背骨をとおす/コソ練・35日目
7年前、ある1冊の本に出会い、救われた。
『選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」の始め方』だ。
私は小さな街で美容室を営んでいる。有難いことに、今年で11年目を迎える。業界問わず、起業して3年、5年、10年、たち、たたまなくてはならない状況に追い込まれるお店や企業は多い。10年後に残る確率は3%とも言われている。
この本に出会った頃。会社の方向性について悩んでいた。美容室は全国に26万件ある。コンビニが約6万件なので4倍以上の数だ。完全なるレッドオーシャンである。オープンすると、まずは「はじめてのゲスト」にご来店頂かないことには、何もはじまらない。そこから、2年、3年、経過していくと、長く通ってくださるゲストが増えてくる。でも、まだまだ、はじめてのゲストにも来てもらいたい。そこで、クーポンサイトに自店を掲載し、「3回目まで30%OFF」なんてことをしようとしてしまう。誰でも、はじめに思いつく簡単な方法だ。
でも、ここで疑問がわく。
「オープンから通ってくださっているゲストこそ、御贔屓にしなくてはいけないのに、なんだかなー」と。「価格を安くすれば来てもらえる、なんて発想も安易だなー」と。そんなことを思いながら、右に左にヨタヨタと様々な出来事を経験しながらも、なんとか5年目までお店を運営してきた。
しかし、6年目に突入した時。スタッフの退社があり、まぁまぁ大変な状況になった。ゲストにご来店し続けていただくこともだが、スタッフに働き続けてもらうことがどれだけ難しいことなのかを痛感したのだ。そこで、サロン運営の仕方について、いろんな美容室経営者の方々のお話を聞きに行き、勉強した。でも、答えはでなかった。
成功した人たちの表面的なやり方を真似たところで、上手くいかないのは目に見えていた。根底から、何かを変えないと。
そんな思いの中で、読んだのがあの本だった。
そうか! と、まずはじめに目を丸くしたのは、ブランディングとは「Brand+ing」という言葉できていることを知った時だった。この日、はじめてブランディングという言葉の定義を理解した。では、自社が提供できる価値は何か? もっと踏み込むと、自社で、しか、提供できない価値は何かについて、思考し言語化することがはじまった。書いては消して、書いては決してを繰り返した。どこかでみたことのある表面的な言葉ではなく、いや、どこかで見たことのある表面的な言葉だとしても、会社を運営していく代表者が「本当にそう思っているのか」がめちゃくちゃ大事だった。
半年かかり、お店のバリューを言葉にした。
いや、言葉にしてみた。が、ここからが長かった。言葉を変え、使う商材を変え、試行錯誤を続け、さらに1年後、ようやく出来上がった。
ようやく背骨がとおった。ゲストに対してのスタンスが言語化できたら、あとはingすればいい。さらに、キャストに対してのサロンのバリューも明文化した。わたしの好きをあきらめない、だ。そのために、日曜日の定休日をつくり、夕方17時半には帰れるサロン運営にした。
お陰様でこの5年、クーポンサイトを使わずゲストにご来店いただき、キャストに退職者もおらず、豊かな日々を過ごさせてもらっている。もちろん、これからも、時代の流れに合わせながら、コツコツとingを回していく。
MEMO(コソ練note残り44日/ヘッダー画像:Rug)
ブランディングの勘違い【さとゆみの今日もコレカラ/第146回】
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