【食糧人類Re:】 ホラーSFアクションチック風刺漫画

久しぶりの投稿です。
最近,「食糧人類:Re」という漫画作品にハマっており,2週間に1度の更新を楽しみに頑張る毎日です。

食糧人類:Reは,前作である食糧人類の続編として,コミックDAYSで連載されている漫画です。
天人と呼ばれる,宇宙より飛来した高度な知的生物によって人類が飼育され,彼らの食料となるべく人間は皆自らの身体を喜んで差し出す世界を舞台として,この異常な世界構造とこれを維持する天人や利権の享受者を打倒するべく,主人公達が奮闘するというストーリーとなっています。

私は,この漫画を読んで何か異様な違和感とある種の既視感を覚えました。
それは,この漫画が流行りの手法でつくられた一発芸的なホラー漫画などではなく,現実世界の異常性とそれに気づかぬ大衆の愚かさを風刺的に表した社会派作品であるということです。

作中世界に登場する「天人」は,人類から思考を奪い,暴力を奪い,社会を分断させることで,地球を安住の地としている世界の統治者です。人は皆,天人の食料となるべく自らの身体を鍛え,少しでも美味しい肉となるよう日々努力するのです。
この,世界の統治者である天人は,主人公ら一般人には姿かたちや声といった正体の一切を開示しません。
そうした正体の分からぬ統治者を崇め,拝み,終いには自らの身体を食料として差し出す人類の姿は,「天人」「天人様」という独特の響きを持つ名称と相まってか,第2次世界大戦以前の日本における天皇制を彷彿とさせます。

国を守るためだ,両親や兄弟,親戚のためだ,そして,天皇陛下のためだと言われ,戦争に駆り出され,自らの命を犠牲にする。
精神論や根性論で兵を使い捨て,徴兵を拒めば非国民と罵られ爪弾きにされる。
天人様,天人様と異形の怪物を崇め,身体を差し出し,食料として非適格な落伍者には容赦のないリンチを食らわせる。
全体主義や同調圧力,欺軟怕硬な態度を見事に転写していると言えます。
こうした歴史上の過ちを,本質構造を抽象することでフィクションとして描くと同時に,現代社会における同様の構造を持った問題を風刺しているとも言えると思います。

自己責任論や努力至上主義の論理がこれに当たるでしょう。
国のため,社会のためという大義名分のもと,身体を使い,精神をすり減らすことが当然となった社会。実質的な階層社会で一生報われない努力と競争を強いられる。利益を得るのは既得権益の人間だけ。
労働のサブスクリプション,奴隷の足枷自慢,1億総ルンペン社会の到来です。
実質的な階層社会が努力至上主義によって正当化され,社会的弱者を自己責任論で切り捨てる現代社会がまさしくこの構造を持っているのです。

こうした自己責任論と努力至上主義が蔓延し,弱者を切り捨て強者に媚びる愚民が跋扈する現代の風刺,それをホラーテイストでSFアクションチックに仕立てた絶妙な作品であると思います。

今後のストーリー展開に期待大です。

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