過ごすことになる。一応,昼食を持ってきたり買ってきたりして自分の席で食べることも普通は可能だが,上の理由があってかなくてか,昼食を外に食べに行くことも多い。庁によっては昼食が45分だったりして時間が短かったりするので,裁判所に近く,また,すぐに料理が出てくるような店を把握しておくと充実したランチタイムを過ごせる。
 裁判官室は部長の雰囲気に左右されることが多いので,部長がよく話す人ならにぎやかだし,部長が寡黙な人だと粛々と仕事をする感じになりやすい。
 検察庁と異なり,裁判所にはパソコンが置いていないことがある。そのような場合であっても,起案の課題は降ってくる。手書きで起案することも可能だが著しく非現実的なので,各自がノートパソコンを用意し,利用許可を得て,ノートパソコンを裁判所に持ち込んで起案することになる。
 つまり,ほぼ強制的にノートパソコンを用意させられることになるので,その点は注意しておいたほうがいい。なお,導入修習ではスライドが写真撮影禁止であったり,それにもかかわらず教官の話すスピードがとんでもなく早いこと,教官は「メモに必死にならずにスライドを見ながら考え方を身につけるのが大事」という旨言うが修習生がそれを真に受けて大してメモを取らないと十分に理解できずに大変なことになることなどから,爆速タイピングをしながらノートパソコンでメモを取っている人は想像以上に多い。

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