地獄



  フリーアナウンサーの宇垣美里さんという人がいる。世間で騒がれるくらい美人で、アナウンサーという職業に就けるくらい聡明で、フリーに転身した後も様々な場所で活躍していて。

  わたしは宇垣さんについてそんなに詳しいわけではないけど、いいなあ人生全部うまくいってる人だな、と思ってしまう。ときもあった。

  「あなたにはあなたの人生の地獄があれば、わたしにはわたしの地獄がある。」

  これは、そんな端から見たら欠点のなさそうな宇垣さんの言葉。( ほぼ原文ママ )

  自分より容姿が整っている人も、知的能力が高い人も、人をまとめる力がある人も、お金を稼ぐ能力がある人も、この世にはごまんといる。

  わたしは、そういう人と出会うたびに自分と比べて、落ち込んで、その人に生まれ変われたらと無駄な妄想をして、所詮妄想止まりでしかないことにまた落ち込んで、のループを毎回してしまうんだ。

  だけど、そのたびにこの言葉を思い出してハっとする。

  目には見えないだけで、人はだれでも多かれ少なかれコンプレックスを抱えているわけで。周りからみたらむしろ長所である部分も、本人からすればとても醜いものなのかもしれないわけで。

  そんなことにまで思考が及ばず、人のことをいいなあいいなあと羨むばかり。

  そんな自分がとても愚かであると何度も気づかせてくれる言葉。と、同時に、人のことを羨ましい、と指をくわえて見ているのではなく、自分の持ち合わせたものを愛し、持ち合わせていないものを手に入れる努力をすべきなんだと気づかせてくれる言葉でもある。


  誰もが認める容姿と日本の平均を大きく上回る学力を持ち、多くの友人にも恵まれ、何一つ汚点のない人生を歩んでいるような知り合いがいる。

  その子は、第三者からみればそんな些細なことで?と言いたくなるくらい小さな事柄にも心を傷つけられ、毎日苦しみながら生きている。

  そんな辛そうな状況にいるその子を見るたび、そんなに恵まれているのになんでそんなに辛そうなんだろう、と、つい頭にハテナが浮かぶ。

  そのたびに思い出す、「あなたにはあなたの地獄があれば、わたしにはわたしの地獄がある。」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?