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向日葵のきみへ





わたしはひとりで眠ることが下手になってしまった。




出会ったのはマッチングアプリで、数日ぶりに開いたところに彼からの連絡を目にしたからである。話をしているうちに、一緒にゲームをしようかということになった。彼がコントローラーを新調しに行くというので、私が一緒に行きたい!と言ったのが初めましての由縁だった。

オレンジ色の派手なアウターに、わたしとは真逆の性格の人だと、格好だけで思った。特に本人確認をするわけでもなく、向かいから歩いてきた彼は、私の歩く方向に向きを変えて歩き出した。記憶にもないくらい他愛のない会話をずっとしていた。見上げるほどの背丈と派手なアウターとは裏腹に、優しい顔と声音のひとだった。少し会話をしただけで、言葉の優しい人だなと思った。

彼が告白してくれたのは出会ってすぐのことで、わたしは またこうしてトントン拍子に付き合っていいのだろうか と不安で仕方なかった。それでもわたしも、もうとっくに好きだった。

彼はわたしが不安を伝える度に、それを丁寧に言葉にして返してくれた。
重たくてごめん だか、面倒なことばかりでごめん だか、そのようなことを伝えた時に、「面倒くさくなっちゃうくらい好きでいてくれるんでしょ、嬉しいよ」と彼は言った。  


このひとのことを、ずっと大切にしたいと思った。


付き合ったばかりの頃は、わたしのお休みに合わせて会っていた。次に会えるのは数日後で、一週間後なんてことも普通だった。

彼が引っ越さなければいけなくなった時、選んだのは、わたしの家から本当にすぐの所だった。おかげで駅からは遠くなった。少し不便であるのに、彼はわたしとの距離を選んだ。

わたしが職場に行きやすくなったこともあり、それからは生活を一緒にした。朝起きれば隣に彼がいて、優しくおはようをくれる。行ってらっしゃいと外まで見送ってくれて、おかえりと優しく微笑む。一緒に買い物に行って、食事をして、ゲームをして、配信を見て、夜は私が彼にぴったりくっついて眠る。おやすみもまた、優しくて愛おしい。何ももっていない私に、白い心に、色をくれたのは彼だった。わたしは1人で生きるのが下手くそになった。


喧嘩の度にされたこと、してしまったことを消すことはできないし、あの時ああだったとか、こんなこと言われたしなとか、過去のことを引き出してしまう事もあるだろう。
どんなに嫌なことをされようが、そのとき大嫌いになろうが、本当は一緒に居たかった。わたしだって、もう呆れて手放されても、一生恨まれてもおかしくないくらいのことをしているに違いない。

それでも彼は「そんな事どうでもいいくらい、我慢できるくらい一緒にいたいんだよ」と言った。

彼から好いてもらっていることを実感する度に、わたしにはそれが重くて耐えられない時がある。わたしは自分を好きでいられるように、私は可愛いと言い聞かせている節がある。街中で目を引くほどの顔面はもっていないし、優しくもない、言葉を愛しているのに上手く扱えた試しがない。悲しみや怒りに負けてしまうし、世の中に後ろ指をさされている気がしてしまう。生きていて、生まれてきてごめんなさいと、何度思っただろう。思考が停止して言葉が出ないなんて私にとってはいつものことである。それを甘えや逃げと言うのならば、わたしの人生そのものが間違っている、此処で言わせて欲しい、いつもごめんね。ダメなところも愛してくれてありがとう。



貴方が居るから生きていたい と思えるようになりたい。本当は貴方が居ないと生きていけないと、お互いに思い合えるくらいでいたいが、それは夢の話で、あまりにも重い。一緒に居たら楽しいけれど、貴方が居なくても私は生きれるよ、くらいが理想だな。







昨日も今日も、愛していました。
またいつか。

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