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オフィスのQuality of Coffeeを上げる話

仕事中に美味しいコーヒーが飲みたい、できたらオフィスで淹れられたら最高!と思ったことのある方は多いのではないでしょうか。

こんにちは。初めまして。
私は都内の小さいオフィスで、フロントエンドやアプリのしがないエンジニアをやっているよしこという者です。
元々コーヒーが好きで、一度きちんと学ぼうと思ってJBAのバリスタのライセンスを取得したりしましたが、結局飲食の道には行かず、今では家やオフィスでハンドドリップを楽しむただのコーヒー好きになりました。

この記事はCoffee Advent Calendar 2022という企画で書かせていただいたものです。お声がけありがとうございました。もしよろしければこちらのアドベントカレンダーも併せてご覧くださいね。

オフィスのQuality of Coffeeを考える

オフィスという場でコーヒーを飲んだことがある方は多いと思います。オフィスによってコーヒーの自販機があったり、インスタントコーヒーやドリップパックが置いてあったり、最近だとNescafeなどのマシンを導入しているというところもあるかと思います。
ではオフィスで飲むコーヒーが美味しいなと感じたことがある方は……そんなにいないのではないでしょうか。オフィスのコーヒーを飲むくらいなら、近場のスターバックスやタリーズでテイクアウトしたり、最近ではペットボトルコーヒーやコンビニコーヒーもずいぶん美味しくなったので、そちらを選択したりする方もいるかと思います。
今回の記事は、そのような「コーヒーを飲むことはできるけど、できることなら美味しいコーヒーが飲みたい」という観点から、オフィスのコーヒー事情をちょっとずつ良くしてくれたアイテムやとりくみについて書いていきます。
それから「コーヒーを飲むことはできるけど、できることなら美味しいコーヒーが飲みたい」を毎回書くと長いので、Quality of Liveという考え方になぞらえてQuality of Coffeeと呼ぶことにしました。

あらすじ: 転職、グラインダーとの出会い

結論ですが、やっぱり常備するなら粉よりもコーヒー豆のままのほうがQOC(クオリティオブコーヒーのことです)がグッと上がりますよね。もちろん手軽さなどの点からドリップパックや粉にもいいところはありますが、主に飲むとしたら挽きたての豆を使いたいところです。
ここで問題となるのは、オフィスという場において、いかに毎回面倒がらずに豆を挽くかです。自分しかコーヒーを淹れる人間がいないのなら、手回しミルしかなかろうがハムスターのごとくガリガリ回すのですが、オフィスというのはそんなコーヒーフリークの集まりではありません。できれば電動のグラインダーが欲しいところですが……。

なんと!?

あったよグラインダー!
数年前に初めて弊社のオフィスにお邪魔して一番衝撃だったのが、こんな立派なグラインダーが置かれていたことでした。グラインダーがあるのとないのとではQOCは雲泥の差です。しかもこの時点でコーヒー豆は経費でした。ここが天国か!?
もしオフィスにグラインダーを設置したいけどどうやって上長を説得しようか……というヒントを求めてこの記事を読んでくださっている方がいたとしたら、すみません……弊社には最初からありました……としか言いようがありません。私は幸運でした。
それまでオフィスのコーヒーといえば焦げの味しかしない茶色い濁り湯だった私にとって、このグラインダーは天啓のようなものでした。しかしグラインダーはあるものの、ドリップポットやスケールはなく、コーヒーはマシンで淹れている様子(充分ですし贅沢だと思います)
でもハンドドリップしなんてもったいない……!
転職直後で仕事もろくに覚えられていないくせに、謎のやる気に駆り立てられた私はコーヒー事情をより良くするために活動を始めたのでした。

オフィスという場とコーヒーのこと

オフィスのQOCを底上げするというのは、自分だけ勝手にウマいコーヒーを飲んでいればいいという訳ではありません。
転職前、同僚みんなでまずいまずいと言いながら自販機のコーヒーを飲んでいた経験があるので、できることならコーヒーを飲みたい人全員に美味しい体験をしてもらいたいと考えました。 (いやマシンがあるじゃない……と思いますよね。私も思いました。でも観察しているとマシンを使う場面は限られていて、2, 3杯ひとりで飲んじゃう人が使うか、人数が集まったときだけ使うか。1杯だけ淹れるには適さないようでした。)
重要なのは「より多くのメンバーに」「いつでも」「手軽に」美味しいコーヒーを飲んでもらうことです。ネルドリップやエアロプレスの道具をいきなり持ってきても、その良さは伝わりにくいと思います。そしてエアロプレスで淹れるコーヒーよりも、まず“普通の”ペーパーフィルターコーヒーがコンスタントに美味しく飲めること。誰かがより美味しいコーヒーを淹れるのではなく、誰でも一定の味が出せることの方が大切です。
毎日ルーチンで飲むコーヒーがちょっと美味しいものになったら、それは素敵なことですよね。より美味しいコーヒーはお店で飲めばいいんですから。

