たった5分の音楽


推しは推せるときに推せ

本当にその通りだとおもう。
あまり推しという言葉は好きじゃないけど
好きな人にはなるべく会いに行ったほうがいい。

2022年春、新卒で入った会社を辞めた。
辞めた理由は自分のせいだったし、自分のためだった。途中でコロナ禍になったのもあって、止まらないクレームと、常に上司とパートさんの板挟みで、会社にいる時間は全然息が上手に吸えなかった。
今も電話は怖くて声が震えるし、人の目もあまり上手に見れない。
自分があまりにも未熟だったから、常に背伸びをするように過ごしていたら、戻り方を忘れてしまってそのまま自分のことも忘れてしまった。

最近、部屋の片付けをしていて見つけた日記に、
「音楽を聞いている時間しか息が吸えない」
って書いてあって泣いちゃった。
会社でトイレに行く5分でも耳にイヤフォンを突っ込んで過ごしていた。あの場所で流れてくる音楽だけが私の味方だった。

音楽が好きだ。
やさしい歌が好きだ。
歌を聞いて初めて泣いたのは二宮和也の虹という歌。
綺麗でやさしくて涙が出ることを初めて知った。

私のいまを作る音楽のはじまりは関ジャニ∞の音楽。
いちばん好きな曲は決められないけど、会場でみんなで歌うひとつのうたが好きだ。あの空間を知っているから私はライブというものから離れられなくなった。

2022年から2023年春まで1年間、会いたい人に会いにいく旅をした。大好きな人たち、大好きな音楽。

ライブが好きだ。
どれだけの人数がいても、あの場所では誰もが1人で、
誰ひとり独りではないあの空間が好きだ。

36回。月に3回のペースでライブに行った。
1人だったり、友達と行ったり、姉妹を連れ回したり。
北海道まで飛んじゃったりして。
コロナ禍のせいで外にも出れずに自然に溜まっていった貯金があって良かったな〜、わたし、あの時間は私の今の幸せにつながっています、無駄じゃないよ、よく頑張ったね。

はじめての土地、大好きな音。
はじめての音楽、いつもの場所。

会いに行く時間が無い、会いに行くお金がないと思っていたのは、全部わたしの言い訳だったのかもしれない。

2023年2月19日
sumika ten to ten オーラス
わたしの3列向こうで笑顔満開でギターを弾いていた君は、その4日後、遠くの空の大きな星になった。
ギターの音にあわせてふわふわ揺れる髪の毛と、目で追えないほどの速さではじく音。楽しくて仕方がないと大きく開く口に、頭をバンバン叩いて促すクラップ。話し出すと小さなお花が舞うような人。
中学生のはじめたてのsnsにフォローを返してくれるような人だった。

いつか来る終わりは明日ではないと思っているうちに終わりは来る。気付いているのに私はずっと分かろうとしない。

ひとのこころなんて分からない。
わたしはあなたが魅せてくれるものしか知らない。
でもさ隼ちゃん、わたし、あなたのギターが大好きなんだよ、まだ一緒に歌いたかったよ

好きにならなきゃ良かったなんて絶対に嘘なのに、どうしても自分が好きだと信じてきたもので自分が苦しむことになってしまったら、もしかしたらそれが間違いだったのかもとか思っちゃったりして、ぐるぐる回ってまた朝が来て。

2月25日、涙も出ないまま、わたしはまたライブハウスにいた。
こんな日でも音楽は楽しくてなんだか寂しかった。
最後の曲の前、「好きなものが増えるとその分悲しいことも増えるってわかる?」っていったその言葉で、閉めていた栓が捻られたように涙が出た。「自分の働いたお金好きに使って、好きな人にたくさん会いに行って、また俺らにも会いにきてよ。」って言ってくれたその言葉が、この1年の私は間違いじゃないよって言ってくれているみたいで。
最後の歌、ライブハウスのいちばん後ろで爆音に助けてもらいながら恥ずかしいくらい泣いた。

上手く泣けるようにさ 僕の歌でごまかしていいから

明日晴れるさ/sumika

違う音楽を聴きながらこの歌を思い出すのは今だけ許してほしい。あなたがつくった大好きな歌。
結局、こんな時も助けてくれるのは音楽で、本当、どうしようもなく音楽が好きだ。

終わったあと、どうにか気持ちを伝えたいと思って初めてDMを送ったら、うまく伝わるか分からないけどの言葉と一緒に「もうその人が見えなくなっちゃってもその人の音楽はずっと残るからね」って返信がきて、今もまだお守りにしている。

そうだね、わたしとあなたの間に音楽があって良かった。あなたが残してくれたギターの音があって良かった。

これからも〝もっと会いたかった〟という気持ちがなくなることは無いだろうけど〝会いに行って良かった〟の気持ちの方が大きくなったよ。私が少し前の生活を続けていたら、絶対にあの日会えていなかった。私、好きなものを見失わないでいてくれてありがとうね。

好きな人には会いに行ったほうがいい。
好きな人には好きだと伝えた方が良い。
関係に名前が無くても、うまく説明が出来なくても、
もうそんなことはどうだっていい。
あまりにも当たり前に見えて恥ずかしくなってしまう、いちばん難しいこと。

私は、大好きなあなたに会いに行く。
待ち合わせ場所は大好きな音が鳴る場所で。

手をぎゅっと握って、涙が出ないように目を瞑っていたあの場所の5分を救ってくれた音楽たちに最大級のありがとうと大好きを込めて。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?