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午前5時 寝ぼけ眼を擦りながら家を出て
特急 新幹線 特急 を乗り継いだ6時間から
私の0泊3日の旅が始まった

高校3年生 17歳 令和初めての夏
ひぐらしのなく頃、というより
まだミンミンゼミのなく猛暑日
唐突に何処かに行きたくて
計画した1人旅

1人カラオケ、1人焼肉、1人旅行
特に1人に抵抗はないけれど
周りはそれを見て寂しいとでも言うだろうか

1日目はお盆なのに人が少ない島根県松江市
帰省客に向けた おかえり の声に 
私はどんな顔をしていいのか解らなかった

目的は夏フェス 
3時間のために6時間かけてやってきた
マイヘアでイチャつくカップルを見ながら
横にいたインスタグラマーの話を盗み聞きする転換時
クロマニヨンズでおじさんと一緒に暴れながら
バービーで最後尾に離脱 そして大人見した斉藤和義
私にとって人生を変えるほど素敵なライブで
こんなにも力をもらったことは無いのではと純粋に感じる

汗だくになって渡る くにびき大橋
真夏なのに風が気持ちよかったのは
島根の気候なのか それとも私の気持ちのせいなのか
客観的にもきつい汗の匂いを引き連れて
夜行バス乗り場まで歩いた

寝れない夜行バスから目を開けた午前6時すぎ
そうそう見ることの無い高層ビルと騒がしさから
大阪であることを認識した 
新大阪に着いたのだ
私は 昨日の余韻はともかく とにかく汗を流したかった
しかし都会はえらいもので 至ることろに何かがある

ネットも漫画も要らないけれど
人生初のネットカフェに足を踏み入れた
当時まだ17歳、1人、そして大阪
あたらしい場所というのは まだまだ緊張するものだった

シャワーの前に見た聖☆おにいさん 
化粧しながら見た東海オンエア 
不特定多数が使ったであろう大きなヘッドフォン
ホテルよりも質のいいシャンプー
まだ覚えてる よく覚えてる

のんびりする時間は意外となくて
涼しいネカフェを出て 新大阪駅に向かい歩き出す
そして万博公園、太陽の塔へ

地図は得意な方であるが 勘がさえない方でもある
前の人について行けば ガンバ大阪のスタジアム
そして右左の2択を 2分の1で外した頃
受付時間はとうに過ぎていた

私は太陽の塔を 岡本太郎を敬愛している
お笑い芸人を好きになる前から 
バンドを好きになる前から
あいみょんを好きになる前から
何故か 太陽の塔 が好きだった
3ヶ月前から予約していた内部見学は 
人生のやりたいことリストにも入るほど
楽しみにしていた

何とか着いた太陽の塔 
万博公園に入る前から その貫禄に圧倒された
内部に何とか辿り着くも 見学の当日券も売り切れ

「受付時間すぎたんですけど今日見れますか?」
と ダメもとで案内のお姉さんに聞くと
「あ、ちょうど今から見学開始の回なので大丈夫ですよ」
意外にもあっさりと了承を得ることが出来た
諦めなくてよかった 聞いてみるもんだなとしみじみ、

念願の内部は 私の語彙では表せないほど
新しい生 そして 劣 
当時からの歴史がぎゅっと詰まっていた
生命の樹、まさにそのものだった
見る人によってはおぞましいとでも言うだろう
でも私にはやっぱり強く、美しくみえるのだ

外面が好きだったのに内面まで全部見ちゃったら
そんなのさらに好きになるに決まってるよ、
と思いながら 
この気持ちは家まで連れて帰ろう 生涯共にするぜ
と意気込みを込めて 自分のためだけにフィギュアを購入
私は太陽の塔を後にするのと同時に
17歳の夏にさよならを告げ
また夜行バスで長崎に帰るのだった


今の私でも 17歳 高校3年生、田舎出身の女の子が
1人で大都会大阪に行くと言い出したら 
絶対に止めるだろうに
無理を言って 私を信じて送り出してくれた母には
本当に感謝しかない 行かせてくれてありがとう
私はこの旅のおかげで 豊かな心を手に入れることができたと思う

人生は何事もタイミング、
私はこの言葉が好きで 真理だなとも思っている
私が17歳のあの夏に 1人で0泊3日をした意味も
きっと何かの縁とタイミングなのだ
もし、私の人生を本にすることがあるのなら
私はこの0泊3日、72時間のページのはじまりに
しおりを挟み、未来の子供に渡すだろう。

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