素敵なweb3コミュニティを探して。
こんにちは。
私が応援しているNFTプロジェクト、「HamCup(ハムカップ)」をモデルにしたファン小説を投稿させていただきます。
もちろん「HamCup DAO」の他にも、素敵なweb3のコミュニティはたくさん存在しています。
どうか皆さんにとって、居心地の良いコミュニティが見つかりますように。
それでは、行ってみましょう!
HamCupファン小説 「ようこそ!」
🐹Chapter 1.
「ようこそ! いらっしゃいませ!」
明るい声が店内に響く。
案内されたテーブル席では、友人のMが、すでに半分ほど空いたジョッキを傾けていた。
「悪い。遅くなった」
「まだ一杯目。俺もさっき着いたばかりで」
そう言いながらMが時計を確認する。
スマートウォッチというやつだった。
Mもこういう時計をするのか。
「それ、Apple Watchじゃん! 文字盤が面白いね」
「でしょ? これな、オリジナル。世界にひとつ」
「はぁ、絵心あったんだねぇ」
「いや、作家さんの作品だよ。デジタルアート」
「それって、NFTってやつ?」
「なんだ、知ってたのか!」
****
NFT――。
週刊誌の副業特集でその名を知った程度だったが、気にはなっていた。
3杯目のビールを味わいながら、話を続ける。
「どう実際。いくらか稼げるもの?」
「いや全然。そのへんの才能は無いんだわ、俺」
「その絵は?」
「6万くらいだったかな」
「たかっ! もうApple Watchの本体が買えちゃうじゃん!」
「まぁね。コレがいつか値上がりして……というのは正直分からないけど、ファン同士のコミュニティが面白くてね」
「コミュニティねぇ……」
「サードプレイス的な」
「横文字多いな」
「ようするに、ファンクラブな」
「また横文字!」
🐹Chapter 2.
翌日。
興味本位で、NFTについて検索してみた。
(ははぁ……なるほどねぇ)
同じコンセプトや世界観で統一されたNFTの集まりを、「NFTプロジェクト」、あるいは単に「プロジェクト」と呼ぶことがわかった。
プロジェクトの代表者を「ファウンダー」と表現することも。
眺めているうちに、ふとMが購入したプロジェクトを発見し、値段を確認する。
(えっ! あいつ儲かってんじゃん!)
数百円で入手したものが数万、数十万円になり、あるいはその逆もある。
話はシンプルだ。
数百円で手に入るものから攻めれば、金銭的なリスクはほぼゼロだろう。
ただし、その価格で購入するには、ファウンダーが配布する「AL」というものが必要らしい。
それならば、これからNFTを販売するプロジェクトをターゲットにすればいい話だ。
方向性が決まったので、条件に合いそうなプロジェクトを探し始めることにした。
金銭的にはわずか数百円のリスクとはいえ、時間的なコストはそれなりに注ぎ込むことになるだろう。
せっかくなら、夢は大きいほうが面白い。
いくつかピックアップした魅力的なプロジェクトの中に、「HamCup」というものを見つけた。
ハムカップ。
その名の通り、ハムスターがカップに入っている、なんともチャーミングなデザインだ。
秋には初のジェネラティブコレクション「HamCup Crew(ハムカップクルー)」の発売を控えているというし、なにより「世界的なIPを目指す」とは実に大胆で痛快じゃないか。
気に入った。
𝕏の音声配信機能「スペース」を使って、毎日欠かさず情報を発信しているようだ。
それも、プロジェクトを運営する人間からだけではない。
何人ものHamCupファンそれぞれが、「派生スペース」と銘打って積極的に音声を配信しているという。
𝕏のアカウントなら持っている。
タイミングよく、今まさに配信中のスペースを見つけたので、軽い気持ちで入室するボタンをタップした。
🐹Chapter 3.
「こちら初めての方ですね! ポテトマウンテンさん、ようこそハムぅ」
(……えっ! いま、自分の名前が呼ばれた――?! な……なんで!?)
まさかのことに驚き、思わず退出ボタンを押してしまった。
歓迎の言葉をくれたのに、悪いことをしてしまったな。そう思いつつ、気恥ずかしいような、少し誇らしく、嬉しいような不思議な気持ちになった。
(びっくりした! ほんとにウェルカムな雰囲気なんだな)
気持ちを落ち着かせるために、もう少し情報を集めてから、再チャレンジするよう作戦を変更する。
(録音だったら大丈夫だよな)
幸いほとんどの配信には、アーカイブが残っている。
(……あれ? 今何時だっけ)
心なしか、窓の外がうっすら白んでいるようにも思える。
ほんの2つ3つを試し聴くつもりが、気付けば朝を迎えようとしていた。
一体、いくつのアーカイブを聴いただろうか。
もうすぐ午前4時。HamCupファウンダーのほんてぃ氏が「Voicy」で毎日配信しているコンテンツの最新版が公開される時間だ。
それが頭にスッと浮かぶくらいには、すっかりHamCupのファンになってしまったらしい。
🐹Chapter 4.
