みずうみ

あのほとりであえたら エッセイ、小説、詩を書いています、 読んでいただけたら嬉しいです

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最近の記事

わたしたちの有限について

お金を何に対して払うかは すなわち自分が何を大切にするかや、 生活をどのように彩るか、 どんな人の生活を支え、 この世界の何を大切にするが、 すなわち『わたし自身』になる。 そして、お金も時間も人生も、 『わたし』にとっては有限で、だからこそ大切なものなのだ。それは他人も同じだ。 日々、私たちは選び、選び合っている。 それでもたまに、選ばなかった方の人生を思い浮かべては、脚色され少し狂気じみた感じさえする結末を美しいと思ってしまう。 本当はそんな世界など存在しないのに。

    • フィンランドに行こう

      フィンランド その響きを聞き文字を見るだけで最近の私は沸き立つワクワク感と心の平穏を両方保つことができる。 1万キロ以上も離れた海のむこう、 はるか北方の地に色彩豊かで、人々が穏やかで、 シナモンロールとコーヒーの香りが街のそこかしこに膨らんでて、 冬は寒くて雪が降るけれど 街のあかりと家々のランプがほんのり暖かい、 夢のような場所があると信じているのだ。 まさに私の『桃源郷』のような場所。 そんな心の郷に、私はいつか1人きりで行ってみたいと思っている。 リュックひとつ、

      • 手紙

        お元気ですか? 時々宛名のない手紙をどこかに書いては 出さずにしまっていたわたしも、 あなたに手紙を書くのをこれが最後にしようとおもいます。 大したことは書きませんし、書けませんから安心してください。 最近また私は海のむこうに行っていました。 言葉も違う、気候も食事も、人と人の間に流れる空気、交わされる挨拶、表情すべてが 私のいる日常とは異なっていて 自分のいる世界は本当にこの世の中の一部でしかないことを感じました。 そして、いつもと違う地に行っても 私の臆病さ、惨め

        • あるもの

          朝の空は澄んだ青色、夕方の空は混ぜた紫とオレンジ色。 どこに行ってもそれは同じで 建物の高さや地形によって空の広さは違って見える。 東京の空はビルとビルに挟まっててなんだか窮屈そう、でもぴかぴかの繋ぎ合わされた窓たちに映る夕陽は悪くないな。 こちらの空は開けた土の地面の脈々とした地形のもっと先にも広がっていて自分がちっぽけに見える。 その場所にしかないものっていうのはたくさんあるのに、その場所にいこうとどこにいこうと自分の奥底にあるものっていうのはそう簡単には変わらない気がし

        わたしたちの有限について

          1杯のカフェラテ

           その店員はグラス半分に入ったミルクの上に淹れたてのエスプレッソをゆっくりと注ぐ。 氷がゆっくりと溶け出しミルクとエスプレッソが複雑なペイズリー柄のように絡まりあって、一つの液体がつくられていく。  わたしはその当たり前かつ、不思議な様をぼーっと眺めていた。  すかさず隣の彼が待ちきれない様子で、突き刺された透明のプラスチックストローでくるりとかき混ぜた。思ったより早く撹拌された液体は一つの液体のようでいて、異なる3種類の液体が混じり合った3つの液体だ。  金曜日の昼下が

          1杯のカフェラテ

          ほしいもの

          日に日に他人への興味が薄れていくこの頃。 誰がどうだ、ああだとかどうでもいい、 人間という生物としてなら面白いけど他人の小さな競争心とか見栄とかそういうものが見え隠れしても特に何も感じなくなった。 みんな同じものを手に入れるために必死になって、かく言うわたしもきっとその一人で時々虚しくなる。 だってさ、みんなで同じものを取り合ったら持てる人と持たざる人が出てくるじゃん? 誰かが盃を煽って笑うとき、誰かが黒いカーテンで視界を黒くする。世界ってそういう風にできてきたよね? だか

          ほしいもの

          みちのエビ

          道にエビが落ちていた。 つるつるとちょうど近くの街灯に照らされてきれいにゆで上がった濃いさくら色が光っていた。 小エビなんだか車エビなんだか、あるいは茹でられたブラックタイガーなんだか私にはわからなかったが、家路を急ぐ足をはたと止めて一瞬私の心のすべてがそのエビに注がれる。 ずっと見ている訳にもいかないので、そのエビを写真に納めて後ろ髪を引かれながら何事も無かったような顔をして歩き出す。 昨晩はエビのことで頭がいっぱいだったので、最近会っている男の子への返事は忘れた。 誰

