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夢を見るのは

「もう子供じゃないんだから。」

誰に言われたわけでもないのに、ずっとその言葉ばかり聞こえてくる。きっとこれは私が私にかけた呪縛で、私が私を不自由にしている。

昨今の社会を生きていくには、お金が常に付き纏ってくる。お金の為に生きたくないと言って、お金を稼ぐ為に生きている気さえする。
夢を見ることができるのは、限られた人間だけな気がしている。本当は、そんなことないんだろうけど。

私はずっと音楽が好きで、最近はそんなに好きじゃないのかも知れないなとさえ思ってしまっているが、間違いなく私の人生は数え切れないほど音楽に救われてきた。

私も誰かを救いたかった。
それは音楽じゃなくても良かったのかも知れない。
そんな大層なものでもなかったのかも知れない。
きっと私は、音楽が好きだった。
ただそれだけだった。

曲を作って、誰かに聞いてもらう瞬間が好きだった。自分の言葉を、思いを人に聞いてもらうときに、音楽が一番押し付けがましくないと思っていた。聴きたい時に聴きたい人がその曲を再生し、自分と重ね、その瞬間だけは、その人の人生を少しだけ彩る。

誰とも話せない時でさえ、音楽はそっと再生される。音楽は、聴き手を孤独から少しだけ遠い場所に連れて行ってくれるのだ。
あぁ、どうしようもないこんな気持ちは、私だけじゃないんだと。

私の曲で誰かを救いたいと思っていたが、
実際は、私が救われたかっただけだったのだ。
夢を諦める為の言い訳はいくつも思い浮かぶのに、続ける理由を探せなくなっていた。

そもそも、そんなに頑張ってもいなかったなぁ、何もしていないなぁ、私には何にもないなぁと空っぽの自分だけが取り残されて、朝が来るのは異常に早い。その癖、夜は永遠の様に長い。いっそのこと笑い飛ばしてやった方が私の人生に意味ができるだろう。

夢を見ていたかった。
ひとりの夜は嫌いだった。

だけどもう、子供じゃないもんね。

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