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小杉湯で働き始めたよ!

ZOOMで人と話していた時、無性にレンコンのきんぴらが作りたくなったんです。カーソルを「終了」に合わせて待機して、終わった瞬間に寮のキッチンに走りました。レンコンのイデアってあの可愛い形じゃないですか。だけど縦切りにすると歯ごたえがあって美味しい。将来誰かにきんぴらを作るとき、どんな切り方をしようかな?悩み始めたらすごく楽しくなっちゃった。

たぶん私はまずは輪切りにする。レンコンって本来こんな形をしてるじゃない。サクッ。だけど縦切りにもこんな良さがあって、私は縦切りが好き。サクッ。あなたはどっちにしたい?ちゃんと聞いてあげる。

5月から来年8月まで休学して、高円寺の銭湯「小杉湯」で働いています。


アメリカの大学に進んでから夏休みは東京で過ごしていて、昨年夏は高円寺で一人暮らししていました。そのときたまたま1番近くにあった銭湯が小杉湯。何となく足を運んだのですが、それ以来わたしの世界はまるっきり違うものになってしまいました。

この世の中に心から信頼できる空間があることって、こんなに地域への、大地への愛着度が違うものなんですね。

とにかく体験としての魅力がすごい!!初訪問の日は帰り道メモをする手が止まりませんでした。

一目ぼれしたのはこのメイクカウンター!この銭湯は、私たちお客さんのことが「見えて」いる。それも、近すぎも遠すぎもしない絶妙な距離で。

メイクカウンター以外の設備も本当に良かった。

浴場内の商品POP(広告感が無いデザイン。手持ち無沙汰なお湯時間を埋めてくれ、情報量が少なすぎると不安になる若年層に安心。お金の香りがしない絶妙な量。)
アイスクリームの種類(九州でしか売られていないブラックモンブランがある!!!地方出身者の心を鷲掴み!!)
そこかしらに貼られているポスターの言葉選び(エモチルに流されていない。疲れた心に沁みる優しさがある。)
待合スペース(居心地が良いのに狭すぎない。誰もが懐かしさを覚える漫画のバラエティ。)

当時のメモより

すべてが「絶妙」としか言いようがなく、当時のメモには「痒いところに手が届くあざとさ、本当に可愛い、悔しい」といった叫びが溢れていました。

当時私は個人で様々な企業広報・ミッションステートメント等の仕事を頂きながら将来を模索していました。人に伝えること、言葉を紡ぐことが得意なのは薄々分かってきたものの、私のやりたいのは社会を少しでも良くすること。得意なこととやりたいこと、どう両立できるんだろう?広告にできる「社会をよくできること」ってなんだろう??

誠実なサービスを「そのまんま伝える」ことだけが、広告にできる唯一の社会に良いことなのかもしれない。お湯に浸かりながら、そんな考えが浮かんできました。1の企業を10で伝えたり、10の企業を1で伝えるのではなく、きちんとお客様や社員に優しい企業が正当に評価され、世に広まるお手伝いをすること。

小杉湯が自分たちの魅力や価値を自覚していることは、店内やインターネット上の言葉から明らかでした。その上、やさしい言葉が裏切りじゃないあたたかい店舗があって、もう大好きになっちゃったんです…


それから半年後の春休み、アフリカ旅行へ向かう飛行機の中で小杉湯の学生チームの募集を見つけました。

「生活者の目線から社会を見ること。ハキハキ話すこと、メタ認知して書くこと。このまま得意なことばかりしていても社会は変えられない。このまま何となく直観から物事を語り、苦しまなくていい人たちから凄いね、凄いねっていわれて、本当に自分が凄いかのように勘違いしながら論壇に立ち続けるのだろうか。自分が『得意なこと』から1番遠い場所で自己を鍛えたい。」そんな理由でやって来たアメリカでしたが、高校を出てすぐアメリカに来て、自分がベストを尽くせる環境でやりたいことを思いっきりやったことがない。『得意なこと』だと思っていたものは、『得意そうなこと』だっただけだったのです。

『好きそうなこと』と思っていたものを『好きなこと』にする、『得意そうなこと』と思っていたことを『得意なこと』にする1年を過ごしたくて、1年間の休学を決めました。

おまけ:当時の思考整理メモを載せます

実際にはたらいてみて

先日、住み始めて2日のアパートにゴキブリが出たんです。2匹。もうびっくりしちゃって、思わず全身バタバタさせながら部屋を出て。そしたらその瞬間もうどしゃ降りですよ。仕方ないから傘と退治グッズ買う用の財布を取ろうと意を決してドアを空けたら、玄関で「やあ^-^」ってさらに2匹手を挙げてるわけです。悲鳴を上げて雨の中、深夜に充電1パーの携帯で一目散に走っていける職場、それが小杉湯です。

