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ミュージカル「DADDY」感想

ミュージカルDADDY 感想

面白かった!
応援しているアイドルの演じた舞台が好きだったため、感想をまとめました。

⚫︎あらすじ


童謡は好きじゃないといいながら子ども向け番組のADをする中村こーすけ。
仕事中にも関わらず彼女から「大事な話がある」との連絡に気を取られ、大道具に頭をぶつけて倒れてしまう。
非現実的な世界で目が覚めたこーすけ。彼の元に現れたのは子どもは「こーすけの未来の子ども」と名乗り、「ここは子どもたちの想像力の世界」だと言う。
そして子ども向け番組のキャラクター3人組も合流し、明るい童謡に誘われながらその世界を冒険して元の世界を目指す。
最初は戸惑うこーすけだが、冒険を通してだんだんと未来の彼の子どもや過去に亡くなった父親のことに向き合っていく。

⚫︎ストーリーに関して

・全体
ファミリーミュージカルなのでもう少し子供向けの話の筋立てかと思っていたら、童謡を嫌がり仕事も不真面目なADのこーすけが親になる覚悟の話だったのでびっくりしました。
子どもが楽しめる演出をしながら、親に対して「迷いがあってもいいんだよ」とつたえてくれるような物語だと思います。
カタログミュージカルという言葉をこのミュージカルで知りました。中川ひろたかさんと新沢としひこさんの曲で構成され、絵本のキャラクターも出てくるミュージカル、きっと原作や元の歌を知っていればもっと楽しかったろうなと思います。

・パパの歌なんて歌えない
2幕頭の「パパの歌なんて歌えない」のシーンが印象的でした。
保育士で、自分以外の子どもたちに慕われて童謡を歌っていた父親は、こーすけが幼い頃に亡くなっています。
こーすけが父の死と向き合い、「父さんどうして死んじゃったの? 僕、父さんみたいに子どもに童謡なんて歌えないよ。子どもに嫌われちゃったらどうしよう? もし僕も父さんみたいに早くに死んじゃったらこの子はどうするの?」と、父の死に根付く自身の不安を吐露します。
それまでのこーすけはどちらかといえば軽薄で無責任な人物です。こーすけは子ども向け番組のADなのに童謡をばかにするし、仕事中に彼女と電話しちゃうし、未来の我が子に優しくできないこともありました。
2幕からは、そんなこーすけの内面に触れ、なぜそういう振る舞いをしているのかを追いかけます。
歌をばかにしていたこーすけですが、この歌で自身の感情を吐露しました。この冒険を通して歌にたくさん触れて変化したからこそ、歌で感情表現をしたのかな…と思います。
「今更優しく微笑んで、パパの歌なんて歌えない」という歌詞を歌うこーすけ。その表情は最初は孤独で美しく寂しげで、でも、さいごはパパのように優しくできないといいながらも優しげな表情をしているように見えました。そんなふうに歌えるこーすけが、子どもに優しく微笑みかけられないわけないのに…。
この歌はYouTubeで一部分だけ聴けるので、舞台を見ていない方は聴いてほしいです。
歌い方がとても素敵で、このひとはこんなふうに歌うことができるひとだったのだと驚きました。
稽古中の歌い方と本番の歌い方が随分と違っていて、真剣にこの舞台に取り組んだのだと思えて嬉しかったです。
音楽監督の方のツイートにあったように、一生懸命で、同時に軽やかに努力をされたんだろうなと思います
https://twitter.com/otsukaakane/status/1642707219765682178?s=46&t=lb3Ofsk1dAYEXjZZTu62iA

YouTube
稽古場映像
https://youtu.be/nxMzfkEHIJI

ダイジェスト
https://youtu.be/nCQs4xkokOo

・ダディ
冒険の中で出会った「ダディ友」(こーすけと同じ父親という役割を持つひとたち)及びこーすけ自身の父が同じ演者であったこと、この舞台の主要キャストの横山だいすけさんがいっぱい出演できるように…と言われたらそれまでなのですが、
あの世界が子どもの想像力で、こーすけの子どもの知識が反映されているのならば、こーすけが子どもと向き合う際に「父ならどうやって接するだろう」と考えてきたからこそ、彼の子どもにとっての「父親像」がこーすけの父の要素を持っていたのかな…と思いました。
他の方の考察で、あの世界はこーすけの想像力の世界では?というのを見かけました。
もしそうなら、それこそ全てのダディ友が彼自身の父の姿を模していたことは、こーすけの想像する父親だったのかな…と思わされます。

