上野の酔いつぶれ

1ヶ月ほど前の事。
一緒に電車に乗っていた友人が上野で降りるので、ドアが開いたので「バイバイ」しようとしたら、目の前に、駅員2人が大声で話しかけながら、腕ずくで掴まれて乗せられそうな人がいる。 
「えーっ、なにこの人?!」
「どこで降りるかわかりますか?」
駅員に聞いた。
「南浦和、終点ですー…」(ドア閉まる)
駅員との会話をしているうちに、友人はいなくなっていた。
ドア近くの脇の床に、30代位の男性が座っている。が、座席の横にもたれていて、座るというより態勢を維持できないでいる。

こんな時の車内の乗客はというと、「この人どうなる?」や、「誰か何かしないの?」みたいな眼差しを隠している風な人たち、と私には映った。
つまり、「関わり合いたくないがほとんどなんだろうな」と。

なにせ目の前なので、少し観察後、
「だいじょうぶですか?」
聞いてみた。返事なし。
「私は南浦和までは私は行かないので、どうしようか」と思わず声が出た。
「蕨に行きますが、(南浦和は)ひとつだけ先なので、僕が送ります」
と、少し離れた所から様子を見守ってくれていた勇者!想定20代の若者くんが、立ち上がり言葉をかけてくれた。
「そう?ありがとう。ではお願い出来ますか?」
その会話は、まわりの我関せずとしていながらも、たぶん心配していただろう外野を安心させたにちがいなかった。

その後、勇者と協力し、直に倒れがかって眠りに入りそうな男性を、座席に座ってもらおうと促した。
しかし、そんな電車の中の些細なドラマをこの男性はいとも簡単に崩すことになる。
彼は、鶯谷に着いた途端、(上野の駅員さんの努力虚しく)ドアから這いずり降りてしまい、そのままホームに仰向けになったまま動かなかった。

蕨にお住まい(?)の勇者、今頃どうしているだろうな。

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