          みちのエビ

          晴れ、時々地球外生命体

           街のコーヒースタンド、おしゃれな大型車が前に止まっている。ガラス張りの向こうにはInstagramのおすすめで出てきそうなモデル張りの人たちがテーブル囲んでおしゃべりやカウンターでの一人時間に夢中。  店内はいつものごとく賑わっている。今日は雨もちらほら降ったはずなのに、それでもここの空気とコーヒー求めて人がやってくる。  私もその一人で、叔母にもらったおさがりのワンピースと習い事の途中で両手に抱えた大荷物をもって、気が付くとその店に向かっていた。  いつもその店に向かう

          晴れ、時々地球外生命体

          今日はよしよし

          お疲れ様です、頑張ってるね、無理しないでね、ありがとう。 なんとなく関係性が遠い人にはこういう言葉がかけられるのに、関係が近ければ近いほど、 そして自分にたいしてなんて尚更こういう言葉をかけ忘れてしまう。 それをするのが恥ずかしいことだと思ってしまう。 これは日本人特有かもしれない。 「祈るほど頭を垂れる稲穂かな」 こんな言葉がある。 人に対して謙虚でいなさいという意味だけど、私も含めそれを 「自分の価値を下げなさい」と、勝手に変換してしまっていた気がする。 自分を低く見

          今日はよしよし

          かっこよくなれない

          昔から私の辞書にはかっこいいという形容詞が入ってない。 自分を少しだけクールに見せたくてちょっとした工夫はしてみても、やっぱりどっかに穴があって簡単にボロが出る。 ああ、みんなみたいに上手く水掻きして生きてみたいなあ、ヒレのかたちが他のお魚とは違うらしい。 大事なものをどこかにおいてきたり、 読みが甘くてちょっぴり恥ずかしい思いをしたり、 ずっとどこか抜け落ちててうーん、直るのかな。 でも、あれもこれもまあ私らしくはあって それを受け入れてくれる人たちに恵まれる魚ではあ

          かっこよくなれない

          ずっとわからない

          私にはわからない。自分が本当は何がしたくて、何がしたくないのか。 だから今日も大して面白くないことで笑って見せて、 悲しいときに平気なふりをした。と、いえば大げさだろうか。 小さいときから私の夢はよく変わった。 アニメのキャラクター、女優、ケーキ屋さん、お医者さん、看護師さん、カウンセラー 途中から自分がなりたいというよりかは、周りが喜んでくれそうなものを選んだりしてまたよくわからなくなった。 私は生まれて間もなく、母と父と3人で田舎のほうに住んだ。 家ではたいてい母と二

          ずっとわからない

          きつねのあめふり 後編

          後編 ~あらすじ~ 日本のある町の裏山にきつねの小さな国があった。 その国には5つの決まりごとがあって、5つ目は _______「晴れた空にあめが降った日にけっこんしきをすること」 天気雨の日には、必ず一組のきつねが順番に結婚することになっている。その国のきつねである「わたし」は自分の番が来るのはもっと先だと思っていたが、ある日突然、つぎは自分の番であることを告げられて____ ********************************** その次の次の週のある

          きつねのあめふり 後編

          なつのおもひで

           気がつくと知らん顔して夏は始まっている。  分厚い雲をしょい込み、家々の押し入れに潜んでいた扇風機一台一台をくまなく引っ張りだし、もたげた首を横に振らせる。  夏の記憶、と聞けば私は幼い頃の夏休みを思い出す。今の小学生はあまりに暑くて公園で遊べず、冷房の効いた部屋のなかで友達と通信しながらゲームなどして笑っているらしい。  思えば、私が小学生だった頃、毎年とある友人と、親同士が連れ立って出掛けていた。  恒例行事というわけではなかったが、やめる理由もなくその日は決めら

          なつのおもひで

          きつねのあめふり

          前編 **********************************   日本のどこかの町に、木々がこんもりとしてかき氷が盛られたみたいな山がありました。  そこにきつねの小さな国がありました。 国のきつねはみな親戚で、とても仲良く暮らしています。 その国には5つの決まりごとがあります。 1. 食べ物をわけあうこと 2. 困っているきつねを助けること 3. ほかの動物を脅かさないように静かに山を歩くこと 4. 身の回りをきれいにすること そして5つ目は、「晴れた

          きつねのあめふり