暗号通貨取引所の口座開設を申し込む。
審査を待ちながら、メタマスクの準備もした。
「HamCup Crew」の発売はこの秋、10月だ。
それを考えると、少しばかり早いと思う方もいるだろう。
なぜ、こうも準備を急いだのか。
「HamCup Crew」の素体にもなる一点物のオリジナルHamCup――その最新27番目のハムが、オークション形式で販売されると知ったからだった。
27番目のHamCup。通称「あんみつハム」
どうしても欲しい。
しかし、金額が金額だ。
それでも、お金で手に入れられるなら……よしっ!
覚悟を決めると同時に、もう落札したようなつもりになっていた。
(手に入れたら、Mにも知らせよう!)
この頃には、Mの気持ちも理解できているような気がした。
まだ、HamCupファンが交流を楽しむDiscordサーバ「HamCup DAO」にも参加していなかったのに。
もちろんDiscordはインストールしていたし、アカウントも作成済みだった。
ただ、まだ自分には、DAOへの参加は敷居が高く感じられたのだ。
いや、27番目のHamCupを落札して颯爽と登場する――そんなヒロイックな妄想が、頭の片隅に存在したのかも知れない。
****
やがて、オークション当日を迎えた。
オークションが始まり、オークションが終わる。
――入札すら出来なかった。
取引所の口座開設が間に合わなかったのだ。
メタマスクから直接ETHを購入する方法もあったようだが、よく分からないまま手が出せなかった。
(もっと早く知っていれば……)
きっと今頃は、落札者を祝福する声が、スペースやDAOを鮮やかに染めているだろう。
明日にはHamCup通信も投稿される。
いいや、通信社のことだ。もうとっくに号外が発表されていても不思議は無い。
OpenSeaで落札額が決定した事実を見届けた後は、スマホに目を向ける気にはなれなかった。
気が抜けたのは、心か。
それともこの缶ビールか。
おそらくその両方だろう。
どうやら自分が感じている以上に、思い切った覚悟を持っていたのかも知れない。
(今回は、たまたま縁が無かったってことさ)
大きな息をひとつ吐き、ポッカリと空いた気持ちの穴を埋めるつもりで、気の抜けきったビールを流し込んだ。
🐹Chapter 5.
数日が経過し、取引所から、口座開設の手続きが完了したとの知らせが届いた。
久しぶりに𝕏を開くと、今日も変わらず、HamCupファンがスペースを配信している。
いつもいてくれる。
当たり前じゃない。
こんなにありがたいことはない。
(そうだ! まだHamCup Crewが待っているじゃないか!)
そう思い直すと同時に、配信中のスペースに入室する。
「あっ! ポテトマウンテンさん、前にも来てくださいましたよね。もしよろしければ、DiscordのHamCup DAOにも参加してみてください!」
――今だと思った。
HamCup DAOへのリンクをタップし、ひかえめな挨拶を書き込む。
すぐさま画面を埋める、たくさんの歓迎の言葉。
もう構える必要も、気取る必要も無かった。
自然と、言葉と言葉が繋がった。
NFTを知って以来、ずっと見たくて、ずっと入りたくて……けれど、どこか遠慮していた世界がそこにはあった。
(あぁ、Mが言ってたコミュニティって、この感覚のことだったのかも――)
もう少し早くに参加していれば良かったのかも知れない。
反対に、この少しの遠まわりが、自分にとっては大切だったのかも知れない。
(どちらにしても、ね)
何ヶ月……何年と点くことの無かった𝕏の通知マークが、ふたたび力強い鼓動を刻み始めた。
🐹エピローグ
数年後、彼のアイデアをきっかけとして、HamCupが雑誌の特集ページを飾るようになるのは、また別のお話。
場面は今から数ヶ月ほど先の未来へ。
2023年11月。
日曜日の昼下り。
HamCup Crewの一員となった彼がいつものようにHamCup DAOを眺めていると、新しく参加してくれた仲間のコメントが投稿された。
すかさず、嬉しい気持ちと共にメッセージを書き込む。
「ようこそ! いらっしゃいませ!」
【完】
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