ということで、ここからはペーパーフィルターを使ったハンドドリップを助けてくれるアイテムを紹介していきたいと思います。どれも特別な道具ではないですが、あるとちょっといいものたちです。


ハンドドリップのアイテム

ハンドドリップのためにまず導入したのが、ドリッパー・ドリップポット・コーヒースケールのハンドドリップ3点セットです。

ウェーブドリッパー

もともとオフィスに置いてあったドリッパーは1-4人用の銅製のV60と陶器のカリタ三つ穴で、フィルターは円錐形のものしかないという状態でした。
ご存知の通り、上手い人であればV60だけでどんなコーヒーも淹れてしまうのですが、まずは安定感を出すためにカリタのウェーブドリッパーを導入しました。

弊社のメンバーは深煎り好きがほとんどで、仕事中においてはサードウェーブ系の酸味の強いコーヒーよりも、安定感のある深煎りが圧倒的に好まれるようでした。
ウェーブドリッパーは穴の大きなV60に比べて、お湯を溜めながらゆっくり抽出できるのが特徴ですので、とくに深煎りに向いています。V60とは異なり人数によってドリッパーを変えなければならない欠点がありますが、その分扱いやすく、155の1-2人用は1杯分でも比較的簡単に雑味が少ないコーヒーを淹れることができます。
初めてドリッパーを買うけどよくわからん方や、どうしてもコーヒーが酸っぱくなりすぎちゃうという方にはウェーブドリッパーが向いていると思います。

フィルターは専用のものしか入らないのですが、実店舗で扱っているお店が少ないのがちょっと厄介です。弊社では切らさないように買いだめています。でもテレワークでコーヒーにこだわる人が増えたのか、最近だと店頭でも見かけるようになってきましたね。

小さめのドリップポット

ドリップポットの価格帯はピンキリですが、安いものでもひとつあるとハンドドリップのクオリティが一気に上がります。
沸騰したお湯を一度ポットに移すといい感じに冷ますこともできるので、細口のやかんをお持ちでも小さなポットがあると便利だと思います。
あとくれぐれも高すぎないものを選びましょう。こちらのポットはノーブランド品ですが、社内のメンバーからも好評で、買ってから5年ほど経つ今も遜色なく使えています。

コーヒースケール

おなじみHARIOのスケールです。
これだけは今でも私しか使っていないのですが、これがないと私がダメなので使わせてもらっています。最初は家で使っていたのを持っていったのですが、布教活動の末に経費でひとつ買っていただきました。(ありがとうございます社長!)

これらのアイテムとグラインダーのおかげで、ハンドドリップが淹れられる環境はできました。しかしこれだけでは私がオフィスでもウマいコーヒーを淹れられるようになってハッピーなだけで、全体のQOCを上げたことにはなりません。なので、もうひとつハンドドリップを助けるアイテムを導入しました。

ドリップアシスト

ワールドバリスタチャンピオンシップ2013年優勝者ピート・リカタ氏のドリップを再現できるという、HARIOから出たドリップアシストグッズです。こういうグッズはこれまでもありましたし、最初は私も半信半疑だったのですが、これは本当に美味しくできたので腰を抜かしました。
V60と組み合わせる前提ですが、ウェーブドリッパーでも問題なく使うことができました。コーヒーマシンで入れるのに比べてもとにかく雑味が少なく、とくに中浅〜中煎りくらいのウォッシュドでキレのある豆と相性が良さそうです。でもどんな煎りでも、豆とお湯の量さえ守れば手軽に美味しいコーヒーが淹れられます。
これは社内でもわりと好評で、自分用に買ったという方もいました。


ドリップバッグのアイテム

ハンドドリップの環境を整えても、やっぱり豆を挽いてドリップするのは面倒なものです。私も一人の時や忙しい時にはドリップバッグに頼っていますし、ハンドドリップはできないけどドリップバッグなら自分で淹れるという人もいます。
そこでドリップバッグで抽出するときのアイテムも導入しました。

ドリップバッグスタンド

ドリップバッグの難点は、淹れている途中でバッグがコーヒーに浸かって不味くなってしまうことです。このアイテムを使うことでバッグは浸からなくなりますし、うっかりお湯を入れすぎてこぼすこともなくなります。同じ悩みをお持ちの方はぜひ試してみてください。
ワイヤーを曲げただけでこんなに快適になるのはすごいです。クリップと同じくらいのイノベーションを感じますね……。こちらも社内のメンバーにかなり好評でした。

KALDIばっかり

またドリップバッグの常備の仕方にも一手間加え、在庫が一目で分かるようにしました。これだけで見た目もきれいですし、減り具合が一目瞭然なので切らさずに次を買ってくることができます。コーヒーが飲みたいときに在庫が無かった……なんてことを発生させないのも重要ですよね。


アイテム以外のこと

マイマグカップの準備

これは元々持っている人が多かったのです。たくさん飲みたい人はたくさん入るマグカップを持っています。一度にたくさん飲みたい人と、ショットみたいに少しだけ飲みたい人がいるようなので、飲みたいサイズのものを持ってきてもらうとコミュニケーションが楽になりました。

