高鳴り

仕事がそれなりの量あって、程よく忙しく過ごせるはずだったのに、日中なぜかずっとソワソワしていた。

メールの宛先を間違えたり、机の上が散らかり始めたりして、その度にソワソワ感が強まっていく。

そんな折、必要があってメロンケーキの上司とメールをした。

Ccに他の人を敢えて入れた。
こんなときに返信が冷たかったら、どうしたらいいんだろうと思った。

書き出しが「お世話になっております」で、相変わらずこの人はあの日以来私の名前を呼ばないなと思った。

でも、思ったよりは温かい文面で、どう考えても事務的ではあるが「ご対応ありがとうございます」とあって、なんだか胸が高鳴った。

ソワソワと高鳴りとで冷静になれないまま帰宅した。

もしかしたら、懐かしんで個人的に連絡をくれるかも、そうしたらどうしよう、なんて妄想を繰り広げて虚しくなった。

彼のことを考えると心臓から喉のあたりがギュッとなって、涙が出そうになる。

好きで切ない、みたいな積極的な感覚ではなくて、あんなことがあったのに最終的に愛されなかった自分が不憫だという感覚に近い。

彼がいつか、私に謝ってくれますように。

数年間、この考えが何百回と脳を駆け巡って、最近ようやく、自分が怒れなかったことを後悔しているような気がしてきた。

悲しさが込み上げてくる。

気を紛らわそうと聴いたラジオの内容が一切頭に入らない。
きっと勉強も手につかなさそうだ。

黒豆茶を飲んで、深呼吸をして、早めに寝てしまおうと思った。

ではまた。