さるすべり


14時04分。

オードリーの若林のエッセイ「ナナメの夕暮れ」を110ページまで読んで休憩している。どうにも気持ちが落ちつかない。男はYouTubeをみながらパソコンを打ち、仕事をしている。この9畳ほどのふたりで住むには狭いワンルームでは、彼の一挙手一投足を気にしてしまう。というのはたぶん私は彼にまだ心を許せないからなのだ。この人はやさしい。出会って間もない私に好きだといってくれて、他の男との火遊びも元彼氏とのことも理解を示してくれて、にげる場所まで用意してくれたのだから。でも。私はこの人と一緒にいるビジョンがみえていない。もっと正しくいうのなら、潜在的にこの人と一緒にはいられないと思っているのだとおもう。今はただ彼のやさしさにつけこんで、彼の非日常となって彼を癒し楽しませる存在になっている。はやく逃げなければ、と思っています。ぬるま湯はすぐ冷めてしまうから。

1時16分。

元彼との家に帰宅。下着と部屋着、それからアイシャドウなどを取りに戻ってきた。ちょうど留守にしていてラッキー。今日はこのままこの家に泊まろうとおもう。この家の間取りや雰囲気が好きだから本当は離れたくない。おそらく明日はスタジオがあるはずなので、始発くらいで帰ってくるだろう。さいあくな喧嘩をしてから、ろくに会話もしていないしLINEを送っても素っ気ない返信しか返ってこなくなった。だからといってどうというわけでもないけど、前向きになられるとそれはそれで腹が立つ。というか、もっと彼には苦しんでほしい。私をくるしめた以上にもっともっと。帰ってきたとき、玄関に私の靴があるのをみて何を思うんだろう。すこしくらい動揺してくれるだろうか。それとももう何も思わないだろうか。本当にお別れするとき、たくさん傷つけてあげたい。

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