⚫︎好きだったポイント

・きのしたももかさんのお歌がかわいい!
とってもかわいくて上手なお歌、いっぱい聴きたくなっちゃいました。何かの役、というよりおうたのおねえさんという感じで各所で素敵な歌を聴かせてくれました。

・嶺亜さんらしい要素がいっぱい詰まっていて良かった
スケッチ、スター、恐竜、おばけ(ホラー)と、嶺亜さんらしい要素がたくさんある舞台だったと思います。ご本人のお誕生日に恐竜型のケーキを作ってもらえていて嬉しく思いました。
「きっとあしたはいいてんき」と歌って幕の降りる演出も、いつもポジティブな嶺亜さんだから、本当にいい天気になるんじゃないかという気持ちになりました。

・雲の演出がかわいい
舞台のセンターに大きい雲型のモニター?があり、そこに文字を映したり、ユーフォーになったり、いろんな演出を行なっていて可愛かったです。
全体的にセットがかわいい!
同じセットを違うもの(テレビ番組、海賊船、宇宙船など…)に見立てていくようで面白かったです。
「子供の想像力の世界」で、子どもの見立て遊びみたいなセットがあるのは面白いと思いました。

・誕生日を祝わせてもらえた
本人がいる場ではないのですが、主演の嶺亜さんの誕生日の公演は誕生日ソングを開幕前に歌いました。
バンドの皆さんが下手を覗きながらにこにことしていらしたので、下手側にいて聴いていらしたのかな〜と思います。
「不思議な大冒険をした」という子供達の思い出を作るためには、最後に特別に時間を設けるのも雰囲気が壊れちゃうのかと思うので、完成された舞台を提供するための配慮として受け取りました。ありがとう

⚫︎子ども向けの配慮

子どもが見ることを前提とした優しさを感じて勉強になりました。勝手にそれを配慮だと勘ぐってるだけかもしれないけど…
・舞台が始まる時に真っ暗にならない
まず誰かが出てきて、話し始めていつの間にか照明が落ちてゆく…というつくで、確かに子どもはいきなり暗くなったら怖いだろうと思いました。

・「泣いててもいいからね」
子ども席が前方にあるのかもしれないのですが前方に子どもが多く、演者が話しかけているのが印象的でした。
子供が泣いたら親は焦るのではないかと思うのですが、「泣いててもいい」とショコラちゃんが仰っていたので親御さんも肩の荷を下ろして見てもらえてたらいいなと思います。

・父親の死の扱い方
幼少期に「親は死ぬものだ」と気づいてしまった不安は大きいものだと思います。(母親が死ぬ絵本が炎上したという記憶もある)
おばけダディ(こーすけのパパ)は、別れたその後もこーすけをを見守るように舞台の上にいたので、「パパは会えなくなっちゃった」よりも「パパにまた会えて嬉しい」「こーすけはパパと一緒にいる」という印象を与えて良かったのだろうなと思いました。
また、これは舞台であって子ども一人で見るということはおそらくなく、悲しい気持ちになっても隣な大人がいる保証があることも良かった、悲しくならないでほしい、優しいミュージカルだったから…。

⚫︎その他

日によると思いますがスタオベがなかったことや、挨拶が毎日固定で中川さんがお話しされていたことも公平で分かりやすいと個人的には思いました。
中川さんと新沢さんの曲だけを使い、ご本人が初めて役者ととして台の上に立たれたというミュージカル、ご本人の人生にとってどれだけ大事で大きなものなのだろうかと思います。
パンフレットで「子どもたちにとって大きな刺激になると思う」と言っていらして、実際にこの舞台は子どもにあまり遠慮しない表現があったり、人間の男女同士じゃない夫婦や家族の形がさまざまに描かれていたり、いろんなことが予想通りにいかなかったりして、きっとこの舞台を通して子どもに知ってほしいことがたくさんあるのだろうと思います。
そんな大事な舞台にわたしの応援している方が主演を務めていることがとてもうれしいです。
全体的に真摯で思い切りよくファミリーミュージカルをやっているという印象で、コンセプトのしっかりした素敵な舞台を観に行けて良かったです。
普段の自分なら観に行かないジャンルのため、この舞台に行くきっかけをもらえたことに感謝です。

ミュージカルDADDY、観に行けて良かった!

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