見出し画像

【読書記録】〝となり町戦争〟三崎亜記

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル・ヨムノスキーです。

今回ご紹介する本は、三崎亜記さんの〝となり町戦争〟です。

●となり町戦争
【内容紹介】
 ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーを収録。
裏表紙より

 まずはこの物語との奇妙な馴れ初め(?)から書いていきましょう。
 私は趣味として読書を始めた頃から、「読書メーター」という(読書管理と読書が好きな人向けのSNS)サービスを利用しています。
 先日葉室麟さんの〝蜩ノ記〟のレビューを見たくて、検索機能の欄に「蜩ノ記」と入力しエンターキーを押したら!?
 なんと検索結果の12番目にこのタイトルが上がっていて・・・。
 (ちなみに7〜11番目には十二国記シリーズのタイトルが!)
・・・なぜなんだ!!!
 で、書影とタイトルに惹かれて手に取った次第です。

 この物語「戦争」の話なのに、戦車も、戦闘機も、ミサイルも、化学兵器も、核兵器も、拳銃さえも出てはきません。表面上は血の一滴すら流れません。
 実はこの物語世界で起こる戦争は、地域振興事業の一環として、町役場が企画・運用を行なっていて、そこから業務を委託され偵察員となった「僕」の視点から描かれるという、一風変わった戦争物語なのです。もちろんお役所仕事を扱った物語なので、正式な書式として整えられた「辞令」や「報告書」もこの本の中に実際に掲載されているという凝り様。
 何だか突飛な感じがする物語ですが、読んでいくと全くの絵空事とは思えなくなってくるのです。なぜなら例えばロシアとウクライナの戦争をテレビで見ている私たち、湾岸戦争のミサイルに搭載されたカメラからの映像をゲーム感覚で眺めていた私たちは、戦争は良くないことだとはわかっていても、どこかの遠い国の出来事と捉えていて、まさにこの物語の主人公のような感覚でいるような気がします。もしかしたら第二次世界大戦中の、直接被害のなかった田舎の町や村の人たちもこんな感覚だったのではないかと想像します。

 現代の戦争は、直接人間が武器をとって戦うのではなくて、ドローンを遠隔操作しての攻撃や、コンピューターを使ったサイバー攻撃など、良くない表現かもしれませんが、リアリティに欠ける部分があります。でも確実に相手は命を落とします。相当意識をしてアンテナを張っていないと、実感のないままに戦争や犯罪に加担しているなんてこともあるかもしれないと何だか背筋が寒くなる物語でした。

 読み終えて、この物語はお台場のテレビ局あたりが中心になって映画化しそうだなぁなんて思っていたら、2007年に監督:脚本・渡辺 謙作さん、主演:江口洋介さん・原田知世さんで既に映画化されていました。

興味のある方は是非!

最後に
「読書っていいよね!」


【この記事で紹介した本】
タイトル:となり町戦争
著者:三崎亜記
出版社:集英社
レーベル:集英社文庫
ページ数:280

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?