【短編】世界が終わる日に

世界最後の夜はゴッホの『星月夜』のようだった。比喩的な意味ではなく、そのままの意味で。黄色と白と青が混ざりあって、綺麗だった。昔見た時は、世界が滅亡する日の夜みたいだと、何となく恐ろしかった。まさかこの目で見ることになるとは思っていなかった。もう一度あの絵を見てみたいと思う。ゴッホがあの絵を美しいと思ってこの絵を描いたのか、恐ろしいと思ってこの絵を描いたのか知らないけれど、もしかしたら今の私と近しい心情だったのかもしれない。世界が終わる、その現実の恐ろしさは変わらない、でもそんな状況になって初めて気がつく美しさがあることを知った。そのことがどうしようもなく寂しかった。

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