東京

東京が爆発する期待なんて、最初から、持ってもいないのに、東京へ行った。自分の場所だと嘘ついて、過ごすいつもの場所には居たくなかった。着いたら、辛うじて生きる私の命と、交換して、交差点を渡った。虚しかったといえば答え合わせになるだろうか。ニュース番組で、いつも観る交差点だから、対して。驚くこともなかった。商店街には、曲が流れる。日常化した人には感じない。シャッターの光が、煌く。日常化した人には感じない。足音も、ネオンの光も、薄暗い街中も。ほらアンタもこっちおいでとか、ほら罪の香りだよとか、罪を被せることで軽くなる嘘とか、街に馴染んでしまったら、消えてしまうその残り香も、誰も気にしちゃいないのだ。レコードショップへ向かわずに帰るために駅に入る。切符を買った。その五分前に、帰る系列の電車から人が飛び降りた。それは偶然か、計算的か、咄嗟にか、解らないけど、そこから降りたら、総てのダイヤが乱れることを訴えてるみたいだった。二時間待って、やっと来た車体に満員電車で、グリーン車の入り口で埋まる人々と自分。PM11時過ぎの家。
誰のせいにも出来ない憐れみの情なんて、東京が爆発して仕舞えば、済む話。
東京が爆発する期待を持っても無いのに、東京へ行った。辛うじて生きる私と交換して、その命と応えた命はもう無かった。私だけが生きているみたい。私だけが生きているみたいな。私だけが残されたみたいで、あんたもこっちおいでと手招いてるみたいだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?