見出し画像

「話をしようよ」は2番が最高という話をしよう

12thシングルの発売が決定し、カップリング曲のタイトルを見たその瞬間から、タイトル以外の情報がなかったときから、曲を聴いてもいないのに確信していた。私はこの曲が好きだと。そう、「話をしようよ」のことが。

個人的な好みとして、私は何かを呼びかけるようなタイトルに惹かれる傾向にある。例えば、「愛を伝えましょう」とか「気楽にやろうよ」とか。タイトルだけじゃなく、もちろん曲としても好きなことが多い。そして何より私は、カップリング曲が大好物だ。あくまで表題曲を主役にし主張しない奥ゆかしさと、マイナーだからこそ実は攻めた楽曲が多いしたたかさ。流行りものに素直に飛びつけない天邪鬼な私は、カップリング曲を聴くことで自我を満たしている節さえある。

ふたりきりの5月23日を迎え、期待と不安に板挟みにされてどうしようもなく浮き足立っていたそんなとき、私の目に飛び込んできた「話をしようよ」の文字。こんなにもタイトルだけで好奇心をくすぐってくる曲があるのかと驚いた。しかも、作詞作曲は我らが髙橋海人くんだと言うのだ。五度見はした。

日頃から海人くんのセンスには感服してきたけれど、もはや悔しさすら抱くほどのネーミングセンスだと思った。
きっとこのタイトルに決まるまで、他にも選択肢はあっただろう。それでもこの「話をしようよ」にしたのは正解だったと思う。
このタイトルの一言が、聴き手に「どんな話だろう?」 と想像させてくれる。こちら側に「しようよ」と呼びかけてくれるおかげで、どんな歌詞だろうと耳をすませることができる。加えてどこか懐かしさを感じさせるシンプルな曲名だからこそ、余計な心構えをさせずに曲を聴くことができるのである。
例えばこれが、歌詞から取って「僕らの話」(我ながらセンスがない)だったりしたら、リリース前後の諸事情を踏まえてもちょっと身構えてしまう。何を話すんだろうと。でもそうではなくて、あくまで彼らには私たちファンという相手がいることを想像して、「話をしようよ」と声をかけてくれている。そのちょっとした気遣いという名のセンスが、私には深く刺さった。

いざ曲を聴いてみれば、アコースティックギターが心地よいスローな弾き語りソング。分かってた。知ってた。想像はついていた。なのに想像以上に良くて、この興奮をどこにぶつければいいのかと頭を抱えるほどだった。

それは、いつも「ファン一人ひとりと話がしたい」と言ってくれる海人くんの、あの言葉がリップサービスではなく心からのことだということを改めて教えてくれる曲だった。

しかし心の中には、またしてもほんの少しだけ天邪鬼な私がいて、「これは海人くんの中にある創作でしかない」なんてひねくれた考えがあった。

そんな穿った解釈しかできない私の価値観を180度ひっくり返したのが、2番のAメロだった。

「私なんて見えてないでしょ」ってきみは言うけど
なわけないじゃん 
全部きみのためで 僕らのため

話をしようよ 歌詞

このフレーズを耳で聴いて目で確かめたとき、私は酷く後悔した。海人くんのことを見くびっていたと。
私なんて見えてないでしょなんて拗ねるどころか、見えなくて当たり前と諦めていたし、実際これは比喩だ。私(ファン)と僕(れんかい)をカップルのように見立てた、ちょっとした痴話喧嘩。私のセリフである「私なんて見えてないでしょ」は「どうせファンは与えられたものしか受け取れない受動的な存在なんでしょ」という意味で、海人くんの言う「なわけないじゃん」は、「ただやりたいことだけをやっているわけじゃなくて、きみ(ファン)を想って一つひとつをつくりあげているんだよ」という意味だと解釈した。
それでも私みたいなひねくれ者は、言葉にするのは簡単だと思ってしまう。そんな感情すらも包み込み、それが綺麗事じゃなく、一方的じゃなく、お互いにとって意味のあるものだと教えてくれるのがその後に続く「全部きみのためで 僕らのため」というフレーズだ。
「全部きみのため」なんて言われると、なんだか無理をさせてるように感じてしまう。身を削ってまで誰かのために尽くすことがアイドルという職業の宿命なのだと言われているようで胸が締め付けられる。実際、私たちの見えないところで、彼らが私たちを幸せにするために諦めてきたことは数え切れないと思う。
しかし、それに続く「僕らのため」がそんな感情を全て救ってくれるのだ。「きみのことを想いながら何かをすることが自分のためにもなる」、そう言ってくれているように感じる。「アイドルが天職」と常々口にしてくれる海人くんらしい言葉に、胸がいっぱいになった。

