メロンケーキの夜

当時好きだった上司が、ハーブスのメロンケーキを買ってきたことがある。

私たちが住んでいた地方都市にはハーブスなんてものはなく、なんならコージーコーナーも車じゃないと行けない場所にあった。


部屋着の上司が「これ美味いねん、この時期しかないねん。食べてみ食べてみ」と言いながら冷蔵庫からメロンケーキを出してきて、2人で食べたことをよく覚えている。

多分ちょうど6月の後半で、真夜中の彼の部屋では扇風機が回っていたような気がする。

名古屋から持って帰ってきてくれたケーキは、正直ちょっと水っぽくなっていたが、私に自分が好きなものを食べさせようと持ってきてくれた時間と手間を思ってバレないようにほくそ笑んだ。


そのあとあったゴタゴタはきっと一生忘れないだろうが、このメロンケーキの夜を思い出すと少しだけ彼を許せる。

今も同じ会社だし、業務上たまにメールを送るが、元気にしているだろうか。

いつかメロンケーキの話をしたいような、ずっと自分の中に留めておきたいような、そんな気持ちだ。


7月中は食べれるようだから、1人でも買いに行ってあの日のことを年に一度思い出す機会にしてもいいかもしれない。


今日は雨の中まどろむ時間があってよかった。

ではまた。

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