1.The しあわせ経営

「鈴ちゃんがいるだけで、場所は喜ぶよ」。初めての面談の際、事業責任者のえりこさんが言ってくださった言葉が小杉湯の全てだと思っています。コミュニケーションコストという言葉は小杉湯の辞書にはない。とにかくいっぱい話して、いっぱい笑って、いっぱいおすそ分けをもらって、いっぱい食べて、いっぱい一緒にお風呂に入る。そんな幸せ!小杉湯が好き!って感情が浴室にまで伝わって、お客さんも小杉湯が大好きになる。だから友達を連れてくるし、新たなコラボ先も向こうから足を運んできてくれる。

お客さんとして入りに来ていた時から感じていた、建物に溢れる愛と信頼の香りが、裏側にもそのままありました。なんでこんなに良い人たちばかりの空間なんだろうと考えると、人ではなく建物が中心にあるからだと思います。白いタイル張りの明るく風通しのよいお風呂。だれかが手入れをちゃんとしてきたことがわかる宮造りの建築。それを残そうとがんばる、前世も前前世も前々前世も人にたくさん可愛がられていたゴールデンレトリバーだったに違いない、人を全面的に信頼している3代目佑介さん。その魅力に集まって来た、信じられている人たち。

私はものをつくったことがなかったから、小杉湯が人の手によって作られたものだなんて本当に信じられなかった。1カ月半開店の15:30ギリギリまでどたばたと準備をしてはじめて、本当にこのお店は生きているんだと感じています。人の手によって作られているとわかればわかるほど、もしかしたら私も将来こんな場所をどこかに作れるのかもしれないと思えて、生きていくのがどんどん楽しくなっていきます。

2.大きいものの一部、として
小杉湯の皆さんはよく言います。「今私たちは小杉湯を数十年間『借りている』だけ。小杉湯を次の世代に繋げるまでなにができるか考えているんだよ。」これが、私のいまの社会への向き合い方とリンクしたことも、居心地がいい理由のひとつです。「私VS社会」でなく、広い社会、そして長い時間軸の一部として何ができるかを考えたい。「今の小杉湯が繫栄する」ことを二の次三の次に、小杉湯のように、ゆるく温かく人が集まる「風景」がずっと残り続けていくことを一番に考えているこの場所が大好きです。

もともと銭湯は、64年の東京オリンピックの際に公衆衛生目的で普及しました。だから入浴料金も200~500円という安価で、補助金に頼りきりというもはや成り立っていないビジネスモデルで運営しています。もともと今のコンビニより多く存在した銭湯も、ピーク時の10分の1まで減少しました。減少速度を考えると、十数年後に銭湯が0になってもなにもおかしくない。

「『そんなもんだ』と思って手入れをしないでいると、当たり前だと思っていたものはすぐに簡単に崩れ去る」。それを強く痛感し、何を残し何をつくるかに対し意思を持つ重要性を毎日感じています。

本気の小杉湯は、原宿という日本一非日常な街で、日常的に使われる銭湯をつくるという挑戦をしています。ぜひ、応援してくださいますと幸いです。

3.みんなの町の、お風呂屋さん
街の不動産屋さんでみつけたアパートを契約して生活もスタートさせました。高円寺ってどうぶつの森みたい。あの喫茶店にいけばいつものお客さんがいて、ロータリーにはいつも食べ物をくれるおじさんがいて、デルソルにはあいつがいて、あの風呂無しアパートの1階には常連のあのおばさんが、2階には小杉湯スタッフのあの人がすんでいる。そんな情報を皆が共有して持っている。たぶんゴキブリ同士も仲いい、現代にこんな町があったんだと驚くようなつながりのある街。

風呂無しアパートがたくさんある街の、みんなのお風呂。今日お誕生日の人も、大切な人を亡くした人も、楽しいことがあった人も、つらいことがあった人も、今日街にやってきた人も、今日街を去る人も。みんなが浸かるお風呂に関われて毎日とっても幸せです。

小杉湯では、「いらっしゃいませ」「またお越しください」でなく、「こんばんは」「おやすみなさい」と番台が声をかけます。それもマニュアルがあるわけでなく、ひとりひとりが場にどう向き合うかを考え自然に出た言葉。私自身、お客さんだったころにこの言葉に救われたからこそ、皆さんのいろんなことがある日々のモンキチョウになれたら嬉しいな。

今日もいいお湯わいてます♨️ きれいで、清潔で、気持ちのいいお風呂でごゆっくり癒されてくださいね。

BUKUBUKUの学生チームの一員として、運営経営のインターンとして、そして番頭番台のバイトとして働いてます!見かけたらぜひ声かけてください!

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