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京阪電車は大阪城の夢を見るか?


ご存知だろうか?

大阪には2つ大阪城が存在しているという事を。




一つは1583年に豊臣秀吉によって建てられた雄大極まりない大阪城。こんなもんド常識過ぎて舌打ちされてしまう。

そしてもう一つは
京阪守口市に存在する、大阪城という名の立ち飲み居酒屋だ。

しかし、大阪城とひと口にいっても読み方が違うので注意が必要だ。

守口の大阪城は、大阪城と書いて「だいはんじょう」と読む。


わたしはずっと、この「大阪城」に恋焦がれていた。

なぜ守口の大阪城を知ったかというと、
自宅から片道約1時間の守口市にある「日の本湯」というわたしのホーム銭湯がある。
(日の本湯はわたしの心のオアシスのひとつで、想いが強すぎて一言で説明出来ないのでいつかnoteに書こうと思ってます)

アイラブ日の本湯さん


そこの帰り道に何度か営業時間外の大阪城の前を通っていた。

バチバチのネオン


ひと目見て、えげつない名前だと思った。
トリッキー具合がだだ漏れてしまっている、、、と思いきや外観もかっこいい。
完全にわたしの好みで、迸る一か八か感にめちゃくちゃそそられた。

同じ守口市にあるのに何故今まで日の本湯の帰りに行ったことが無かったかと言うと、
緊急事態宣言中はお店を閉められていたことや、時短営業、さらには元々22時閉店という壁にわたしが勝手に苦しまされていた。


平日仕事を終わらせて守口まで行って銭湯から出るともう23時なんて余裕で超えてしまう。なんなら終電コース。


大阪城へのハシゴなんてわたしには夢のまた夢のハズだった。



そして4月某日。

遂に緊急事態が明けた。


その日は京阪沿線の寝屋川で仕事だった。

終業後のルートは1週間前から既に決まっていた。



京阪電車に乗り込み、二駅先の守口に降りる。
日の本湯に入る。そして、念願の大阪城に行く。


遂にチャンスが到来したというものの、
やっぱり日の本湯さんと話すのも好きだしビールを飲んでのんびりしたいという誘惑が勝ってしまう。

そしてこうなる。

クラフトビールが各種置いてあるのも
胸アツポイント


日の本湯に後ろ髪を引かれながら目的地へ向かう。

意外と遠い京阪守口駅。
時計を見ると21:30を過ぎている。
終わった。ああ、完全に終わった。。。

一か八か恐る恐るのれんをくぐる。

「すみません、、、、、まだいけますか、、、」

「大丈夫よー!いらっしゃいーー!」


えっまさかのいいんですか?!?!
こちら完全なるただの迷惑な一見客なんだけども??!

店主、想像の斜め上を行くめっちゃ笑顔のウェルカムスタイルに驚愕。

てっちゃん。死ぬ前に食べたい物はホルモンです。



そこからもずっとアウェイな雰囲気は1ミリも感じさせず、あれ?わたしここの常連やったっけ?と一瞬勘違いしてしまいそうになるほどのマイナスイオン空間だった。なんと居心地の良いこと。

名物らしいナポリタン。驚愕の390円
姉ちゃんだけにあげるわ!とこっそりもらったいちご。



念願の大阪城は、安さとか美味さ以前に、想像だにしていなかったホスピタリティの高さにめちゃくちゃ感動した。

みんなこの人に会いに来てるんやなって、そういう店。この人じゃないときっと成り立たない店。


22時が過ぎていることに気付き、お勘定をお願いした。

「今日は来てくれてありがとう!また待ってるねー!!」

帰り際に、店主の方からわたしの手をギュッと握ってくれた。


あ、これだ。


何か忘れている感情があると思ったら、これだ!!!!



お釣り返す時はキャッシャーが当たり前の世の中っすよ。
わたしは未だに、レジ待ちの時、癖で手の平を差し出してしまう。

わかっちゃいるのに、目の前にお釣りを置かれるとなんともさみしい気持ちになる。

勿論、あっちからしたら手ぇ出してくんなやろうし。気持ちわかるよ。わたしもやってしまったと思うし。

そらそうだよなぁこんなご時世なんだしこれがニューノーマルか、仕方ない。そう思っていた気がする。


なんでも非対面で営業することが当たり前になっている世の中で、
ここ2、3年のコロナ禍によってわたしも少しこころが冷めてしまっている部分もあった気がする。



人間の1番の共通感情は「さみしい」なんだと、
尊敬する糸井重里が言ってたのを思い出した。

「『さみしさ』が、いちばんの価値なのではないか。こう言うとずいぶん被虐的に聞こえるかもしれないが、うれしいだとか、よろこんでるだとか、たのしいだとか、みんな、そのことそのままの状態では続かないよ。かならず、「さみしさ」の影とともにあるものだ。」
糸井重里のことば


いまの時代は特に何をしていてもどこか「さみしさ」がチラついていたんだろうなと思う。


ひと昔まではなんでもなかったはずのこのシンプルな行為の「握手」が、わたしのこころのどこかに点在していた「さみしさ」の穴を一瞬にして埋めてくれたような気がした。


店を出て、手のひらに残った体温と感触の強さに徒歩5分の京阪守口市駅まで、しばらくの間ぽかぽか浸っていた。

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