目には目で 歯には歯をらしいから  
じゃあ、愛には愛を
きみのくれる大きなそれに 
負けないサイズのやつを

話をしようよ 歌詞

このフレーズに関しては、詞の意味とか全部置いておいて(おっと)、初手で「カイ、好きそう〜〜〜!!!!!」というとんでもない叫び声が漏れた。海人くんがこれまで聴いて育ってきたJ-POPが全て詰め込まれているような歌詞。すごく褒めてる。そこに海人くんならではのエッセンスが加わっていて、すごく愛おしくなった。誤解を恐れずに言えば、ものすっっっっごくクサイ歌詞だなと思う。バンドマンが曲の繋ぎで喋りそうな。でもそれを、アイドルが、真正面から歌ってくれるのがいい。愛をいっぱいに受けてるアイドルだからいい。加えて廉くんの甘い歌声にもピッタリで胸がじんわり温かくなった。

本当は すごく怖くて
いつも足は止まりそうなんだよ
何かに追われて 何かを追いかけて
涙も流れて

話をしようよ 歌詞

ここでふとこぼれる本音。そりゃそうだ。正解なんてなくて、何がきっかけになるかも分からない。入所すぐにマイクを持って、関西ツートップのしょうれんとユニットを組み、関東Jr.のトップを走るPrinceの3人とともにKing&Princeとしてデビューしてもなお不安を口にしていた海人くん。もちろん海人くん自身に光る才能や何にも代えがたい個性があるからこそ、この5人に囲まれデビューしたのだろうけど、当時19歳の彼には何よりも苦しい重圧があったと思う。幾度となく人生の岐路に立たされ、今もまだ色んなことに悩んで、模索しながらアイドルとして輝き続けてくれている。光の部分だけではなく、影になる部分もこうやって私たちに教えてくれるのが海人くんらしい。弱いところも、涙も、全部見せてくれるのが等身大の彼らだなと思う。

でもきみだよ、きみなんだよ
僕にはきみがいるんだよ
僕らの愛の話
そうさ 話をしよう

話をしようよ 歌詞

私たちが辛いとき、落ち込んだとき、彼らに助けられるように、彼らも私たちファンを必要としてくれている。廉くんが11.4の後の庭ラジで話してくれた「所詮アイドルとファンで私たちの気持ちなんて届かないと思うかもしれないけど、少なくともその気持ちを感じられたから俺と海人は残る決断をした。たかがファンじゃなくて、ファンという存在が俺らにとってアイドルを続ける意味になった」という言葉と全く重なる。
この曲は、海人くんの想いだけでなくて、海人くんと共に肩を組んで前に進んでいく廉くんの想いも乗せているんだなと、改めて感じた。

アイドルとファンという関係で「話をすること」。文字の通りで考えたらそれはきっと、現実的ではないと思っていた。それでもKing&Princeのふたりは、この「話をしようよ」を通してそれは難しいことじゃないと教えてくれている。話をするというのは、様々な形があると新しい手段を考えてくれている。

海人くんはこの曲を1年も前から作っていたと言うけれど、発表のタイミングが今で良かったと心の底から思う。きっと5人なら、これは海人くんのソロ曲だったのではないだろうか。同じ方角を進むふたりになった今だからこそ、ふたりで歌う「話をしようよ」がより心に響く曲になったと思う。

海人くん、素敵な曲をありがとう。この「話をしようよ」で、数え切れないほどの人たちが救われたと確信しています。どうかこれからも、海人くんらしい曲をたくさん作ってください。楽しみにしています!

おわりに、海人くんジャニーズ事務所入所10周年、そしてアイドル10歳おめでとう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?