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#01 妊娠検査薬

今思えば、うさぎさんが4日間の屋久島社員旅行へ行っていた間、いつもより食欲がなかったかもしれません。

彼が帰ってくる頃には、常に軽い吐き気と胸焼けがしていました。
コロナウイルスの検査キットのついでに吐き気止めの胃薬を買ってきてもらい、数日間それを飲みながら彼の看病をしていました。

コロナの症状は、37度台の発熱と倦怠感、鼻水。
そこまで重症ではなかったけれど、うさぎさんが辛そうにしていることで頭がいっぱいで、自分の体調不良にはあまり目を向けていませんでした。


水曜日には私も検査キットを使い、コロナは陰性。夜にはうさぎさんの体調もずいぶん良くなって、少し気持ちに余裕が出てきました。
「もしかするとこれは」と思い、つわりや妊娠について調べていました。
もう生理の予定日から軽く1週間以上は経っていたのです。

その時彼の口から「さすがに生理遅すぎじゃない?妊娠検査薬試してみようよ。早く分かったほうがいいよ」と。

ああ、同じことを考えてくれていたんだと、少し嬉しくなりました。
そのまま近所のドラッグストアに妊娠検査薬を買いに行き、すぐに検査をすることになりました。

私はとてもドキドキしていて、妊娠への期待と、不安と怖さで身が縮むようでした。

陽性だったとして、彼が喜んでくれるのか、私に1人の人間が育てられるのか、今の幸せな生活が変わってしまうのではないか。


躊躇している私の横で、彼は一刻も早く結果を知りたいようでした。
「ここまできたら仕方ない」
私はそう思って、人生で初めて妊娠検査薬を試してみました。


ジワジワと沁みていく検査薬を、2人で見つめています。
「線、ひとつしか出てないね」とうさぎさん。
彼はせっかちで、気が早くて、待つのが嫌いです。
判定結果は1分後、まだ20秒くらいしか経っていません。
「まだ半分しか染みてないんだよ」と私。

ちょっと待って、まだ待って、心の準備ができてない、、
そんな私の気持ちとは裏腹に、みるみると浮き出てくるのは陽性判定の線でした。


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