嘘をつくのはいけないこと?

6歳の息子に、夫はこう言った。

「嘘つかないの。パパ嘘つくの嫌いだよ」

至極真っ当で、当たり前の事。

私達は、親や先生、周りからもそう教わってきた。
"嘘をつく事はいけない事"だと。

夫の言葉を私はいつも黙って聞いている。
賛成も否定もしない。
それが彼の価値観であるから。
と同時に、少し冷めた目で見てしまっている。

息子がついた嘘なんて、本当に子供の可愛い嘘。
決して、小さな嘘だから許してやれと言っているのではないが。

私は、息子が小さな嘘をつく度に父に「嘘は絶対ダメ!嘘つく事は悪い事!」と教えられているのを見ると、モヤモヤしてしまうのだ。

だって彼自身も新婚当初、私に小さな嘘をついていたから。

夫が苦手な食べ物が出た時は、私が見ていない隙を見計らって生ゴミ受けに捨てていた。
しかも袋の奥に押し込んで、食器洗いの最後にいつも片付けるゴミを、見られないよう先にゴミ箱に捨ててしまうのだ。

苦手なら苦手で一言言ってくれればいいものを、姑息な手段を用いた夫に私は激怒した。

そして夫はそれをすっかり忘れてしまっている。
大なり小なり心に傷を受けた方は、相手よりも覚えている物である。 
だから、夫が息子に父の威厳を見せるかの如く、そう言っているのを見ると

『自分だって散々嘘ついてたくせに』

と、冷めた思いで聞いてしまうのだ。

きっと私も、自分では忘れてしまった小さな嘘があるのだろう。

夫も息子の為を思って言っているのは分かる。
でも、果たしてそれは本当に息子のためになるのか?

嘘をつくべき場面というものも、実際には存在する。

例えば、自宅に子供が一人で留守番をしていた時、インターホンが鳴る。
(子供だけでの留守番は避けるべきだが)
相手は全く知らない人。親はいるかと尋ねられた時、この御時世、素直に答えるべきなのか?

相手が良い人か悪い人か分からない。

子供が咄嗟に状況を判断し、機転を利かせなくてはいけない時がくるかもしれない。

だから私は、頭ごなしに"嘘をつく事は悪!"
だと言えないのだ。

常々私は息子にこう言っている。

「自分で考えてごらん」

分からない事があって質問してきた時も、まずは自分で考えさせてみる。それでも分からなかったら、身近にある物で調べさせる。

それでも分からなかったら、最後に私が答える。

私は東日本大震災の被災者だった。

だから息子には、地震や津波が起きた時、
どのような行動をとるのが最善か伝え、
その他は自分で状況を判断して行動しなさいと伝えた。

それは、自分勝手な行動をとりなさいと促しているのではなく、
先生や周りの大人の指示に従うのが正しいか、
その大人達の指示が間違っていると思ったら
自分で考えて最善の行動をとるべきか、という事。

親や大人の教えが、必ずしも正しいとは限らない。

嘘をつくことは本当に悪い事?

大人の言う事をきちんと守ってる子が偉いの?

本当にそれって正しいの?

子供達には、何にでも疑問を持って、考える力を身につけて欲しいと思う。




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