カオス、ここに極まれり

ずっとこの世界を薄ら寒いと感じていた。
現実味も感動も色もなく、ただ我に返れば笑いがこみ上げてくるような、拙い世界。上辺だけの馴れ合い、傷の舐め合い、互いを慮る美しき日本人精神!

………いや、よそう。
そんなものは必要ないだろう?
俺も、お前も――

始まりは刺々しい言葉の嵐。寄ってくる奴らを蹴散らすくせに孤独を理解されたがって、凡人に理解されない己を高みにいると錯覚した。
なるほど彼は凡人ではなかった。だが優れた人間とも言い難い。
異様に、異妖に、個に固執する狂気を心の内に飼っていた。

偉人は一人の例外もなく変わり者だっただろうが、変わり者が一人の例外もなく偉人であるはずはない。大半の変わり者はただの変わり者だ。
「くそっ…時間がないんだ。半端者はこのフィールドにはいらない。今すぐ出ていけ!」

頭の片隅で痛みがじわりと主張を始める。


次に訪れたのは静寂だった。
足りないのは時間だけだと思っていた。でもそうじゃない。場所も、技術も、能力も、知識も、環境も、才能も。何一つ足りてはいなかった。
彼は貪欲に求め続ける。藻掻いて、足掻いて、求めた全てを手にした彼は、最後にたった一つを手にすることができず、やがて全てを失った。猛威を奮った彼の個性はチャンスをふいにし、表舞台を去った。

いつだ。いつから俺はおかしくなった。どこで間違えた。
何を間違った?誰が俺をおかしくさせた?
俺はこんなところで終わるような人間じゃない。
戻れるなら戻りたい、取り戻したい、終わらせたくない、俺の栄光――

狂気に笑われた。

お前らしくもないな。個に執着するお前に何を気にすることがある? お前は一人でしか闘えない。
だが、それはお前が異常だからじゃない。“一人でいることがお前を輝かせる”からだ。
さぁどうした。今こそ、お前を打ち砕いた奴らに英雄の凱旋を見せつけるときだ!


脳天を射抜かれたようだった。
そうか。こんなにも簡単なことだった。
俺はここにいる。他の誰でもない、みっともなく足掻いた俺が、ここにいる。


突き動かされるような衝動に身を任せ、飽きるほど味わったモノクロの世界を無我夢中で駆け抜けた。走れば走るほどに気持ちが高まり、身体に籠る熱とは裏腹に、息苦しさは遠く切り離されていく。

追いかけるものは自分自身でいい。過去の自分を追い越して、未来の自分に追いついて、現在の自分が最高だと証明してみせよう。あらゆる瞬間で史上最高を展開しよう。

―もう誰にも、この夢を砕かせはしない。


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UNISON SQUARE GARDENの新曲、「カオスが極まる」1番を基軸に書きました。OPを飾っているブルーロックの要素(サッカー等)も少々組み込んでおります。
漫画は未読なのですが、アニメを追いつつ、この曲は絵心甚八の目線かな…?と思いながら⚽️

MVが先ほど公開されましたのでまだご覧になってない方は是非に!


https://youtu.be/ejzfqXA-bYY

Bメロのカクカクしたカメラワークや間奏の影、テレビが積み上がっていく様、終盤で3人が画角にいくつも映る作り込みがとても好きでした。私にとって映像作品というのはただそれだけで魅力的に感じられるので、見ることが出来ていつも幸せです📸
改めて、リリースおめでとうございます🎉

拙い言葉をここまで読んでくださりありがとうございました。またいつか。

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