豆の好みの調査

アイテムが整ってきたので豆も色々試してみたくなりました。
深煎りが好きなメンバーが多いのは把握していましたが、産地はどこが好きなのか、ナチュラルがいいのかウォッシュドがいいのか、好きなアロマは……というのを聞いてみても、コーヒーオタクがなんかごちゃごちゃ言っているなと思われるだけです。なのでサブスクを利用して、色んなコーヒーを少しずつ試してみることにしました。

利用したのはリロコーヒーロースターズという関西にあるロースターのサブスクです。
深煎り・浅煎りごとにオススメのシングルオリジン、季節のブレンドを各100gずつ+おまけの豆を毎月届けてくれるので、新しい豆を開拓したい方に向いています。豆ごとにコーヒーカードを付けてくださり、味の特徴やオススメの抽出などが書かれているので淹れるときの参考にもなります。

リロコーヒーより引用

こちらのカードはエチオピア グジ地区 ウラガ レッドハニーからの引用です。コーヒーカードのデザインもとてもかわいくて、コレクションするのも楽しいです。

色々なコーヒーを淹れてみると、社内ではウォッシュドに比べてナチュラルの豆が好まれるようだとわかりました。柑橘系よりもベリーや山ぶどう、チョコレートなどのアロマが人気で、とくにエチオピアは売れ行きがよかったです。美味しいですもんねイルガチェフェ……高いのでたま〜〜〜にしか買いませんが……。
個人的にはケニアのウォッシュドがかなり好みだったのですが、社内での反応はイマイチでした(解せぬ……)あとはナッティなものやシナモン系もわりと人気で、KALDIのマンデリンフレンチは今では常備豆となりました。

リロコーヒーのサブスクは半年ほどしか利用しませんでしたが、メンバーと味の意見を言い合えたのはいい経験となりました。味というのは主観的なものなので、自分が美味しいと思うものでも全体では人気がなかったり、また逆もしかりです。嗜好品ならなおさら、自分が美味しいと思うからみんなも好きだろうと思っていると、まったく意見が違うこともあるので興味深いですね。

Slackにコーヒーグループを作成

どうせコーヒーを入れるなら他のメンバーにも共有した方が良いに決まっています。ということで、社内Slackの雑談チャンネルにcoffeeというユーザーグループを作ってもらいました。
Slackチャンネルにせずユーザーグループにすることで、コーヒーを逃したくないメンバーは通知を受け取ることができ、かつその他のメンバーも気が向いたら誰かのコーヒーに便乗することができます。

挙手制のコーヒー
放流されるコーヒー

コーヒーを1杯分だけ淹れるのは難しいものなので、私は数人分淹れて雑談チャンネルに流したりしています。気付けばこういったフリーコーヒーというシステムも生まれていました。オフィスで気分転換をしたいとき、コーヒーが淹れて置いてあるというのはなかなか素敵な文化です。

オフィスのQuality of Coffeeは上がったのか

これらの取り組みの結果、オフィスのコーヒーはなかなか美味しくなった気がします!こうしてまとめると精力的にやっているように見えますが、実際にはリモート期間もあり、3年以上かけてゆっくりと環境を整えていきました。
本業のバリスタの方々に比べれば技術も知識も拙いですが、この数年でそこそこ熟れてきたのではないかと思います。意見を聞かせてくれる人の存在はやはり大きかったですし、エンジニアリングと同じように(何事もそうであるように)技術は現場で上達していくものなのですね。
思い返せば、道具を揃えるのと同じくらい「美味しいコーヒーがあるよ」と社内のメンバーに声をかけるのも重要だったと感じます。オフィスに美味しいコーヒーがあるらしい、今日はスタバで買わないで行こうと思ってもらえたのなら、色々やった甲斐があるというものです。

ここ数年でリモートワークが広まり、弊社でもみんなでお茶をしばきながら雑談をするような時間がぐっと少なくなりました。そんな中で、美味しいコーヒーがあるよ、飲みますかと言える時間は以前よりも重要になっているのではないでしょうか。
始めた時はオフィスでもハンドドリップしたいという欲しかなかったのですが、オフィスでみんなでコーヒーを飲むという文化が少しずつ育ち始めていることを今では嬉しく思っています。
時には仕事の手を止めて、気分転換にコーヒーを淹れてみるのはいかがでしょう。同じ豆を使っていても、淹れる人によって全く味が変わる楽しさがありますし、それはリモートワークやお店では味わえない楽しさです。そしていつもより上手にできたなと思ったら、周りの方にもお裾分けしてみると、予想以上の反応があるかもしれません。
そうやって単なる飲み物としてのコーヒーがオフィスの一員になり、コミュニケーションの輪を広げる助けになれば、コーヒー好きとして非常に嬉しく思います。

では皆さんも引き続き良いコーヒーライフを!
お付き合いいただきありがとうございました。

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