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スタンドバイ自分

私は今学期、死んだ人をたくさん見た。といっても映画の中だけど。
モザンビークの子ども兵
ルムンバの叫び
ホテル・ルワンダ
人間が殺されるシーンや死体がゴロゴロ転がっているシーンがたくさん出てきて、しかもそれが実際に起こったことであって、もうどんなに怖いホラー映画を観ても何も怖くないだろうと思った。


でもこの前、友達の家で心霊スポットのYouTubeが流れていたけど、画面に目を向けられなかったし、Netflixでイカゲームを観たけど、グロくてグロくてビクビクしながら観ていた。人の血なんて見慣れたと思っていたのに。最近、紙で指切ったり、鼻血出したりしてないからかも。

ところで、私が実際に死んだ人を見たのは高校一年生の春のことだった。部活をしていて突然担任の先生が私を呼びに来た。私の祖父が亡くなったらしい。「私用で早退します」と部長に告げてから、リュックを持って、着替えに行って、そのまま一人で電車に乗った。人の少ない、まだ陽が高いうちに電車に乗るというのは変な気分だった。そのせいかわからないけど、その時、15年間何度も会った祖父が亡くなったことを噛み締めていた。別に涙が出るような感傷的な気持ちというよりも、無というか空というか、清らかな感情を私は持っていた。家に帰ると、帰りの支度が済んでいて、ほとんどすぐに車で親の故郷に帰ったと思う。セレモニーのところへ行って、親族の控室みたいなところに祖父がいた。そこは和室だったから床の間に横たわって、頭の先から足の先まで白かった。首元には血を抜いた後が見えて、「そうか」となった。祖父はもういないのか。祖父は私が中学の時くらいから、認知症や肺炎で私とはほとんど会話をしていなかった。小学校の真ん中くらいからちょっと嫌いになって、私は祖父とあんまり口を聞いていなかった。祖父が好きでたくさん話していたのは、幼稚園や小学校低学年のほんとに小さい頃だけだった。入院していた時は、退院したら散歩にでも一緒に行こうとか思ってたのに。惜しいことした。

リメンバー・ミーで人は二度死ぬと言っていた。一度目は生命活動が終わった時、二度目はその人を覚えている人がいなくなった時。祖父はまだ生きてたみたい。

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