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とろみ剤は、酸化マグネシウム錠の崩壊を妨害する

本記事は、下記文献を参照しております。

(1)崩壊時間の遅延をもたらす酸化マグネシウム錠の吸湿が錠剤の表面構造に及ぼす影響. 薬局薬学 2020;12:20-24

(2)とろみ調整食品が酸化マグネシウム錠の崩壊と溶出に及ぼす影響. 薬学雑誌135(6)835-840(2015)

(3)Appropriate usage of food thickening agents to prevent non-disintegration of magnesium oxide tablets. naturereserch. SCIENTIFIC REPORTS. (2020)2,:16089

(4)Effect of food thickener on dissolution and laxative activity of magnesium oxide tablets in mice.Biol.Pharm.Bull.

問題)

 とろみ剤を使用して酸化マグネシウム錠を服用すると、錠剤が崩壊しなくなり、未崩壊のまま便中に排泄された報告がある(1)、(2)。

非崩壊となった原因について)

 とろみ剤と酸化マグネシウムの吸湿性の2点が原因であると示唆されている。まず、酸化マグネシウム錠は、服用した際に崩壊しやすい構造となっている。この構造について、(1)の論文では、水分と酸化マグネシウム錠が接触する表面積を大きくするために、錠剤表面は凹凸となっていること、また、錠剤の中は、崩壊しやすいように隙間があるがあると記載されている。つまり、酸化マグネシウム錠の崩壊性は、錠剤表面の凹凸と錠剤中の隙間に依存する。とろみ剤に酸化マグネシウム錠を浸漬させると、凹凸構造にとろみ剤が付着し、錠剤中の隙間にもとろみ剤が侵入することで、崩壊遅延または非崩壊を起こすことが、原因として考えられている。

仮説検証)

 上記仮説について、(3)のreportでは、下記の方法を用いて検証している。

①IDDSI test、とろみ剤の粘度を評価するテストであり、シリンジにとろみ剤10mLを充填してから、シリンジからとろみ剤を自然落下させる。10秒後にシリンジに残存している量により、粘度評価を行うテストである。

②3種類のとろみ剤に酸化マグネシウム錠を浸漬させ、ph1-2の液の中での崩壊までの時間を観察している。この時の浸漬時間は、1分、10分と30分で比較している。

③とろみ剤へ浸漬させるまでの時間について、3種類のとろみ剤を比較している。浸漬時間は全て1分で固定し、ph1-2までの液の中での崩壊までの時間を観察している。

④一包装化されてから8週間まで保管された酸化マグネシウムの体積の膨張率と、37℃で水の中での崩壊までの時間を観察

⑤一包装化されてから8週間まで保管された酸化マグネシウムについて、1分間各とろみ剤に浸漬させた際の、ph1-2の液の中での崩壊までの時間を比較している。

⑥4つのメーカーの酸化マグネシウムについて、非浸漬と2種類のとろみ剤に1分浸漬させた場合のph1-2の液の中での崩壊までの時間を観察している。

仮説検証の結果)

①時間経過がとろみ剤の粘度へ与える影響は確認できなかった。

②10分間と30分間のとろみ剤への浸漬に比べて、1分間のとろみ剤への浸漬の方が明らかに崩壊までの時間が延長していた。

③とろみ剤へ浸漬させるまでの時間が、崩壊までの時間へ与える影響は確認できなかった。

④1包化後から8週間保管した場合、開封時点よりも約25%体積が増加していた。また、崩壊までの時間は、開封時点よりも明らかに延長していた。

まとめ)

 とろみ剤が酸化マグネシウム錠の崩壊遅延または非崩壊を起こす原因は、とろみ剤が酸化マグネシウム錠の崩壊しやすい構造へ影響を与えるためと考察されている。結果から、とろみ剤への浸漬時間を短くすることで、崩壊遅延または非崩壊を起こしずらくなると考えられるが、臨床でのデータではないため、現場で本結果を適応する際は、現場スタッフの検討が必要である。また、吸湿による影響を否定できない以上、酸化マグネシウムの1包化は避けた方が妥当ではないだろうか。






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