8月

「俺の彼女になって8月まで癒してよ」

セブンスターの立ち込めるカウンターに座った弱冠に冗談交じりに誘われた。1800キロ離れた北海道から出稼ぎに来ている彼は、13連勤明けの休日にすることもなく暇を持て余しているらしい。知り合いもおらず、見知らぬ街で生活する寂しさと孤独感に苛まれてただただ労働に励む日々。働く現場が落ち着き、契約期間が終了する8月まで一緒にいてくれる人が欲しいと嘆いていた。

現地妻なんて言葉がある。出稼ぎ先の地で見つける彼女(笑)のことを意味する。契約期間が終わるその時までの期間限定の彼女。同じ飯を食って、同じ景色を見て、結局は別の場所に還る。

彼が魅力的でなくて良かったと思う。好きになる気配すら無くて助かった。絆されて付き合って次の夏にバイバイするのは残酷すぎる。タイプじゃなくいてくれてありがとう。

無事に勤めを終えて、地元に戻って煙草を吸わないお酒もたまにしか飲まない笑顔の素敵な女の子に恋してください。