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潜在意識は戦地へ向かう|夢

ここ数年で見た夢の中で一番衝撃的だった。


僕らは映画のエキストラのような存在であった、と思う。夢の中はいつでも始まりとか細部が曖昧なのだ。僕らというのは中学とか高校、大学時代の友達と、それ以外の知らない人で構成されていた。

夢の中の出来事は最後だけやけに鮮明に覚えていて、始まりがどこにあるのかボヤけている。一番最初のシーンは、高い足場の上にレールが敷いてある一台のトロッコに乗っている場面だった。それより前のシーンが存在して、トロッコに乗っている理由を知りたいが、永遠に思い出せないだろう。

背の高い足場の下に何があるのか分からなかったが、空は今にも世界が終わりそうな橙色であった。見渡す限り岩や砂しかなく、どちらかといえば火星のようだった。僕は夢の中で疑問を持つことができない。だから夢だということに気づかないことが多い。

トロッコの線路は初めから二つあり、少し遠いところで、だいたい平行に、そして同じスピードでもう一台が走っていた。大学時代の友人が乗っていた。トロッコのレールの足場はもろく、トロッコに乗っている全員が崩れ落ちることに気づいていたように思う。

そのうち平行に走っていた2台のトロッコが交わるような場面になった。なぜか、交差した後に走るレールを二つの線路から選ぶことができた。全員が片方のレールは足場がなくなり突き落とされ、もう一方は助かることを直感していた。僕らは慌てたが、同じトロッコに乗っていた人とレール選択し、そして落ちた。

トロッコから地上に落ちている間、元々そのレールが存在していた場所はゲームのようにデジタルな点線に置き換わり、予定されていたレールの位置を教えてくれているようだった。もう片方のトロッコに乗っていた友人に僕の名前を叫ばれながら、地上に落下していた。

地上に落ちても、身体にはなんの問題もなかったが、この本当に何もない火星のような場所で、どこかへ進んでくれるトロッコから落ちた時、もう助かる術は無いように感じた。

なぜか僕らは歩き出し、次の瞬間、火星の丘のような場所に作られた基地に到着した。様々なトラックが行き交い、大きな洞窟の入り口のようなものが、あちこちに空いていた。入り口周辺は頑丈に囲われていて、他の洞窟への移動は簡単では無いようだった。

ここまで歩いてきたメンバーは同じ洞窟に案内されることなく、別々の場所に連れて行かれた。洞窟といっても、非常に広く、体育館のような空間だったが、依然として床も壁も天井も赤い岩石で覆われていた。この洞窟の中には大勢の人がいて、皆が何かに怯えて何かに怒ってるようだった。直感的に僕は死に向かっていると思った。

この洞窟の中にいて、この後何をすべきなのか、何をやらされるのか、説明されたわけではない。しかし頭の中にはくっきりと、この後どうなるのかをイメージできていた。僕らは武器を手に取り、この洞窟を出て戦地へ向かうことになっていた。そして元々いた平和な世界に戻るためには、その戦地へ向かうしか方法が無いことを直感が教えていた。

その戦地を誰かに教わったわけでもなく、その場所は、天まで伸びる螺旋階段であることを知っていた。その螺旋階段は地上に近い部分では大きく離れているが、天に近づくとともにその二つは徐々に近づいていき、最後に一緒になり、元の世界に続いている。空は青く、緑の草花が生え、気持ちのよい風が吹いている元の世界に。

誰が味方で誰が敵なのか知ったものではないが、もう一方の螺旋階段から敵が登ってくることを知っていた。そして階段を登り、天に近づき、その敵と殺し合いすることを既に知っていたのである。

洞窟内では話している人の姿を見ることはなく、トイレにいくのも集団で、見張られていた。どんな世界線が混ざっているのか分からなかったが、潜入捜査をしているスパイもいたらしい。時々何人か呼ばれるのだが、僕も他の2人と他の洞窟まで連れて行かれた。

連れて行かれた洞窟は、どちらかといえば研究室や理科室のようでもあり、魔女の部屋のようでもあった。大きな椅子に3人とも座り、魔女が人間の姿をしているような人に、1人一枚紙切れを渡された。その瞬間、僕の隣に座っていた女性の紙切れが燃えて、その女性の顔が引きつった。この紙で何かを判別することができることを、その女性は知らなかったようであった。女性はそのまま他の場所へ連行された。その紙切れには、日本語でお礼のメッセージが書かれているようだったが、はっきりと読む余裕はなかった。

大きな洞窟内に戻ったあとは何もなかったが、全員が「螺旋階段」へ向かう時が近づいていることに気づいていた。最後は優しさなのだろうか、他の洞窟との交流が許されていた。洞窟から出てみると、頑丈に囲われた入り口が少し解放されていて、他の洞窟にいた友人が自分の洞窟のところまで来てきた。

中学時代の友人が多く集まっていて、皆自分たちが死に向かっていること、しかしそれは元に戻る唯一の道であることを知っているようだった。僕は「未だに信じられないけど、死ぬんじゃねえぞ」というような虚勢を張っていた。皆と別れ、大きな洞窟に戻り、遂に螺旋階段へ向かう時が来ていた。

なぜか死ぬことを確信しつつも、この世界に僕が存在する理由を知ることはなかった。初めて死を意識し、自らの意志でそこへ向かうことを選んでいた。ついに覚悟を決めて、そしてそこで目を覚ました。


サムネイル画像:https://unsplash.com/photos/pZ-XFIrJMtE


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