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【読書記録】2023年2月19日〜25日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 あっという間に2月も末。
 あちこちで春の便りを耳にする時期になりました。

 …ということで(何が「ということ」だよ)早速!

【2023年2月19日〜25日に読んだ本】

 まずは先週の続き〝犯罪者〟の下巻から。

●犯罪者 下

著者 太田愛
【内容紹介】
 修司と相馬、鑓水の3人は通り魔事件の裏に、巨大企業・タイタスと与党の重鎮政治家の存在を掴む。そこに浮かび上がる乳幼児の奇病。暗殺者の手が迫る中、3人は幾重にも絡んだ謎を解き、ついに事件の核心を握る人物「佐々木邦夫」にたどり着く。乳幼児たちの人生を破壊し、通り魔事件を起こした真の犯罪者は誰なのか。佐々木邦夫が企てた周到な犯罪と、その驚くべき目的を知った時、3人は一発逆転の賭けに打って出る。
裏表紙より

【感想】
 無差別通り魔事件がまさか、騙し騙され、追いつ追われつのジェットコースターみたいな展開になるとは。とにかく下巻はあっという間に鍵を握る人物が殺されてしまうし、マスコミを巻き込んだ相馬・鑓水・繁藤と、殺し屋・滝川が対決し、これも意外な結末に…。
 事件解決後、エピローグ前の静寂に満ちたドキュメンタリー番組。それまでが手に汗握る展開の連続だっただけに、このドキュメンタリー番組の問いかけは心にじんわり沁みます。

●幻夏

著者 太田愛
【内容紹介】
 毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。23年後、刑事となった相馬は、少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。相馬の胸に消えた親友の言葉が蘇る。「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」あの夏、本当は何が起こっていたのか。今、何が起ころうとしているのか。人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか?司法の信を問う傑作ミステリ。日本推理作家協会賞候補作。
裏表紙より

【感想】
 「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」言い換えれば「疑わしきは罰せず」。これは刑事手続において最も重視されなければならない考え方だそうです。
 …だそうですが…。
 ある日起きた少女誘拐事件と23年前に起きた少年(相馬の友人)の失踪事件。二つの事件現場に残されていた「//=|」という印が意味するもの。そして30年以上前に起きた冤罪事件…。
 交通課に異動になった相馬刑事の少年時代の、一夏の苦い思い出。どうにもやりきれない物語でした。
 こんな事件が起きても、結局権力者は傷つかず、犯罪も冤罪もなくならないという現実が辛いです。
 以前書いた「冤罪がテーマの小説」という記事に追加したい1冊です。

●天上の葦 上・下

著者 太田愛
【内容紹介】(上巻)
 興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。渋谷のスクランブル交差点で、空を指さして絶命した老人が最期に見ていたものは何か、それを突き止めれば1000万円の報酬を支払うというのだ。一方、老人が死んだ日、1人の公安警察官が忽然と姿を消す。停職中の刑事・相馬は彼の捜索を非公式に命じられるがー。2つの事件の先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!?サスペンス・ミステリ巨編!
裏表紙より

【感想】
 ある日、老人が渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で空を指差した直後に亡くなることから始まる物語は、テレビ局のニュース番組の立ち上げ、公安部の警察官の失踪、そして第二次世界大戦中の話へと目まぐるしく展開し、上巻を読み終えてもまったく話の全容がつかめませんでした。
 物語と直接関係はありませんが、〝犯罪者〟→〝幻夏〟そしてこの〝天上の葦〟と読んできて、〝幻夏〟に出てきたあの犬が、鑓水の事務所で大事に飼われていたり、相馬、鑓水、繁藤の三人それぞれが、最初の事件がきっかけで付き合うことになった彼女(鑓水は事件前からか))とその後も上手くいっていて、しかも相馬が婚約しているというのが、ちょっと嬉しいエピソードでした。

◎心に残ったフレーズ

「民主主義は感情統治」
本文より

 下巻は、スピード感抜群のまま突っ走るのかと思いきや、かなり重厚な社会派小説でした。
 事件をでっち上げてマスコミに自己規制を強いり、結果的に言論を統制する国家。そういえばしばらく前に何だかメディアを規制する法律が、いつの間にか可決されていたような気がします。
 物語の中で語られていた「戦えるのは火が小さなうちだけです」は、確かにそうだと思います。そしてもう一つ、「そもそも言論の自由っていうのは、為政者の側が国民に保証するものであって、あちら様が振り回すもんじゃないでしょうが」という言葉にも納得。

 特に心に留めておきたい一節があったので、少し長いですが引用します。

 「一つの国が危険な方向に舵を取る時、その兆しが最も端的に現れるのが報道です。報道が口をつぐみ始めたときはもう危ないのです。次第に至誠の人々の間にも、考えたこと、感じたことを口にできない重苦しい空気が広がり始める。非国民、国賊などという言葉が、普通に暮らす人々の間に幅を効かせ始めるのはそういう時です。恐怖は巨大な力に抗するための連帯を断ち切ります。そしてどんな時代の報道の中にも、進んで権力にすり寄る者たちがいる。自らの下劣さを処世術や政治力と思い違いした人々です。批判の声は権力の名を借りた暴力によって次々と捩じ伏せられていく」
本文より

 テレビは、ラジオは、そしてSNSは、もちろんこのnoteも、そして自分も、いざという時自分が信じる正義を貫き、巨大な権力に立ち向かうことができるだろうか?
 そんなことを考えながらページを閉じました。

【まとまらないまとめ】

 ということで、今週は、毎週1冊読むことを目標にしていた新書にも、毎月1冊読むことを目標にしていた時代小説アンソロジーにも手をつけず、太田愛さんの小説一色の1週間でした。
 テレビドラマ「相棒」の脚本家でもある太田愛さん、小説家デビューは2012年で、2023年2月現在で4作品を刊行。
 …ということで、また注目すべき作家さんがひとり増えました。

 最期に
 読書っていいよね。


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